horahuki

スペースバンパイアのhorahukiのレビュー・感想・評価

スペースバンパイア(1985年製作の映画)
3.5
我々はみな吸精鬼だ!!

トビーフーパー×ダンオバノンの強力タッグによるSF吸血鬼映画。ゴシックホラーとSFの融合に関しては、『バンパイアの惑星』『エイリアン』からの影響を色濃く感じるし、人間より遥か太古から存在する支配者として同時期の『ザ・キープ』的な要素を加え、伝統的な吸血鬼の様式を採用しつつもアレンジを加えた面白い作品でした。

2時間近い長尺にもかかわらず、冒頭の宇宙空間での映像がピークだったのではないかと思ってしまうほどに魅力的なプロローグ。緑と紫を基調とした美しさの中、76年周期で現れるという巨大な宇宙船の「これ近づいたらダメなやつや…」感に圧倒されるし、生物の体内のようなグロテスクさを感じる宇宙船内部を奥へ奥へと進んでいくことにより嫌な空気感が作り上げられていくのが良い感じ。「懐かしい感覚」「有史以前」というセリフからも支配者としての強大さとロマン、そしてある意味では人類の種としての胎内的意味合いも感じられるのがまた気味が悪い。

そんな死を思わせる有機的なキモさから、一気に無機質で整序されたキモさへと様変わりすることによるギャップのインパクトを叩きつけられた後の鎮座するアレとかめちゃワクワクしますわね。この時点でコレ絶対オモロイやつや!と期待値が爆上げだったのですが、地球編へとお話が移ってからは、テンポが悪いのか何なのか冒頭に感じた視覚的楽しさが削がれてしまって盛り下がっていくのが退屈で、今度は眠気の方が爆上げになっちゃったのが悲しい。

生気を吸い取ってミイラ化させることで同質化、そして長くはもたないというところは意味深で、ドンシーゲル版というよりもフィリップカウフマン版の『SF/ボディスナッチャー』に近いものを感じるし、誰もが吸い取る側なんだっていう独自色を打ち出してるのも面白いです。そして抗えない誘惑は古典的な吸血鬼映画が幾度となく描いてきたことではあるんだけど、人類の起源的なところまで暗に指し示そうとする本作の方向性を考えると、より根源的な気持ち悪さが浮かび上がってくるのがSFとしてもホラーとしてもナイスなポイント。

魚眼とまではいかないけど広角で捉える映像が多く、それがうまく機能してるのかは別として印象的ではありました。他にも焦燥感を煽る下から見上げるアングルだったり、暗闇の中で目元だけに青白い光を当てる古典的で怪奇な演出、多用される影による内面の投影や婉曲的な表現等、フーパー監督の確かな演出は見どころが多かったです。脱出艇の落下地点がテキサスという地元愛も笑ったし、招く役割を考えるとテキサスから悪が蔓延していくようにも捉えられ、『悪魔のいけにえ』的発想が見え隠れするのはフーパー監督の遊び心だったのかな。

原作者にはボロクソ叩かれたみたいだけど、視覚的イメージが面白いとこ多くて割と好きでした。地球来てからが死ぬほど退屈でしたけどね…。というかあんだけインパクトあったマチルダメイの登場時間が合計7分だっていう事実に一番驚きました。マジ??😅

それと、ハゲの研究者が出てて「似てるな〜でもコレ85年の映画だし、こんなに変わらないわけないわな…」とか思って見てたんだけど、マジでパトリックスチュワートご本人で笑った。こんな変わらん人おる?ジョジョの作者と二強。
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