広瀬にプロポーズされた名美（余貴美子）はホストクラブの支配人･行方（根津甚八）との腐れ縁を断ち切るために､ある計画を思いつく｡
そして､“何でも代行屋”紅次郎(実は“村木”)（竹中直人）を訪ね､福岡から上京してきたと偽り､東京案内を依頼する｡
ホテルに戻った名美は行方を部屋に招き入れ計画を実行しようとするのだったが……｡
劇画家･石井隆の｢天使のはらわた 赤い眩暈｣｢死んでもいい｣に続く監督第3作目｡石井作品にたびたび登場する“名美”と“村木”の物語が綴られていく｡
腐れ縁の男の死体を押し付けられた代行業の男が謎の女に惹きつけられ巻き込まれていくハードボイルド・サスペンス。
竹中直人演じる村木が、サラリーマン崩れの代行業の男で冴えない人生で一度くらい誰かの役に立ちたい一心で名美のトラブルに立ち向かう姿が、日本版ハードボイルド・ヒーローといった感じで、カッコ良いです。
幸せを求めながら男運の悪さで儚いながらも薄幸なヒロイン名美を演じる余貴美子も、魅力的です。
やさぐれたホストクラブの社長・行方を演じる根津甚八、ギラギラした椎名桔平の好演も魅力的です。
名美が行方に別れ話を切り出すシーンや名美が行方を殺害するシーンや行方の死体を処理するために右往左往するシーンや村木が必死に拳銃を手に入れようとするシーンや村木と椎名桔平が対決するシーンなど、石井隆独特の長回しによる緊張感溢れるシーンが満載で、日本版ハードボイルド・サスペンスの傑作となっています。
名美が村木のために椎名桔平と決着をつけるシーンや村木と名美が最初で最後に結ばれるシーンの切なさが、泣けます。

• #紅次郎
• #石井隆

大好きな映画なので、劇場で見れて感動。90年代の日本のストリートの猥雑な空気が記録された和製フィルムノワールとしても、名美と村木の報われないラブストーリーとしても完璧な出来で、石井隆の作品で一番好きだと再確認。竹中直人、余貴美子、椎名桔平が対峙する室内の場面や、曇天の埠頭での長回しは改めて見ても鮮烈だし、何よりラストカットの竹中直人の表情は一生忘れられない。

石井隆監督作品。
彼の没後3年特集上映にて、主演の竹中直人と宇多丸のトークイベント付きで鑑賞。

興味深い話の節々で、竹中直人の石井隆監督に対する特別な敬愛の念を感じることが出来た点が素晴らしかった。

「何でも代行屋」の紅次郎（竹中直人）が、謎めいた美しい女性・名美（余貴美子）から東京案内を依頼されるーー。

ネオンがきらめく夜の東京を舞台にした美しい映像は、官能と暴力が交錯する緊張感に満ちているものの、余貴美子演じる名美は、妖艶さだけでなく、どこか天然で愛嬌のある人物として描かれており、物語に喜劇的な要素と軽やかさを添えている。
結果として、濃密なノワールでありながらも、重くなりすぎない絶妙なバランスが生まれているように思う。

また、映画デビュー間もない椎名桔平の演技が素晴らしい。狂気を感じさせる危うさと、スタイリッシュな色気を併せ持つ彼のキャラクターが強烈な印象を残す。椎名桔平ファンには必見の作品ではなかろうか。

さらに、竹中直人の持ちネタである「三半規管ネタ」なども盛り込まれていて、シリアスな雰囲気の中にもクスリと笑える瞬間があるのも本作の魅力の一つ。

かなり好みの作品だった。
同監督は『GONIN』しか観たことなかったが、もう少し観てみたいと思う。