『・・・・・・逃げないと・・・殺される・・・・・・あの黒い瞳からは、逃げきれない・・・・・・』 少年が目を覚ますと、そこはどことも知れぬ廃屋だった。脳裏にはノイズの様な靄がかかり自分が誰なのかさえ思い出せない。所持品からどうにか自分が旅行者であるらしい事のみが知れただけである。まだ悪夢の続きを見ているのだろうか・・・。 いや、あれは悪夢ではない・・・現に彼は、あの黒い・・・無感情な瞳を憶えている。 襲撃者の手から逃れるため、少年は廃屋から脱出を試みる。 だが、彼の背後に銃を携えた仮面の少女が忍び寄る・・・。 「・・・・・・死にたくなかったら・・・・・・かかってきなさい・・・・・・」 恐怖で固まる少年に少女は冷たく言う。 言葉と共に発せられた銃声が少年の平凡な日常に永遠の終わりを告げる・・・。
『殺さなきゃ、殺される・・・・・・!死にたくない・・・・・・!生き延びたい・・・・・・!』 ただ生き延びたいという本能だけでナイフを振るう少年。少女の仮面が割れ床に落ちる・・・。 だが、そこで彼の意識は途切れた・・・。 再び廃屋で目を覚ました少年の傍らには、あの少女が佇んでいた。少女は【アイン】と名乗る。そして彼の事を【ツヴァイ】と呼び、暗殺者になれと無感情に告げるのだった。 彼は、アインの所属する犯罪組織インフェルノの行った暗殺の目撃者として、殺されるはずだった。しかし、彼女の主である【サイス=マスター】がその才能に目を付け、暗殺者に仕立てるため過去を奪われ生かされたのだという・・・。 「生きたければ生まれ変わるの。あなたはもう、人を殺すことでしか存在を許されない」彼に選択の余地は無かった。拒めば当初の通り「死」が待っているのだから・・・。
「決められたコースでも、君が望み、努力する限りどこまでだって加速して行ける」 クロウディアの言葉は、ただ組織の人形の様に生きていくしかないと思っていたツヴァイの心に一筋の光明を与える。訓練を重ね、ツヴァイはアインによって暗殺者として着々と仕上げられて行った。サイス=マスターの思惑通りに・・・。しかし、まだ心までは、暗殺者に成り切れないツヴァイ。実際に彼に人が撃てるのか・・・。 だが、そんな彼の心にかまわず任務は下される。内容は実戦での試験。相手はアメリカ海軍のウォレス大尉。助命をエサに戦わされる組織にとって用済みの協力者だった。 突然の事に動揺し喚き立てるツヴァイにアインは、冷たく銃口を向ける。 「もう一度だけ、選ばせてあげるわ。すべて受け入れて生き残るか、それとも拒んで死ぬか・・・・・・」
ショッピングモールで少女が、疲れ顔の少年を連れまわす。 どこでも日常的に見られる光景だった。ありふれた若いカップル・・・まさかこの二人が暗殺者だと思う者はいないだろう。そう、インフェルノのファントムだとは・・・。 ウォレス大尉を始末した事により、正式にインフェルノの一員となったツヴァイはアインと共に任務を受けていた。今回のターゲットはダラス・マフィアのボス、ドン=ルシオ。 暗殺の現場はショッピングモール、厳重に警備された屋敷から孫娘のプレゼントを買いに出た所を襲撃する手筈だった。ターゲットの到着は翌日の午後3時。ツヴァイとアインはカップルに偽装し絶好の襲撃ポイントを探っていたのだった。 アインとツヴァイ・・・彼らにも本来ならありふれたはずの日常。 だが、それさえも、もう遠すぎて、偽装の中だけにしか存在しない・・・。
