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沼影市民プール
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沼影市民プールの作品紹介

沼影市民プールのあらすじ

50年に渡り”海なき町の海”として愛されてきた、さいたま市の沼影市民プール。ここは高齢者にとっては健康増進の場所として、家族連れや子供たちにはレジャーの施設として、そしてゲイの男性たちには出会いの場所として、広く愛されてきた。しかし、都市開発計画は住民の反対運動や愛する場所を消失する心の問題を無視してプールの解体を決定してしまう。 喪失を通して「公共空間の記憶」や「死の受容」といった普遍的なテーマを見つめ直し、都市開発の光と影を描き出す珠玉のドキュメンタリー。

沼影市民プールの監督

太田信吾

原題
NUMAKAGE PUBLIC POOL
公式サイト
https://numakage-film.com/
製作年
2025年
製作国・地域
日本
上映時間
80分
ジャンル
ドキュメンタリー
配給会社
ナカチカ

『沼影市民プール』に投稿された感想・評価

最後に駄菓子屋に挨拶に行くシーンがなんかよかった。
どれだけ長く愛された施設だったかが、じんわりと感じられた気がする。

欲を言えば4DX上映で、隣のロッテ工場から流れてくるあのチョコレートの甘ったるい香りを流してくれたら、もっと没入感が上がったかもしれない。

プール存続派から、感情的に詰められている役人達。
そのストレスを考えてしまって、ちょっと胃が痛くなった。
あまりに説明不足なのはもちろんよくないけれど、説明したところで存続派が納得するとも思えない。
このどうしようもなさがなぁ〜。
'沼影市民プールありがとう'映画ランキング第1位


僕にとって今作は、ドキュメンタリーの枠だけに収めたくないものになった。

何度も行ったあの場所が、スクリーンの中で少しずつ死んでいく。

沼影市民プールは僕の地元にあった。

夏にはプール、冬にはスケート。
売店の塩気の強いポテトを食べながら友達とダラダラ喋って、チャイムが鳴ったら帰る。

思い出の場所というより、もっと雑な存在。
そこにあるから行く。
なくなるなんて考えもしない。



今作は、閉鎖が決まった沼影市民プールの最後の49日間を「否認、怒り、取引、抑うつ、受容」という死の受容プロセスを軸に、利用者や関係者の声を拾いながら、プールがその役割を終えていくまでを映していく。

泳ぎ、はしゃぎ、無邪気に笑う子供たち。
監視員の真剣な眼差し。
ウォータースライダーや売店、ロッカールーム。
ドローンや水中撮影まで使って、普段なら見ようとも思わない場所を異様なほど丁寧に映していく。

ただ、どこにでもあるような風景も、終わりへ向かっている事実を含むと、少し違って見えた。



今作において強烈だったのが、ここが性的マイノリティの人たちにとって出会いの場でもあったという一面。

正直そんな場所だったことを知らなかった。同じプールを利用していたのに、僕には見えていなかった時間が確かに存在していた。

そして、その部分を実際の記録映像ではなく、俳優による演技で再構成する。
ドキュメンタリーだったはずの映画に、明らかに演出された場面が入り込み、鑑賞中は少し戸惑った。

でも、考えてみれば当然なのかもしれない。

カメラを向けられない場所がある。
撮影できない人がいる。
映像として残せない記憶がある。
それでも、そこにあったものまでが消えてしまったわけではない。
だから今作は「撮れなかったもの」を、演技によって映画の中に立ち上げる。
事実をそのまま映すことだけが記録ではない。
映せなかったものまで想像し、残そうとすることもまた記録なのだと感じた。


この映画を観て初めて、沼影市民プールには僕が知っている以上の時間が流れていたことに気付いた。

僕にとってはポテトを食べて、友達と喋って、泳いだり滑ったりして帰る場所。
誰かにとっては、家族との憩いの場所。
誰かにとっては仕事をする場所。
そして、誰かにとっては出会いが始まる場所。

同じ水面を見ていたはずなのに、見えていたものは全然違った。
何度も行ったのに、ほんの一部分しか知らなかった。


そんな僕が知っていたあの場所も、僕が知らなかったあの場所も、もう存在しない。

でも映画の中では、今も誰かが泳いでいる。

現実では二度と帰れない場所を、映画はもう一度だけ、目の前に映してくれた。

僕の地元にあった、あのプールへ。

さようなら、そしてありがとう沼影市民プール。
minavo
4.0
2023年に閉所した、武蔵浦和に存在した市民プールの閉所までの2ヶ月を収めたドキュメンタリー。ボクもこのプールから1時間くらいの距離に住んでいるが、存在自体全く知らなかった。

行政の市民サービス、利用する人、そこで働く人、周囲の商業施設などへの影響を、キューブラー・ロスの「死の受容(死の受容過程)」に沿って「市民プール=人の死」に例えて描く。

だから閉所の際の所長の挨拶は、葬儀の弔辞のようで涙なしには見られなかったし、その後、職員やライフセーバーの大学生らが語る様子は、お通夜で故人に対する思い出を語るように見える。ついでに言うと、その時の劇伴も「アメイジング・グレイス」のように聞こえた。

ただ、このドキュメンタリーは、ノスタルジックな思い出に浸らせるだけではなく、利用者の多様性やプールの課題にも目を背けない。序盤から男性が男性目当ての盗撮なのか何かで警察が逮捕してるシーンがあったり、後半、長い時間を割いて描く、プールの常連のゲイおじさんと年老いた母親の暮らしぶりにも焦点をあてる。近隣の浦和の劇場では満席の人気だそうだが、懐かしさだけで親子で観に行くとどんな感想をもたれるのか少し心配だ。

実際のところ、地方創生の予算か何かの使い道としてプールを潰して公立学校を作ることは、増えてきたタワーマンションのファミリー層の受け入れに待ったなしの状況だったことと推測できる。

映画として市長と市議、市民の対立もみせたいのもわかるけど、閉所2ヶ月前という視点で見ると、申し訳ないが告知が足りない市側、市のルールに沿った意見書を提出する市民グループなど全員のやり方がいけてない。ここは、ディスコミュニケーションの問題にしか見えなかった。

なので後半のゲイおじさんの親子や、ゲイ友との密やかな心の交流が、正論ばかりでコミュニケーションになってない、プール問題との対比にみえるのはおもしろかった。

東京のプール事情は、遊園地隣接のプールばかり毎年派手な広告で有名だから人が集中する傾向がある。土日などは高い入場料を払って芋洗い場の芋になった気分を味わうだけだ。市営プールなどもあるが、この映画のプールのような規模感のものはなかなかない。だから、地元の人たちはその価値を理解して愛していたこともわかる。

海外のホテルにはプールが途中階で付いてるホテルが多い。日本でいうとドーミーインのように大浴場が付いてるノリだろうか。アメリカ人の友だちに聞いたら、ホテルにプールがついてないと文句を言う人がいるらしい。

特に地方自治体は、インバウンド資産として公営プールを見直されてもよいと思う。温泉には抵抗があるが、プールなら楽しめるという外国人観光客は少なくないのではないだろうか。

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