大阪アジアン映画祭

題名はそのまんま過ぎな感じがしますが、今年は「トワイライト・ウォーリアーズ」でキメキメだったルイス・クーが、今回は冴えない私立探偵であり、ダメダメな夫であり、とにかくどっちの面でも追い込まれての苦悩が伝わってきます💦

サイコパス的な連続殺人事件が並行して走り、話が繋がっていくサスペンスでハラハラさせられるのですが、それ以上に夫婦関係の話でした。

これがマリッジストーリーで、とにかく辛い。夫婦の事は周りからは分からないし、やっぱりお互いがよく話すことが大切ですね^^;

上映後の監督2人へのQ&Aの記録。
2人体制で監督したとのことだが、撮影現場ではどのようにして協力しあったのか？という質問があって、それに対して監督「現場では監督同士で喧嘩ばかりしていた。作中ではルイス夫婦の喧嘩が絶えないが、映画を作るにあたり、実際現場でも2人の監督のうち片方がルイス役を、もう片方が奥さん役になって口論をしてみるということがあった」という話が面白かった。
キャスティングについての質問に対し「あの格好良いルイス・クーを、元々本作のために作り上げていたルーザーな中年男という人物像に近づけるためにどうすればいいか模索していたところ、ルイス自身からパーマをあててみてはどうか、眼鏡をかけてはどうかという提案があった。その役作りは大成功だった。彼は実際にマレーシアで雑踏の中を歩いたが、誰もそれがあのルイス・クーだとは気づかなかったからね」という話も面白かった。

ルイス・クー自身で面白かったのはダサい男の演出をとことん極めていたところ。大声で怒鳴るし喚くしめそめそする。やさぐれて飲んだくれる。ルイス・クーてなんでもござれでパブリックイメージが損なわれるかもとか躊躇うことなく全部やってくれる俳優さんなんだな…と思った。トワイライト・ウォリアーズでの龍捲風からの振り幅が大きすぎた！

作品で面白いな〜〜と思ったことの1つは画作り。水中の撮影を利用して、それまでの地を這うような画作りとは対照的に、非現実的な、幻想的なシーンを作り上げていたところ。そして探偵ものらしく、依頼された人を追うために遠くから監視している探偵の視点から、徐々にズームインしてその人物を画面の中央に据えていたところ。

刃物でグサグサやり合うシーンは度が過ぎて一周回って笑ってしまった。

お話については監督が上映前に明言していたように愛情について描いた作品だった。夫婦間でのコミュニケーション不足やすれ違いで気まずくなってしまうことは多くある。人を愛することって、実際は全然ロマンチックじゃなくて、格好悪くてダサいもの。そのダサさを丸ごと受け入れてくれる人に出会えたらそれがあなたの愛するべき人だよ、というメッセージを感じた。

大阪アジアン映画祭にて鑑賞。
しがない私立探偵が殺人事件に巻き込まれてしまうストーリーだが、全編通して基本的に湿っぽくシリアスな雰囲気でありつつもどこかクスッとさせる演出が多数盛りこまれているのが香港映画らしくて愛おしかった。

映画祭では監督の話等も聞けたが
当初は日本を舞台にする案もあったらしいが、マレーシアの湿度や雰囲気がとても作品に合っていたので日本でなくて正解だったと思う。主演ルイス・クーのくたびれた役柄の演技も良かった。