ファントムという牙を用い、敵対組織を呑みこみ、日々勢力を拡大していくインフェルノ。そして、次なる獲物はストーンファミリーが仕切る縄張り=メラニースクウェアだった。ボスのトニー・ストーンは【石頭トニー】とあだ名される昔気質のマフィア。新興の組織であり手段を選ばないインフェルノとは水と油。当然、素直に傘下に入るはずもなかった。このままでは大規模な抗争にも発展しかねない。 そんな折、ツヴァイはクロウディアからトニーの妻エバと幼い息子デュークの監視を命じられる。交渉の切り札として使うつもりなのか・・・。とすれば、状況によっては彼らも・・・? アインと共に監視をしていたツヴァイ、その視線が偶然デュークと交錯する。 感情など既に失くしたはず・・・。だが無垢な瞳に見据えられ、ツヴァイの表情は歪む・・・。
最愛の家族を奪われたトニーは復讐のため、インフェルノという組織の特殊性を突いた策に出る。インフェルノは数々の犯罪組織の幹部による組織であり、各組織のボスの意向に逆らった越権的な同盟関係によっている。つまり、それぞれの組織のボスにインフェルノと通じている裏切り者を証拠とともに差し出せば、トニーは自らの手を汚さずに復讐を遂げられるのだ。 石頭トニーらしからぬ搦め手・・・事態を重く見たインフェルノは幹部会を招集する。その席上でサイス・マスターは、トニーの奇策を逆に利用した、一夜にして西海岸の勢力図を塗り替える常軌を逸したプランを提案する。あまりにも大胆で無謀...色めき立つ幹部達。だがサイスはファントムなら可能と事も無げに言ってのけるのだった・・・。 ターゲットは一晩で12人・・・今夜、アインとツヴァイが暗黒街に大火を放つ・・・。
路地裏に響く銃声。倒れる記者。仮面の少女と対峙する少年。恐怖や飢えを押し殺し、身を隠した廃墟のビル。目の前に現れる銃口。そして叩きつけられる銃把。 アインに起こされ目覚めるツヴァイ。夢・・・? しかし夢にしてはリアル過ぎる・・・。見た事も無い景色、会った事も無い人、これは彼の封印された記憶なのだろうか・・・。 クロウディアは日本のヤクザ・梧桐組に貸しを作るため、梧桐組若頭・梧桐大輔と2億ドル相当のコカインの奪取計画を進めていた。奪取したコカインはそのまま譲渡する条件で共犯関係は成った。アインとツヴァイは、サイス・マスターから襲撃の援護を命じられる。だが二人には、襲撃班が梧桐組だとは知らされていない・・・。サイス独自の目論みがあるのか・・・。それともクロウディアの指示なのか・・・。
梧桐組の援護任務、その直前にツヴァイはクロウディアの護衛を命じられてしまう。アインだけでは荷が重過ぎるのではないか・・・。任務解除を掛け合うツヴァイ。だが、クロウディアは、それ以上に大事な用があると、彼に赤いパスポートを手渡す・・・。 「これは君のパスポート。本当の君が・・・過去が・・・ここにある」 記憶を取り戻し人形ではなく自らの意志を持った同志として改めて、ついて来て欲しいと言うクロウディア。しかし、ツヴァイはパスポートを開くのをためらう・・・。過去も記憶も無い、それ故に機械的に殺す事が出来た。本当の自分を取り戻したら・・・暗殺者でいられる自信は無い・・・。 すると、クロウディアは記憶を取り戻した後、彼が望むなら故郷に帰してくれると約束をする・・・。嘘だとは知りつつも、ツヴァイは魅入られた様にパスポートを開く・・・。
