次は、いつ会える？

一条真也が上梓した『愛する人を亡くした人へ』を原案とした、作道雄監督、坂東龍汰主演によるスピリチュアル・ホラー。
恋人を事故で亡くした主人公が、グリーフケアと出会い心境が変化していく姿を描く。
原作は未読。
主人公となる森下昴を坂東、恋人の柏原美紀を西野、昴の母親を南果歩、グリーフケア団体のスタッフを津田寛治が演じているほか、円井わん、小久保寿人、岡田義徳、風間杜夫等が登場。
物語は、冒頭フードコーディネーターとしてラジオに出演する美紀と、それを見守る昴のシーンでスタート、その直後、一転して美紀が交通事故で亡くなり、葬儀のシーンに切り替わるため、思いのほか本題に入るが早かった印象。
以降、傷心の中、岐阜にある実家に昴が帰り、グリーフケア団体の人々と関わっていく様が中心となるのだが、そこに辿り着くまでの列車が、JR東海のコーポレートカラーである見慣れたオレンジ色を纏ったキハ25型であり、到着した駅が飛騨古川駅であったのは、東海三県在住の身としては、親近感が湧いたところ。
ただ、問題はここから。
昴が基本的に塞ぎ込んだような雰囲気を醸し出しているのだが、前述のように冒頭で美紀がいきなり亡くなった状態でスタートしていることから、亡くなる前の昴がどんな日々を送り、どんな表情を見せ、どんな仕事ぶりをしているのかが全く見えていないため、その亡くなる前後の違いがわからず、ただの暗い青年でしかなく、ラジオの放送作家だと言われても全くピンと来ない。
何より、同じく妻を亡くした岡田演じる池内が登場してからは、え、そっち系？と言いたくなるような展開が待っており、劇伴もおどろおどろしいものが挿入される様は、ホラーやスリラーのそれ。
そして、その池内を筆頭に、もちろんその行動に理由があるのだが、登場キャラクターの殆どが側から見るとヤバいやつばかりだったため、誰にも共感することなく観終わったというのが正直なところ。
クルマ好きの視点からすると、南演じる昴の母親の愛車が黄色が印象的なシトロエンではあるものの、黄色のボディカラーからして、日本ではあまり見かけないC4カクタスだったのは見逃せないポイント。
他にも、以前別作品で書いたが、リビングがやたら暗い中、テーブル部分だけが明るかったり、どうしたらそんな洒落たアパートに東京で住めるのか謎であったり、はたまた、その台所に何故か急須が二つあったり、ワインボトルが多かったりとやたらと小物が多く、リアリティが皆無。
前述のように人物描写がされてないままそれをやられても、全く説得力がないというダメな邦画あるあるのオンパレードにゲンナリしたのに加え、このテーマに真剣に向き合おうとするなら、ホラー的な要素はいらないはずと思うとともに、主演を任された坂東の演技が悪いとまでは言わないが、脇を固めるメンバーに埋没してしまった印象が否めない反面、バーベキューのシチュエーションで、「燃料お待たせ」と言いながらビールを渡す津田が最も良い味を出していた一作。

覚えているから辛いのか、忘れていくからか。

ドラマ「ライオンの隠れ家」でみっくんこと小森美路人役でお茶の間を魅了した俳優坂東龍太さんの単独初主演映画。死別の悲しみとどう向き合うかという重いテーマだったが、定評のある坂東龍太さんの演技が光っていた。

結婚間近の恋人・美紀（西野七瀬）を突然事故で亡くした構成作家の青年・昴（坂東龍太）は立ち直れずに辛い日々を送っていた。心配した母親（南果歩）からの電話で飛騨高山の実家に久しぶりに帰る。母洋子も昴が幼い時不慮の事故で夫を亡くし、未だに心に傷を抱えていた。昴は、実家の近くのグリーフケアの「つきあかりの会」に参加して不思議な体験をする中で、美紀の死を受け入れ始め向き合っていこうとする。

グリーフとは、決して癒えることのない深い悲しみ。その悲しみに寄り添ってサポートしてくれるグリーフケア。1人では乗り越えられなくても同じ苦しみを抱えた仲間の中で、立ち直れる道を見つけることが出来る。昴が言葉にならない苦しみを抱えながら、前に進もうとする姿を坂東龍太が好演。何て魅力的な役者さんだろう。

「見えなくてもそばにいてね。忘れても思い出すから」心に沁みる作品だった。

公開2日目、上映後、坂東龍太さん、西野七瀬さん、南果歩さん、作道監督、ご本人登壇の舞台挨拶付きで鑑賞♪

南果歩さんも仰ってましたが、監督めっちゃ若いですよね～
異なる3本のシナリオを作られて、それでもしっくり行かず、4本目に作った脚本とのこと。思ってた感じとちょっと違ってましたが、これはこれで独特な雰囲気を醸し出す作品でした。