今年73本目

なぜ兄弟は両親を打ち殺したのか
今語られる裁判の裏話や真実をおったドキュメンタリー

生涯刑務所で過ごすって考えただけでもこわい

男性の性的虐待の映像はもっと取り上げられていい課題だと思う

ドラマ『モンスターズ:メネンデス兄弟の物語』は実話をドラマ化したもので興味深く観ました。

こちらはその本人たちを撮した実際の法廷シーンや、家族、関係者、当時の陪審員などによるインタビューで纏めてあるドキュメンタリーです。（ジャケ写がないとイメージも湧きませんよね）


1989年8月20日のロスアンゼルスの高級住宅地で両親を銃殺した兄弟の話。
当時兄ライルは21歳、弟エリックは19歳だった。
自宅で両親を襲ったが、ロスという場所なだけに、当初は犯人扱いされずに自由放免となっていた。しかし、次第に警察も動き出す。
使われた銃から兄弟と判明するのが遅かったのだが、本人たちも認めて長い刑務所生活を送っている、昨年のインタビュー時にはライル55歳、エリック51歳となっていた。

このドキュメンタリーが言いたいことは、第一級殺人罪で仮出所なしの終身刑で本当に良いのか？ということだと思う。

それは彼らが尊敬している両親を殺さなければならなかった理由が父親による性的虐待が続いていた（エリックにすれば6歳〜19歳まで）ためだった。30年の間、本心を語れなかったのは、時代的背景もあったし、父親の偉大さを心から尊敬し尊重したかったからだった。

最近になりTikTokなどで若い人たちから兄弟に救いを求める運動が起きている。
本来ならば『故殺罪』が当然で、刑期は短めで妥当だったはず。というのだ。

陪審員制度もどうしたって公平にはならない気がしてしまう。
イメージは必ずしも付き纏う。最初に判決を下す時は男性陪審員全員が『第一級殺人』にしたのだ。兄弟の話があり得ないと固定観念が働いたのだろう。

同じ時にO.J.シンプソン事件が起きた。明らかなる証拠が揃っていたのに無罪。金で解決されたんじゃ法の意味は？

日本は袴田さんの無罪が決定したが、58年の月日をどうしてくれるのか？ってこと。
時代と言ってしまうと元も子もないが、あまりに辛すぎます。

この事件も刑が重過ぎる気がしてならなかった。父親が完全に悪かった。
冤罪ではなく実際に殺した事実はあるが、同じ重犯罪にも違いがあるって？その見極めは？

法の裁きってなんなんだろうとまで思えてしまう怖さがある。

この事件はアメリカでは有名ですが、30年後いまの本人達のインタビューがあるのは初めて？だと思うので見てみました。ネットやSNSとかまだ何もなかった90年代、メディアの加熱っぷりは尋常じゃありませんでした。

本人達の証言が中心になっているので、どうしても肩入れしてしまう形ですが、ある意味全ては真実なんだろうなと思えました。毒親だったことも、性的虐待があったことも、家族が歪だったことも、エリックが本当に辛くて自殺を考えたことも、ライルがなんとかしようとしたことも、全て本当でしょうが、何より両親を射殺したことが紛れもない真実。全てを加味して、判決を下す事の難しさを改めて感じました。

時代やタイミング、社会の流れもあって、いまの判決に至るわけですが、そこの成否は司法に委ねるしかない。ただ、時を経て、いまの時代なら？と思わずにはいられません。

とにかく性虐待を証言台で告白する2人を見るのは本当に苦痛で、描写も生々しく、ずっと眉間に皺が寄ってるほど不快でした。聞いているだけでこんなに不快なのに。エリックが「僕の人生を歩まなければ、苦痛もわからないし、逃げられなかった気持ちは伝わらない」と言いたくなるのも無理ないでしょう。

Netflixドラマシリーズは見てないのですが、父親との過去の描写があるでしょうから手が出なそうだなあ…

ドキュメンタリーとしては、好きな仕上がりでした。若干偏っていて、あっさりテイストですが、大まかに兄弟の思いは伝わってるかと思います。