記憶が戻った玲二(ツヴァイ)。望めば日本に帰る事も出来た・・・。しかし彼は、負傷したアインを置いて行く事は出来なかった。彼女に生きていて欲しかった・・・。裏切り者のサイスに加担した事により、アインは、今や追われる身。眠ったままの彼女を連れ、組織の追っ手から逃れるため、玲二はあてもなく車を走らせる。 だが、目を覚ましたアインはサイスの元へ戻ると言い出す。玲二と違い彼女には自分を証明するパスポートも記憶も無い。ただアインという名前とサイスだけが彼女のより所だった・・・。と、突然、玲二はパスポートを破り捨てる。驚くアインに玲二は言う。 「君を死なせたくない。見殺しにしたくない。・・・誰のためでもない、これは僕自身の意志だ。それを貫く。それが僕の、自分であることの証だ。ハンコと紙切れで裏付けてもらう必要なんて、ない・・・」
「殺し屋でも人形でもなく、君が君として生きていくための名前」 そう言って玲二はアインに【エレン】と名付けた。このまま二人でどこまでも遠くへ行く、はずだった・・・。しかし、玲二はインフェルノの手に、エレンはサイスの手にそれぞれ落ちてしまった・・・。 クロウディアの説得もあり、玲二はサイスを殺す事を決意する。組織に対し身の証を立てるため、いや、何よりもエレンを解き放つために・・・。 サイスはロシュネンコという武器商人の手引きで国外に脱出を図っている様子。 先行したリズィと合流した玲二。が、裏切り者は信用出来ないと、リズィは玲二に銃を突きつける。すると玲二はリズィの目の前で、薬室の1発だけを残し弾倉を捨てる・・・。 「1発じゃ、あんた達とケンカすることは出来ない。だがサイス一人を殺すには事足りる」 携えるのは、込められた銃弾ただ1発と初めて望んで抱いた殺意・・・。
偶然にもインフェルノのファントムが手を下した暗殺現場を目撃してしまった玲二。その代償は余りにも大きかった。過去は奪われ、暗殺者として訓練された玲二は、彼の才能に目を付けたサイス・マスターの思惑通り、アインと共に驚くべきスピードで暗殺者としての道を駆け抜ける・・・。そう、クロウディアに渡されたパスポートをきっかけに彼の記憶が甦るまでは・・・。 クロウディアは彼の自己を呼び覚まし、例え組織の中にいても自由があると彼の意思を突き動かす。彼女は玲二を寵愛し、インフェルノとは関係のない独自の任務に彼を起用する。また、秘密裏にヤクザと接触を図るなど、次第に彼女の不穏な部分が見え隠れすることに・・・。それらの不可解な行動は、すべて彼女のある復讐心に起因するのだった。今ここに閉ざされたクロウディアの過去と思惑が明かされる。
多発する不可解な暗殺事件。昨年だけで、20人を超える大物が犠牲となり全米の暗黒街に戦慄を与えていた・・・。 一連の暗殺はインフェルノのファントム・ツヴァイ・・・そう、玲二の手によるものだった。 サイス・マスターとの死闘から生還した後、玲二はファントムを襲名したのだった・・・。幹部も舌を巻く程の技量と自らの意志による組織への献身。最早、玲二は完全にインフェルノが操る恐怖の化身・ファントムになったかに見えた・・・。 だが、彼に意志などありはしなかった・・・。ただ肉体のみが生きているだけの亡霊。心はあの日から死んだまま・・・。そう、エレンを自らの手で撃ってしまったその日から・・・。 『意志なんかない―今の俺には・・・何も・・・何も感じなくなる・・・過ぎたことも先のことも、何もない』エレンの言葉の意味が今ならわかる・・・。
