本当に大切なものは、意外と目に見えない。

【感想】
信頼していた先輩から、戸籍売買の手伝いを頼まれるようになってから、金は驚くほど簡単に手に入るようになった。
だが、その瞬間から、もう元の世界へ戻ることはなかった──。

本作は、三人の主要人物の視点で語られていく。
決して関わることのないはずだった「闇社会」で生きる人々の物語だ。

闇ビジネスに足を踏み入れようとする新卒の後輩。
闇から抜け出そうとする先輩上司。
そして、もはや引き返せなくなった中年課長、のようなイメージ。

最初は、ただお金が欲しかった。
ほんの少しの勇気と軽い気持ちで、彼らは闇社会に足を踏み入れた。
だが、一度その世界を知ってしまえば、二度と戻ることはできない。
そこには、上の者による圧力と暴力が存在し、逃げ道を塞がれていく。

お金は、麻薬だ。
一度、簡単に大金を手にしてしまえば、もう止められない。
バイトや正社員として働くのが、馬鹿らしく思えてしまう。
やめたくてもやめられない。
膨れ上がった欲と、上層からの指示に縛られて、逃れられない。そして本当に大切なものを見失っていく。

かつて、金がなくても笑い合えた日々があった。
安い鯖をおかずに、二人で食卓を囲んでいたあの時間が、いちばん幸せだった。
──お金では、幸せは買えない。

やがて、闇社会の残酷さを痛感する。
上の指示に背けば、すぐに「制裁」が下る。
どこに隠れていようと、居場所は特定される。
暴力と殺しの狭間で、背筋が凍るような恐怖が常に隣り合わせだ。

それでも、闇社会の住人たちは、決して「悪人」ばかりではなかった。
大金を求めて闇バイトや闇ビジネスに手を出す者は少なくない。
だが普通なら、違法行為をしてまで金を得ようとは思わないだろう。

本作では、劣悪な家庭環境で育った人々が、やがて闇に手を出していく経緯が描かれる。
親からの暴力、まともな食事も与えられない日々。
義務教育だけで終わった学び。
生活保護を受けても、知識がないせいで搾取される現実。
どこにも雇ってもらえず、彼らには「それしか」生きる術がなかったのかもしれない。

信頼していた先輩がやっていることに、善悪の区別がつかなくなっていく。
彼らは本当に悪人なのか──。

もし本当に根っからの悪党なら、
寝ている人のそばに、そっと物を置くような優しさなど、見せるはずがない。

試写会後、監督は「ハッピーエンドとして描いた」と語っていた。
しかし、見る者の視点によって、物語はハッピーエンドにもバッドエンドにも姿を変える。その多面性が、実に見事だった。

2025年　120作目
2025年　映画館　29作目

• #2025年映画ショー
• #2025年映画館ショー

Filmarksさんから試写会のご案内をいただき鑑賞！ありがとうございます😊

ストーリー見て楽しみにしてたんやけど、グロかった〜途中結構目伏せてた😞
私的には最後30〜40分で面白さが加速していった感じがした！
逃げれるのかどうか、今後の彼らの人生はどうなるのかと手に汗握りながら鑑賞してました🎬
魚の煮付けが美味しそうやった〜

試写