りっくさんの映画レビュー・感想・評価 - 64ページ目

イギリスから来た男(1999年製作の映画)

1.0

個人的にスティーブン・ソダーバーグは好みではない。単調で空っぽな物語を、「スタイリッシュ」と言われる手法で演出していく。すると、見る見るうちに面白げな作品に見えてくる。

けれども、一歩引いて作品を見
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コンテイジョン(2011年製作の映画)

3.0

本作はウイルスという「見えない敵」が人類の脅威となっていく点で、一種のディザスター・ムービーと捉えることもできる。しかし、本作で描かれるのは、視覚的なカタストロフィーでも、終末論的な世界でもない。ウイ>>続きを読む

マジック・マイク(2012年製作の映画)

4.0

「キラー・スナイパー」に続き、マシュー・マコノヒーが最高。
彼が画面に出てくる度に、ニヤニヤが止まらない。
特に に鏡越しに「ストリッパーとは何ぞや」をレクチャーする場面がその極み。
このリーダー・エ
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恋する幼虫(2003年製作の映画)

3.8

ジャンルとしては「ヴァンパイアもの」の純愛物語をアレンジしたような話。
ただし、その純愛に行き着くまでの描写が、人間の本質を抉り出しているように感じる。
「生」と「性」のどうしようもない不快さ、気持ち
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片腕マシンガール(2007年製作の映画)

3.7

エクストリームなエンターテインメント。
ぬるま湯体質の邦画界に、一石を投じるどころか、マシンガンをぶっ放した怪作。
『デッド寿司』が「陽」であるならば、こちらは「陰」の娯楽作といったところか。
『キル
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デッド寿司(2012年製作の映画)

4.2

まずキャスト全員の頑張りに大拍手。
武田梨奈の圧倒的な身体能力による宴会場での爆笑アクション。
男どもをバッタバッタと成敗するキックが美しすぎる。
体がホントによく動くので、観ていてとても気持ちがいい
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劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(2013年製作の映画)

2.5

テレビシリーズから「secret base」を流すタイミングが巧いだけのアニメで、それほど面白いとは思っていなかったが、劇場版はその想いはより一層強くなった。

限られた尺の中で、各々の人物がそこに至
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心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)

4.1

言葉は人を傷つける鋭利なものである。
それを防ごうとする簡単な方法は黙ることである。
言葉の暴力によって人は傷つき・傷つけられる。
誰もが身に覚えのあるものを通奏低音として物語に響かせることで、本作を
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惡の華(2019年製作の映画)

4.3

思春期のあのグジュグジュと化膿した日常の暗澹たる想いにとっくに蓋をしていたのに、そんなかさぶたを本作は剥がし、ドロドロと身体の外に流れ出るような感覚に陥る。その想いはボードレールの惡の華に象徴されるが>>続きを読む

黒い下着の女 雷魚(1997年製作の映画)

4.2

社会から取り残されたような殺伐とした寒々しい工業団地を背景に、行き場のない男と女が「殺人」という行為を通して交差する荒涼とした映画。室内外すべての風景の切り取り方が素晴らしく、絶望的な孤独を抱えて、テ>>続きを読む

ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-(2019年製作の映画)

2.8

パナマ文書流出事件という世界的なスケールの実態をいくつかのエピソードに絞って描いた群像劇は、信頼できない語り部が進行役となって第4の壁を突破し、場面転換に介入し、ロケーションを歩き回り、撮影スタジオを>>続きを読む

スペシャルアクターズ(2019年製作の映画)

2.5

サクラのように実際の役者たちが演じることによって依頼者の問題を解決する会社で繰り広げられる騒動をチームプレーで切り抜けていくコメディは、最後まで相手に正体がバレずに依頼を遂行できるかという潜入捜査もの>>続きを読む

イントゥ・ザ・ストーム(2014年製作の映画)

4.0

竜巻を題材にした映画
いろんな側面を見せてくれる
大きな雹が降ってくる不気味さ
ゴルフボールの大きさでも凶器に
周りのあらゆるものが凶器
主観カメラいつ何が飛んでくるか
炎の渦をあげる竜巻
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ロスト・バケーション(2016年製作の映画)

4.2

サメ映画というひとつの確立されたジャンルムービーとして、極限状態を描き続けてきたセナ監督による本作はかなりの高水準。サメの恐怖はもちろんのこと、大波によって体の自由が利かず、とがった岸壁やサンゴに打ち>>続きを読む

ピラニア 3D(2010年製作の映画)

4.2

エロとグロによる緩急のついた展開。
不気味な静けさと大音量BGMによる雰囲気作り。

たとえB級映画だろうが、やはり作り手が見せ場をどう見せていくか。
その技術あってのこそのパニック映画だと改めて感じ
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クロール ー凶暴領域ー(2019年製作の映画)

4.2

個人的には「イントゥザストーム」「ロストバケーション」のようなジャンル映画の中で最上級のエンターテイメントを見せてくれる枠が今年本作で埋まったことが嬉しい、完全な拾い物。アレクサンドルアジャ監督作では>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980年製作の映画)