インフェルノ加盟を控えた梧桐組との取引が目前に迫る。役者は揃い全てはクロウディアの目論見通り進む、かに見えた・・・。だが、舞台は壊される・・・。玲二を伴い現場に向かった彼女が目にしたのは・・・梧桐組の構成員と事件に巻き込まれた通行人ジュディの死体、そして消えた500万ドルだった・・・。事態を受けマグワイアは、組織の沽券に賭け即座に取引現場を縄張りとするワイズメルに犯人捜しを命じる。 一方、独自に調査を開始した玲二は、ジュディの死体発見現場で「キャル」という少女と出会う。犯人を目撃したと玲二に告げるキャル。さらには行くアテが無いと、キャルは玲二の部屋に転がり込むことに・・・。束の間の奇妙なパートナー関係。その筈だった・・・。ワイズメルに彼女の事が知れるまでは・・・。
「キャルを自分の助手として育てる」ワイズメルからキャルを守るため、玲二は幹部会で大芝居を打った。抜け殻の様に暗殺を続けていた玲二。それだけに、彼がキャルに同じ道を歩ませたいはずなど無かった・・・。だが、幹部に啖呵を切った以上、それなりの体裁を整えなければ幹部を納得させる事は出来ない。特にワイズメルの追求は厳しいだろう・・・。キャルを守るための嘘・・・。それは、思った以上に玲二に重くのし掛かる・・・。 一方、クロウディアはワイズメルに疑惑を抱いていた。彼は組織内でクロウディアが力を得る事を快く思っていない。自分への牽制で取引を潰したとしたら・・・確かに辻褄が合う・・・。クロウディアは梧桐らの帰国を引き止め、秘密裏に玲二に監視させる・・・。梧桐組をエサにワイズメルを炙り出し、その尻尾を掴むために・・・。
『・・・あるわけがない・・・彼女は死んだ・・・俺がこの手で・・・なのに、生きてるだなんて・・・』 玲二が目を離した隙に梧桐組の室戸は殺された。殺害現場から足早に立ち去った女・・・一瞬だけ見えたその顔は・・・エレンに似ていた・・・。 「そんなはずは無い・・・」頭ではそう思うが、体は驚きで固まり逃げられてしまった。完全な失態・・・。エサだけ取られた釣り針の立つ瀬は無かった・・・。 またしても舎弟を殺された梧桐は激昂。梧桐の信用を取り戻すためクロウディアは、3日後に犯人を差し出すと梧桐に約束する。3日後・・・ホテルの一面ガラス張りの会議室で梧桐組のインフェルノ正式加盟が決まる。その時、敵は必ず動く。そう踏んだクロウディアは玲二にもう一度指令を与える。玲二に課せられたのは、無謀とも思える狙撃手を逆狙撃するカウンタースナイプ・・・。二度目の失敗は絶対に許されない・・・。
エレンの幻影に悩まされながらも、玲二はかろうじてワイズメルの懐刀ランディ・ウェーバーによる梧桐の狙撃を阻止する事が出来た。脅威は排除した・・・梧桐を狙う者はもう居ないはずだった・・・。しかし...安堵した玲二の耳に、聞こえるはずの無い2発目の銃声が轟く・・・。 会議室のガラスに穿たれる弾痕。突然の銃撃を裏切りと解した梧桐はまたも激昂する。一触即発の空気となった。首謀者ワイズメル、彼こそが全ての陰謀の黒幕だと梧桐とマグワイヤに静かに告げるクロウディア。彼女の示したインフェルノ流の"落とし前"により、事態は収束したかに見えた・・・。 だが、玲二の疑念は、消えはしなかった・・・。誰にも当たらなかった疑惑の銃弾・・・。一体誰が・・・?玲二の脳裏で再びエレンの幻影が踊る・・・。
『・・・おまえが思い出させてくれた・・・笑うことも、泣くことも・・・』 玲二はキャルとの生活で徐々に無くしていた感情を取り戻していた。自分はもう後戻りが出来ない・・・そう思っていた。でも、今なら・・・キャルと一緒ならば、普通の世界に戻れるかも知れない。玲二はキャルと共に生きる道を選ぶ・・・。そのためには、組織を辞めるか、逃げるしかない・・・その時、組織はどう出るか・・・。考え込んでいた玲二はリズィに呼び出される。 しかし、いつもの操車場で玲二を待っていたのは、銃を突きつけられたリズィ・・・そして梧桐組の面々だった・・・。梧桐は一枚の写真を玲二に見せる。そこに写っていたのは、室戸の死体の傍らで剃刀を手にした玲二だった・・・。はめられた・・・。だが、この状況では、弁解の余地は無い・・・。動揺する玲二に梧桐は、さらに驚くべき事実を語り出す・・・。
