harunomaさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

ギフト(2000年製作の映画)

4.7

見上げると、
彼女は
梢に漂っていた

ケイト・ブランシェットのベストであり、おそらくサム・ライミも
助演のキアヌ・リーブスもよく、ジョヴァンニ・リビシのエピソードも泣ける。
受苦や不条理な裁判の証言
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抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956年製作の映画)

5.0

『抵抗』は
『死刑執行人もまた死す』『生きるべきか死ぬべきか』よりも美しい。

ひとりの死刑囚が逃げた、
あるいは風は自らの望むところに吹く。

「風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞いても、それ
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刑事ベラミー(2009年製作の映画)

4.6

「目に見えぬ別の物語が必ずある」 ― W・H・オーデン
クロード・シャブロル『刑事ベラミー』(2009) 最後の字幕。

晩年様式とでも言うのか、世代としては同時代であったためしはないが
傑作『石の微
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マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)

5.0

トム・クルーズはあるいはいつまでも超人だが
スピルバーグもトム・クルーズも全盛期。
A Perfect World の夢の光と影。
永遠の未完成交響曲
ラストショットの穏やかな生活、ブックピープルの在
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パニック・ルーム(2002年製作の映画)

4.7

篭城ものの傑作。壮観なセット撮影。
映画を作るとは、家を丸々一棟、向かいも含め路地も、建てること。
レイクサイドもそうだった。
ハワード・ショアの音楽が格式を高めている。

歴代の中では一番フィンチャ
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ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画(2013年製作の映画)

2.0

食わず嫌いな有閑なるケリー・ライヒャルト
偏見だが保坂和志のようにただただリアルを積み重ねて行くとニューノーマルの手触りは現れるしそれは一つの誠実だが、永遠に西部は消え、ダウナーな凪が続き、フィクショ
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i-新聞記者ドキュメント-(2019年製作の映画)

4.1

映画『新聞記者』はくだらなく40分くらいで出たし
東京新聞はとっているが望月の記事を読んだ記憶もない。都知事選で絶対得票率3割の支持とは言え、北朝鮮並みの民度と老若男女情弱の市民、多摩地区を筆頭に田吾
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インサイダー(1999年製作の映画)

5.0

東京の都知事選お疲れ様でした。
脳内リベラルの既得権益メディアの妙なリアルを体現するのがクリストファー・プラマーであるのは、何とも言えないが、そんなやつに対峙し、切るべきカードは、アル・パチーノのよう
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デンジャラス・ラン(2012年製作の映画)

4.4

トニー・スコットが亡くなった後に最初に観たデンゼル・ワシントン。
ダークナイトから始まり、司令室のある諜報員、逃亡劇ながらの師弟関係などどうしてもトニスコの追悼なしには観れなかった。デンゼルがその傷み
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サイコ(1960年製作の映画)

4.6

死を与える、ヒッチコックの演出的手捌きに瞠目するしかない映画。
空間からの知覚の連鎖が、夢のように殺人の現場と言説を構成する。刃物は一度たりともショット内で身体に刺さることはない。
それにしてもこれを
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グランド・マスター(2013年製作の映画)

5.0

わたしたちの残してきた時間の結晶は(たどり着く)香港と共にある。
あの顫える瞳を忘れはしない。
世紀の愛、成就しえない時の史実がここにはある。

大統領の陰謀(1976年製作の映画)

5.0

ジャーナリストは小説家と同じくらい、映画の主人公としてつまらない。
(イーストウッドの『トゥルー・クライム』以外)
彼らは何の動きも見せないのだから、映画における労働とは程遠い。ワシントン・ポスト紙の
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バンブルビー(2018年製作の映画)

2.1

前半10分のバリバリ宇宙の戦闘と説明は苦手な暑苦しいトランスフォーマーの世界であり面倒だったが、声と記憶を奪われる逃亡者の位置づけに期待しつつ、ようやくヘイリー・スタインフェルドが登場し、朝からロック>>続きを読む

理想の彼氏(2009年製作の映画)

3.0

おそるべき超普通さ。こんなラスト、初稿未満だよ。
キャサリン・ゼタ・ジョーンズがリアルに40歳役、バツイチ子持ちだが、美人。ハスキーな声もいい。相手役はナショナル・トレジャーの青年。
拍子抜けするほど
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ロボコン(2003年製作の映画)

5.0

これ最高でした。
この時期の古厩さん(すごく初期だったのだな)はよかった。
長澤まさみもこれだけは永遠だった。
生まれ変わったら高専へ進学するだろう、それくらいのプルースト的な青春が場違いな年齢に先延
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トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

5.0

黒沢清は、見えるだけでも三度死んでいる。
一度は法廷闘争で荒み、二度目はフィルムの死とともに。
それにしても画面からブラッドが流れるかのごとく、すさまじいショットの連鎖に2時間を切る映画の上映でここま
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ターミナル(2004年製作の映画)

4.2

わたしたちの知らずにいる王国が、なんとたくさんあることか。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
(パスカル『パンセ』L42)

亡国のイージス(2005年製作の映画)

