「マイ・ブラザーズ・ウェディング ディレクターズ・カット版」

「キラー・オブ・シープ」と同様にAfter School Cinema Clubさんの上映企画にて鑑賞。2007年に再編集されたバージョンを鑑賞したので上映時間は82分。「キラー・オブ・シープ」とは異なりしっかりとしたストーリーがありコメディ色も強いので映画として非常に観やすい。それでありながらも何をやっても上手くいかない主人公の儚さと常に銃が身近に存在しているという恐怖感がマッチして普通の劇場公開作品では観られないような独特な面白さもあった。冒頭のアメイジンググレイス(このシーンは企画での上映ミスがあり2回鑑賞)がすごく印象的。

• #りょうすけ2022

文字通り「色を付けた」という感じで、モノクロがカラーになり多少の作劇性が追加されたがこれもこれで非常に生々しい生活実態。例えば置き配が普通に成立したりする日本では到底考えられない治安状態、客一人迎えるのにも銃を握り、一つ角を曲がれば銃を突きつけられる。前科者の更生と言う点ではさして変わらぬかもしれないが、職もなく生活を改めるつもりも無い親友の為に世話焼く主人公の努力が虚しい。もう一つの軸としてタイトル通り実の兄の結婚が進行していくが、彼は彼で学も財も地位も手に入れた名誉人種の様な扱いを受け分断が生じている。この二極化は彼等のコミュニティの中での正しい姿なのだろうし、かつての被差別時代を解雇する声もそれはそれでリアルなのだろう。変容する時代の中で前進していける者と取り残される者。日夜繰り広げられる父と息子のガチプロレスが微笑ましい、あとおませな「私をプロムに連れてって」少女。

これは前作より好きだ…親父との取っ組み合いというめちゃくちゃ面白い絵面を画面の奥で放置させる余裕がある。天才か？？
クリーニング屋に来る客達も面白いが、ただの会話の場面の裏では必ずなにかが同時並行で起きるように仕組まれている。

足湯に高温の湯を継湯された親父のリアクションなどはそのためにカットを設けずに空間を広くとらえた画面の一部分として提示される。ここにも余裕を感じる。

後半はキアロスタミのようなのっぴきにならない展開になるのだがサスペンスにはならずそのまま終わるというのがまた新しい…笑