梧桐組を狙った一連の事件は、クロウディアの裏切り行為によるものだったのか?戸惑う玲二に、釈明をせず行方をくらましたクロウディア。その事実だけで裏付けとしては十分だった・・・。 即座にマグワイヤから、クロウディアと部下の玲二の抹殺指令が下る。キャルの身を案じ自分の部屋へと急ぐ玲二。だが、組織の動きは早く、駆けつけた玲二の目の前で住処は爆炎を吹き上げる。呆然とその場に座り込む玲二。キャルの名を叫んでも返事は・・・無かった・・・。 取り戻したかに見えた日常は、再び玲二の手からこぼれ落ちてしまった・・・。 全てを失った玲二は、あの廃工場へと向かう・・・。何もかも、ここから始まった・・・ならば、終わるのも・・・ここがふさわしい・・・。
インフェルノの取引を潰した犯人を調査する過程でキャルという少女に出会った玲二。だが、インフェルノ上層部は犯人の手掛かりを知るキャルを尋問にかけようとした。彼女を守るため、玲二は彼女を助手として訓練していると組織を欺くことに・・・。 キャルとの生活の中で、彼女の無邪気さに触れ玲二は次第に、異常な世界から人間らしさを取り戻していく事に気づき始めていた。キャルと一緒ならば過去の自分に戻れるかもしれない・・・。いつしか二人は互いにかけがえの無い存在となっていた。 だが、あの男、サイスが動き出す・・・。行方をくらまし、クロウディアへの復讐の機会を窺っていたサイス。クロウディア、梧桐組、ワイズメルと三つ巴の疑心暗鬼を煽り立て、それぞれを自滅へと導いた。そして、最後の仕上げとしてクロウディアのこれまでの陰謀をインフェルノの上層部に暴露しようと、サイスが暗躍する。
ただ終わりだけを求め、全てを諦めた様子の玲二。そんな玲二にエレンは、これまで自分を生かし続けていたものが何なのかを打ち明ける。それは、命を助けられたあの日・・・玲二の「生き延びろ」という言葉だった。 負傷したアインとの唯一残っている約束のために・・・。玲二は彼女と共に生き続ける道を選ぶ・・・。 あれから2年後―、長い逃亡生活を経て、二人は日本に身を隠していた。夢のように平穏な日々、普通の若者の様に高校にも通い、このまま過去を忘れて生き続けて行く・・・、そのはずだった。だが、夢の終わりは唐突!・・・忘れていたはずの銃声が玲二を現実に引き戻すことに・・・。
忘れた事など無い、あのオルゴールの音色。亡霊を見て青ざめる玲二・・・。死んだと思い込んでいたキャルが、彼の前に立っていた・・・。 破られた約束に傷ついたキャルの心・・・。ひとりぼっちの少女の悲しみ・・・。そして自分を裏切った玲二に対する復讐だけを支えに、彼女はファントム・ドライへと変貌する。ドライが、玲二を狩り立てるつもりならば、戦いは避けられない・・・。だが、彼女の人生を狂わせたのは、他でもない自分・・・。果たして自分に彼女が撃てるのか? 玲二の苦悩は深い・・・。玲二の心中を察した江漣は、二人を戦わせてはならないとの思いに至る。そのためには、一刻も早く国外へ逃亡するか・・・さもなくば、玲二に代わり自らキャルを撃つしかないのか?! 3人のファントム(亡霊)は、本来持ち得ないはずの感情を交錯させる!