4.5

寅さんもリリーも両想いなのに、その想いを正直に相手に伝えることができない。勇気を振り絞ってその想いを相手に伝えても、その気恥ずかしさから、正直にボールを投げ返すことができない。

気恥ずかしさや照れの
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シャロウ・グレイブ(1994年製作の映画)

3.5

色使いとか構図とか天井裏にさす光とか映像感覚が特に好みに合う。ストーリーも前半のばか騒ぎと後半の病的な感じのギャップがよく、すごみと趣のある殺し屋二人組の顛末にびっくり。

トレインスポッティング(1996年製作の映画)

4.1

麻薬をやめたい、堕落した仲間たちから抜け出したい、低賃金な生活環境から脱したい…。そんなあらゆる現状への不安や怒りや焦りを最後に大金を持ち逃げすることで一点突破する構成が痛快。

トイレの便器に頭から
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28日後...(2002年製作の映画)

3.0

「ゾンビ映画」はゾンビ自体が怖いのではない。
動きは遅いし、単体だったら勝てる相手である。
では「ゾンビ映画」がここまで観客を魅了し続けるものは何なのか。
その1つはゾンビがほぼ人間の形態を保っている
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スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)

3.4

本作はクイズ・ミリオネアを媒介にジャマールという1人のスラム育ちの青年の過酷な生き様を描いている。序盤から中盤にかけては、クイズの答えがどのようにして分ったか、ということを過去の人生の中の体験を通して>>続きを読む

127時間(2010年製作の映画)

4.2

本作はほぼジェームズ・フランコの1人芝居、さらに固定された舞台、単純明快な物語と、非常に“限定された”映画だ。
そんな中で重要な位置を占めているのが、フランコ扮するアーロンが常に持ち歩いているビデオカ
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スティーブ・ジョブズ(2015年製作の映画)

4.0

伝記映画は事実を羅列し、こんなに偉大な人物でした!とWikiを見てるのと変わらない作品に成りがちだが、3度の新製品発表会直前の時間・空間に絞り、彼と長年関係性がある人物を的確に配置することで、世間がイ>>続きを読む

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)

3.8

冒頭のジムのランニングマシーンのスピードについていけず振り落とされてしまう場面から20年の歳月を感じさせる。あんなに必死に何かから逃げて、どこかへと脱出しようとがむしゃらに走っていた前作からの落差を描>>続きを読む

マージン・コール(2011年製作の映画)

4.2

政治的に彼らを断罪や擁護せず、あくまでも個々のドラマ仕立てにしたところが勝因。
組織に属する個人としての葛藤。
会社と社会の関係性や責任。
そういったものがミクロな視点から徐々に浮かび上がってい
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オール・イズ・ロスト 最後の手紙(2013年製作の映画)

3.5

ラストシーン
暗闇の遠くに船の灯り
丸い救命ボートの上で
大事にしてた航海日誌火にくべる
今までの全て失う
ボート大炎上
悟ったような顔で海の底へ
無抵抗死の覚悟と諦念
満月と真ん中燃
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アメリカン・ドリーマー 理想の代償(2015年製作の映画)

3.7

石油の出る土地を購入したい男がまず前金4割を払い、その後1ヶ月で6割をかき集めて支払う話。キャストも含め恐ろしく地味だが、見応えはある渋いいい映画。

だが勝者よりも、それによって自分が敗者であると突
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三度目の殺人(2017年製作の映画)

3.8

ケムに巻く、スカし、ハズし、クズしてモヤモヤ。
ロジカルに殺人に至る物語を作りたがる。
その物語の数々をぶっ壊して行く役所広司。
弁護士としてのスタンスが揺らぐ福山の徒労感。

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

5.0

作品としての隙のなさはもちろんのことだが、実際に清瀬の団地に暮らしていた是枝監督のパーソナルな感情や記憶、さらにそれがいまの自分の置かれた境遇や育った環境と重なり生涯の中でおそらく大切な一本になるであ>>続きを読む

海街diary(2015年製作の映画)

3.0

是枝監督が成瀬巳喜男を意識したという通り映画としてのルックは素晴らしい。だが、技法にこだわることしかできなかったんだろうと推測されるくらい物語が杜撰。是枝監督がこれを本当に撮りたかったとは到底思えない>>続きを読む

そして父になる(2013年製作の映画)

4.2

ひとつひとつのシーンだけ見れば子供との微笑ましいやりとりが続くのに、
全体から観ると心がズタズタになるほど残酷な映画。
一瞬にして空気を凍りつかせる感じ等、是枝さんは映画の中の空気を操るのが実に巧みだ
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奇跡(2011年製作の映画)

3.7

これほど子供に寄り掛かった映画も珍しい。
大まかなストーリーラインはあるが、物語を進行することよりも、子供たちの世界を描くことに専念している。

映画で子供を描く際には、意図していなくてもステレオタイ
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空気人形(2009年製作の映画)

3.0

物理的に空っぽである空気人形が、同じく心理的に空虚である現代人の心に寄り添いつつ、人形は人間になれない虚しさを詩的に綴る寓話。人間同士のセックスよりも、井浦新が萎んだペドゥナに口で空気を入れて膨らんで>>続きを読む