5.0

イージス・アショア白紙撤回で、なんとなく。
なぜか3〜4年に一度見直す映画。
今見ると若手からベテランまでオースターキャストが壮観。
トレヴァー・ジョーンズという人のスコアも少しいい。
阪本順治作品の
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永い言い訳(2016年製作の映画)

1.7

最近の是枝は、作為を準備しようとして自然さが演技のレベルの内側で露呈するドキュメントになるが、この映画の西川は準備された作為の中に自然さを溶け込ませるが、過剰と不足が計測の範囲内に収まるからフィルム以>>続きを読む

夜の人々(1948年製作の映画)

4.3

ロマンティカ・ノワール

同時期の『晩春』の原節子並みの灯りを消した時の寝顔。ラストは繋ぎじゃない反古典的ショットの連鎖が怒涛であり、ニコラス・レイは超越的なまでに個人を信じているかのような繊細さと現
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記憶にございません!(2019年製作の映画)

1.5

説話を超えていくような、不可思議な演出やショットが心地よく、観ているもののショットの予想を裏切るおもしろさがある冒頭は。
シィチュエーションと予定調和の舞台にいたはずの三谷が、ここでは、今まさに撮られ
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ナショナル・トレジャー2/リンカーン暗殺者の日記(2007年製作の映画)

4.5

ディズニーとニコラス・ケイジの掛け合わせが最高。
家宝ならぬ原題は国宝。
さすがに7回以上観ていると飽きるが
ジョン・ヴォイド、エド・ハリス、ハーヴェイ・カイテル、ヘレン・ミレンまで脇を固め飽きさせな
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サンダーボルト(1974年製作の映画)

3.5

「サンダーボルトとライトフットで行こう」
優等生ジェフ・ニコルズ(あるいは下らないヴェンダースの観念としてのアメリカ映画)には絶対に撮ることができない類のものだ。
福顔ジェフ・ブリッジス、イーストウッ
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行きずりの街(2010年製作の映画)

5.0

東映の良心の怪作、とおそらく一般的には呼べるのだろう。
当時二度目のレイトショーで、他に客もいず貸し切り状態で観たのを憶えている。
このとんでもないフィクションの話法に誰もが、この作品を嫌厭するのだろ
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(1960年製作の映画)

4.1

肉体の冠以外に、あまりベッケルのいい記憶を持たないし、こんなものかと観ていたら、いきなりコンクリを砕く(本当に砕いている1カットで、人力トンネル掘削工事ドキュメンタリー )轟音に呆気にとられ、穴を穿つ>>続きを読む

映画 聲の形(2016年製作の映画)

4.5

劇場では初めて
聲のシェイプ、出会いは白夜だった。
白夜は声であった
すでに画面自体が実存への呼びかけであり
風景が音が艶かしくその奥行きと記憶の焦点を多重し、瑞々しくも不気味なまでに(闇のなかの光の
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運び屋(2018年製作の映画)

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去年のベスト10位と書いてある。
オレンジジュースのひと時と孫娘
そしてラストは花壇にハイビスカスのオレンジ色の花を植える。ほとんどアワーミュージックである。
あの傷だらけの顔、片目で、言い知れない瞳
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クレーヴの奥方(1999年製作の映画)

5.0

振り向き、眼差しの邂逅を通過するだけで、なぜここまでいいと思えるのか、畢竟、それが演出における実感であり、デクパージュもそうだが、眼差しを捉えたということがそのカットのOKの基準でしかない。そしてまた>>続きを読む

ローガン・ラッキー(2017年製作の映画)

4.5

浅瀬でプカプカ浮かんでいるだけだったソダーバーグ伯爵の中でも
間違いなく彼の最高作に違いない(公開時からの再見)
イディオッツたちはまず野獣の身体を持ち、平行モンタージュの活劇と生き生きとした子どもた
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風の電話(2020年製作の映画)

2.5

3.11とはヒアアフターのことであり、
ヒアアフターとは3.11のことである。
喪に服すことと いまを生きることを両方同時に提出すること。

冒頭、途中まで二画面でヒアアフターをチェックしながら流し見
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スパイ・ゲーム(2001年製作の映画)

5.0

他人のためだけに生きることは可能か」(ユリイカ)という壮絶なアポリアの前で、存在の問いとショットの次元だけではなく、あくまでもアメリカ映画、その善なる前進(ムルナウ)を軽やかにかつ、快活な活劇のもとに>>続きを読む

リバティ・バランスを射った男(1962年製作の映画)

5.0

『リバティ・バランスを撃った男』は「伝説となって広まった嘘」(神話)と事実をめぐり、ランスとトムの対照的な二人を描きつつ、神話の形成、それ自体が主題となっている。「野蛮時代から正義の時代への移行」の中>>続きを読む

クリスティーン(1983年製作の映画)

4.1

なにこれこわい暗い
曇天の中、呪われた顔たちが増村並みに強く
国籍不明映画クリスティーン
途中から持ち主の彼はゴッドファーザーのジョン・カザールにしか見えず、不意打ちのハリー・ディーン・スタントンが苦
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