キャルは江漣を礼拝堂に呼び出した。この2年間、自らを押し殺しインフェルノに飼われながらも、玲二を探し出す機会を伺い、彼を追い詰め、始末することだけを楽しみに生きてきたと江漣に吐露するキャル。一方、サイスから二人の居場所を告げられ礼拝堂へ駆けつけた玲二が目にしたのは、互いに銃を向け合う二人の姿だった。とっさにキャルに銃を向ける玲二。だが・・・トリガーにかかる指先は震える・・・玲二にキャルが撃てる訳がなかった。固まる玲二を差し置いて、キャルと江漣が同時にトリガーにかけた指に力を込め始める・・・。
リズィの乱入で興が冷めたのか、キャルは素直に退いた。2年ぶりの再会・・・しかし、玲二とリズィは互いに懐かしさにひたることはない。リズィは玲二にキャルを抑え切れなくなるのは時間の問題だと忠告し、クロウディアの分まで今を生きろと言い残し去って行く。 逃亡までの時間を稼ぐための切り札として、玲二は、彼に想いを寄せる梧桐組組長の娘・美緒を利用し、梧桐組の現若頭である志賀を介してインフェルノに圧力をかける。しかし、上層部の決定に納得の行く筈もないキャルは、玲二の前に単身現れる。 「お前の手にかかるなら・・・相応の報いだ。ただ、江漣・・・アインだけは見逃してほしい」 自分を捨てた玲二に、死んでも守りたいと思う相手がいる・・・。玲二の言葉にキャルは激昂し、玲二を殴りつけ立ち去る。だが、その夜どういうつもりかキャルは美緒の前に姿を現わす・・・。
美緒という切り札を握ったキャルは、玲二との対決の場を指定するまで日本に留まれとプレッシャーをかける。美緒を犠牲に逃げる事など選べるはずも無い・・・。どうあっても対決はもう避けられないのか・・・。キャルの要求に従い、表面上は今まで通りの生活を送る玲二。 自分にキャルが撃てるのだろうか・・・? 切迫した事態に比して、考える時間は余りにも少なかった・・・。そんな折、江漣は留守電のメッセージだけを残し、玲二の前から姿を消した。美緒を救い、そして玲二を守るためにキャルの居場所を探り、彼女を撃つ・・・。 「あなたに江漣と呼ばれて以来・・・、私の命はあなたを守るためだけにある・・・」 それが、彼女の意志だった・・・。元ファントムのアインではなく、江漣としての・・・。
玲二の必死の捜索にも関わらず、江漣とキャルの行方は杳として知れなかった・・・。焦る玲二にキャルから解放された美緒からの連絡が入る。巻き込んでしまった事を今更悔やんでも取り返しはつかない・・・。しかし、美緒は何事も無かったかの様に江漣とキャルの居場所の手掛かりを伝え、そして二人の事を頼みますと、玲二を送り出すのだった・・・。 「明日になったらきっと忘れちゃいます。・・・だから玲二さんも、いつだってここに戻ってきていいんです」 全てを許し玲二を見送る女・・・美緒。身を捨てて玲二を守ろうとする女・・・江漣。純粋な想いゆえ全てを奪い壊そうとする女・・・ドライ(キャル)。三人の女・・・。そして一人の男・・・玲二。現在と過去・・・自分の愛した彼女たちの対決の場所は礼拝堂・・・。だが、贖罪も告悔も、今はまだ出来ない・・・。自らの手で因果に決着をつける・・・それまでは・・・。
玲二は自らドライ(キャル)と決着をつけた…。彼女を悼む時間すら与えられず、銃声が轟く。白いマスケラと突撃銃で武装した6人の少女たち…サイスの新たなファントム『ツァーレンシュヴェスタン』が襲いかかる。
喪失感がすごい。
救われなさがあえて良いのかもしれないけど。
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ラストが改変されていたのは知っていたけど、ハードボ…
ビジュアルと雰囲気が好きなので見てみました。
終わり方が胸糞悪くてえ???って最初思ったけど良く考えてみたら「全員地獄に落ちた」という表現だったのかもしれない……と思い、めちゃくちゃグッと来た。
…
「この世界が無限の地獄じゃないとしたら、それはあなたが生きているからよ」
「良いじゃないか、夢の中でくらい有り得ない救いがあっても...」
うわああああぁぁぁぁぁ.....ってなる...
玲二と江漣…