25年前のミシガン州は、アジア系はおろか、黒人すら居住していない白人たちの城である。数学教師の父親ロナルド・リスボン(ジェームズ・ウッズ)を一家の大黒柱とする家族において、母親(キャスリーン・ターナー)のパートタイムの仕事すら必要とされない。エアロスミスやキッスのLPを買い求める姉妹の嗜好は、中流というよりは上流階級に近い。プロム・パーティへの参加を最後まで悩み抜き、答えを出す両親の姿は典型的な敬虔なカトリックの厳格な家庭である。コロニアル様式の住宅、住居の真ん中に印象的にそびえる階段には、脱ぎ捨てられた下着、ビール箱に入れられたLPレコード、メイクアップ道具など幾つものソフィア・コッポラの記号的な道具立てが何度も散らばる。ジェフリー・ユージェニデスが1993年に発表した『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』を題材とした物語は、自殺未遂に始まり、完璧な自殺で幕を閉じる。だが彼女たちの不可解な死は決して残酷ですぐに忘れられるものではない。ダンス・パーティで長机の裏でラックスとトリップ・フォンテーン(ジョシュ・ハートネット)が交わした濃厚なキスの瞬間は10ccの『I'm Not in Love』の調べに乗せ、永遠に交じり合う。人生最良の季節に母親から自宅謹慎を命じられた四姉妹、受話器越しに聞かせたGilbert O'Sullivan の『Alone Again (Naturally) 』やTodd Rundgrenの『Hello It's Me』、Carole Kingの『So Far Away』の淡い記憶だけが、少年たちにとって幻の少女たちの記憶をかすかに繫ぎ止める。永遠の傑作。