最高最高！目標を取り違えた誘拐犯とその子の父親との追走劇は、説明しきれないほどおかしな事も起きてるんだけど、それらが全てストーリーを加速させるのに繋がっている奇跡

『タクシードライバー』＋『天国と地獄』＋αな、娯楽映画はこうでなくちゃなごった煮サスペンスアクション。ぜひ映画館で！

45年前のクライム・アクション。普通クライム系作品といえば「夜の街」が事件の舞台になりますが、本作は…

日中の街中で誘拐劇が起き、
日中の街中で銃撃戦が起き、
日中の街中でカーチェイスが起き、
日中に街中の風俗店に主人公が乗り込みます☀w。

さすが70〜80年代の魔都・NY。昼間っから犯罪が起こりまくります。そして埃っぽい街並みや、ヒッピー調でサイケデリックなファション。イエローキャブ🚖が歩道をぶっ飛ばすシーンなんかも含め、「あの頃のめちゃくちゃなNY」がフィルムに焼かれているんだと感じます。うん…治安めっちゃ悪そうw。公園を走るランナー達も、何故か不健康そうに見えますw。

映画としては間違えて誘拐された娘を救うべく、NYを駆けずり回るお父さんのお話。ロリコンの気持ち悪い犯人だけでなく、イカれた逆恨み刑事や若いギャング達も、ウザく絡んできます。中盤では露出多めキャミソールのお姉さんも味方に登場（…彼女はいったい何だったんだw）。なんだか良く分からないごった煮状態ですが、面白い作品ではありました。（実際は分かりませんが）後のタランティーノとかガイ・リッチー作品なんかに影響与えてそう。

　30数年前に午後ローで観て以来というか、あの蓮實重彦が激勝しているのを少年時代に活字で見て以来、折に触れてもう一度再見したかった今作も遂に４K上映の機会がやって来たとのことで、初日に馳せ参じた。今作こそ列記としたシネマート新宿案件であり、キングレコード案件だとたかを括っていたのだが、まさかのザジ・フィルムス案件には今年一番驚かされた。ニューヨークで娘を誘拐された元刑事の父親が、事件発生の朝から翌早朝までの約25時間、街中を走り回って犯人を追い続けるワンシチュエーションのカー・チェイス映画である。B級作品ながら日本では当時そこそこのヒットになったものの、その後はVHSのみ。権利問題で長らくDVDはソフト化されず幻の名作扱いだったが、近年Kino Lorberなどによる4K修復で世界的に再評価が進んでいる。70年代末〜80年代初頭の一番危険で猥雑だった頃のニューヨークの実景ロケが最大の見せ場で、サウス・ブロンクスのスラム、42丁目のポルノ街、地下鉄トンネル、ゴミだらけの運河沿いなど、大都市ニューヨークの観光ポスターとは真逆の都市像がこれでもかと映し出される。犯罪多発地区でのロケは実際にトラブルも起きたと回顧されており、その猥雑さが画面にも残る。

　名もなき父親の娘奪還の物語は、警察が当てにならないから父親が自ら動くという一点に尽きる。警察組織は形式主義で動きが鈍く、腐敗したバーンズのような人間も巡査部長に昇進している。実際にキャシーの行方に迫っていくのはボイドとマリア、そしてストリッパーやタクシー運転手といった市井の人々であり、そこにボロボロの都市を支えているのは名もない市民というメッセージを読み取ることも出来る。父親像としてのボイドは冷静なプロフェッショナルというよりも、怒りと焦燥に突き動かされた野性そのもののように描かれ、ジェームズ・ブローリンの獣じみた存在感が作品の核になっている。この「暴走する父」がすっかり時代遅れとなった家父長制の長としての頼れるお父さん像を形作る。ソルティックがクレイトンを憎む理由も、再開発の名の下に望ましくない住民を押し込め、土地を安く買い叩いた結果、自分の愛した街が崩壊したという階級/人種問題に根ざしている。この社会背景が、単なる誘拐サスペンスにとどまらない陰鬱さを与えるのだ。ほぼ全編ノンストップの暴力とカオスで押し切るパルプ・スリラー性が近年では高く評価されている。特に序盤のカーチェイスは『フレンチ・コネクション』と並び、ニューヨーク映画ベスト級だとまで言われることも少なくない。

　一方で、人種差別的な台詞や女性・性産業労働者への扱い、誘拐された少女への倒錯的な描写など、現代の感覚からするとかなり時代の負の価値観をそのまま表現している場面も多い。『WEAPONS』公開で今再び注目される息子ジョシュ・ブローリンの息子奪還劇はある種これも元ネタの一ではという声も多い今作は、今こそ再評価のジャスト・タイミングと言えるのではないか。