これが、青春できていない僕たちの青春。

宗綱弟監督、野村康太、吉田晴登、三原羽衣、松尾潤、鈴木美羽、中山ひなの主演による青春ドラマ。
修学旅行の班決めで、誰とも組むことができずにいた「ぼっち」の高校生6人が同じ班となり、修学旅行に臨む姿を描く。
主人公となる6人の高校生、加山糸を野村、飯島祐太郎を吉田、馬場すみれを三原、五十嵐大輔を松尾、新川琴を鈴木、山田ちえを中山が演じているほか、小西詠斗、賀屋壮也等が登場。
物語は、一人堤防を歩き、クラスにおいても友達がいない加山の問わず語りでスタート、そのぼっち感はなかなかのものなのだが、そんなクラスがガヤガヤしている中、さりげなく他にもぼっちの生徒が映り込んでいたのは、まさに現代の、いや自分の頃も含めた高校生の縮図を端的に示していたため、思わず「そうそう」と感じさせてくれたオープニングとなっている。
以降、修学旅行の班決めでは、その陰キャの加山が班長にさせられ、同じくぼっちである自己中のTikToker馬場、ガリ勉の新川、周りからウザがられている五十嵐、気が弱い山田の5人に、修学旅行当日、引きこもりの飯島が加わった6人で広島へ向かう姿が中心となり、自由行動をどうするのかという展開に。
そこからは、各自の行きたい場所を巡ることとなり、それぞれの心情が徐々に明かされるにつれ、打ち解けていく様は、そのステレオタイプなキャラクターや演技も含めてベタと言えばそれまでなのだが、この手の青春映画の王道でもあり、それが非常に心地良く感じたのに加え、広島市内のプチロードムービーとしても楽しめたところ。
また、前述のようにステレオタイプなキャラクターばかりなのだが、連続ドラマのように人物描写にある程度時間をかけることができるのならいざ知らず、限られた尺の中で主役級の人物を均等に描き切るにはそうならざるを得ないところである中、TikTokerの馬場役を演じた三原が実際でもトップインフルエンサーであり、劇中でもスマホ撮影や動画編集担当だったことはもとより、加山を演じた野村が沢村一樹の息子だったことを初めて知り、驚いた次第。
終盤では、思いのほか伏線が回収されたのに唸らされたのだが、企画と脚本担当が、何気に激アツ作品だった吉野耕平監督『ハケンアニメ！』でも脚本を担当した政池洋佑であったことを鑑賞後に知り、それも納得。
劇中でも店員役として出演していた宗綱監督の長編映画デビューとしては上々の船出となっており、奇しくも主人公と同じである高校二年生の私の娘が、先日修学旅行の班決めが同様にあり、非常にドキドキしていたこともあって、絶妙なリアリティを感じていたところ、振り返れば、まだ「ぼっち」という言葉がなかった私の高校生時代でも、周囲がガヤガヤしている中で誰にも声をかけられないという、多人数だからこその孤独という、何とも言えないぼっち感の恐怖を思い出したとともに、加山のバッティングシーンで、右手と左手の間を少し開けてバットを握っていたのを見て、かつて中日ドラゴンズの外野手であった彦野が頭に浮かんできた良作。

死にたいと思うほど、絶望してるわけでもない。

「修学旅行」という、学生時代における一大イベントを舞台にしたミニマルな青春映画。舞台装置はシンプルでありながら、その奥には現代的で普遍的な問いが織り込まれている。

『ぼっち』である彼らは、旅の中で少しずつ距離を縮めていく。 そのプロセスは、まるでコミュニケーションの本質そのもの──信頼、共感、伝達、相互理解──を一歩ずつ踏んでいくかのように描かれている。

これは単なる友情ドラマではなく、社会的アイデンティティや『アタッチメント（愛着）』といった心理的側面を静かに描いた作品でもある。

人は、どこかに属していたい生き物だ。 それは安心のためであり、同時に自分を定義づけるための枠でもある。修学旅行という「集団であることが前提」の場において、所属のない状態──すなわち『ぼっち』であることは、強烈に浮かび上がる。 だが本作はその孤独を否定するのではなく、むしろそこから始まる関係の芽生えを丁寧に描いていく。

登場人物たちの心理的な変化には、安全基地としての存在を求めるようなアタッチメントの動きが見てとれる。
警戒し、距離を置き、けれどふとした瞬間に『他者に心を預けてみたい』という揺らぎが生まれる。 その小さな勇気と選択の積み重ねが、彼らを確かなつながりへと導いていく。

一方で、この映画が見落としていないのは、「ひとりであること」もまた、尊重されるべき選択肢だということ。 それは『選択的孤独（solitude）』と呼ばれるように、時に人間にとって必要な距離であり、自己の再構築の場でもある。

『つながりの肯定』と『孤独の価値』を同時に描いている点で、この作品は決して一方向の理想を押し付けない。

それでも、どこかで誰かと心を通わせることの意味を、 それぞれのかたちで見せてくれる。

『６人ぼっち』は、共にいることと、ひとりでいること。 その両方のあいだで揺れ動く私たちに、 『あなたはどうありたい？』と静かに問いかけてくるような、優しい映画だった。

公開されるまで、全くノーマーク
ご覧になられたフォロワーさん達の熱い賞賛レビューを拝見し、鑑賞

引きこもり、陰キャラ、コミュ障、自己中、等々友達のいないぼっちな高校生が修学旅行に際し同じグループになり、三日間の道中を描いた青春ドラマ

めっちゃくちゃ、面白い
素晴らしい作品でした！

誰もが過ごして来た青春時代あるある、共感することも多々あり、ぼっちな六人に完全に感情移入して最後まで楽しめました

橋の上での感情をさらけ出すシーン
みんなで集合写真を撮るシーン
帰郷して迎えるラストシーン

どれもが甘酸っぱくて、胸がキュンとなり、涙してしまう素敵なシーンばかり
公開終了間際、観ることが出来て本当によかった

• #2025年AKIROCK映画館鑑賞