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雁
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目次

『雁』に投稿された感想・評価

月
3.9
劇場公開日:1953年(104分)
豊田四郎監督作品
原作:森鴎外
明治末期から大正初期にかけて雑誌“スバル”に連載「雁」

良い作品でした!
名作だと思います!
丁寧に心情が表現され、とても抒情的で洒落た映像の作品でした
心に響いたし、沁み入る切ない感情を味わいました

古い作品で、更にはYouTubeにアップされているものを観たので、時々映像が乱れたり、暗すぎて見えなかったりが非常に勿体なく、修正版などが出たら、さぞかし美しくお洒落なシーンがたくさん見れただろうな、と思える作品です

そんな映像ですし
セリフの言い回しなども昔のものですから
観られる方は
物語に没入するまで(慣れるまで)10分ほどは、少し耐えていただく時間になるかと思います💦

物語はさすがの森鴎外先生です!
呉服屋の男に大学裏の無縁坂に家を与えられ暮らしているお玉
でも!
実は、その男は「高利貸し」で「結婚」もしている男だった…
そのことを知らなかったお玉は
男に欺かれたことと「高利貸しのお妾さん」と近所の人に揶揄されることを口惜しく思い、着物の仕立で身を立てているお隣の女性に仕立を習い始める
そんな中
毎日無緑坂の家の前を散歩する医科大学生、岡田と目が合うようになり…
と物語は進みます


⚠️以下ネタバレ⚠️

ある日、お玉の飼っている鳥を襲おうといている蛇を、通りかかった岡田が始末してくれます
また話したい一心で傘を貸し
傘を返しに来た岡田に慌てふためいてお化粧をしだすお玉の可愛らしいこと 笑

そんな岡田への気持ちが募っていく冬の或る日、お玉は今日こそ岡田に話しかけようと決心しますが、高利貸しの男にその心と行動がバレてしまいます
そして男から岡田がヨーロッパへ留学する事を教えられるんです

そして、男は
「ヨーロッパ、ヨーロッパ、ヨーロッパへ
飛び立って行ってしまうんだよ、学生も、みんな…
可哀想なやつだよ、お前は
どこへも行けやしないんだ」
とお玉に言います

切ないやら悔しいやら…
そもそも年老いた父のために、と好きでもない男に囲われる暮らしを甘んじて受け入れている…いずれ婚姻できるならまだしも妾の上に世間からは疎まれている「高利貸し」の男…
お玉の心情が画面いっぱいに表現されていました

しかし、この男も作中で
「学生時代は『こづかい』と呼ばれ、使いパシリをしながら小銭を貯め、それを貸すようになり、かね、カネ、金の人生
好きでもない女と結婚して、いつの間にかこの状態で…俺は初めて好きになった女とこうして居れる、お玉と居るときだけが本当の俺だ」と告白してます

また、岡田が友人に言われる言葉に
「僕らは明治という時代の制約を受けているんだ」
というのもあります

台詞以外にも
この時代の生きにくさ、切なさ、各人の苦しみなどが見事に表現されています

ラストシーン
飛び立ち、次の土地へと渡っていく雁を見上げるお玉の姿に胸を打たれる作品でした

名作です
観れて良かったです

教えてくださってありがとうございました!
◎赤門前のシャイロック 渡り鳥になれない籠の鳥

1954年 大映東京 モノクロ 104分 スタンダード
*僅かにホワイトノイズあるも画質は良好

大傑作、凄まじいほど密度が濃い作品だ。

帝大出の「僕」(宇野重吉)が一人称で一学年下の医科学生だった友人岡田(芥川比呂志)のエピソードを語る形式の森鴎外の原作を、無縁坂の妾宅で通りがかる岡田に想いを寄せるお玉(高峰秀子)中心の視点に書き改めた上、原作にない結末を加えた脚本(成沢昌茂)が素晴らしい。
ある意味、鴎外の原作以上に優れているかも知れない。

【以下ネタバレ注意⚠️】






*1 文学ブログ
森鴎外『 雁』の登場人物、あらすじ、感想
bungakublog.com/moriougai-gan-top

*2 青空文庫 森鴎外 雁
www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/45224_19919.html

いくら中編だからと言って、登場人物もそこそこ少なくない原作をさらに膨らませた脚本をどう104分に納めているか、ほとんどマジックのようだが、スタンダードの狭い画面を縦2段ないしは手前・中・奥の3段といったように複数に分割して、別の人物ないし群像を同時に動かすような演出がズッと続くのである。

典型的なのが、冒頭、お玉に妻子持ちの高利貸し末造(東野英治郎)を妻と死別した呉服屋だと偽って妾になる話を持ちかける、末造に借金のある女おさん(飯田蝶子)の顔を、俯き加減のお玉の上に載せるようにして、二人の表情を同時に観せる演出だ。
計算高く品性の低さを隠せずにしゃべり続けるおさんと、一度男に騙されて離縁した傷を負いながらウブな女心も保って感情を表さないお玉との対照がひと目でわかるショットだ。

「女は一度傷ものになるとヒビの入った茶碗と同じで元には戻れないからねぇ」
と、平気で物凄い人を見下した偏見を語るおさんのしゃべりを、お玉が何も応えずジッと聴いているのが早くも同情を呼ぶ。

おまけに、この話を奥で飴売りの父親善吉(田中栄三)も聴いていて、おさんが帰ったあと「ヒビの入った茶碗かぁ」と、お玉に語るでもなく一人ゴチるのだから、一つのショットが二重どころか三重になっていたとも言えるのだ。

さだまさしの歌で、ある世代には印象付けられている、不忍池から湯島、東大キャンパスの南あたりに抜ける無縁坂の未舗装でかなり荒れた坂道を、スタジオに組んだというセットの作り込み(美術監督は伊藤熹朔)も凄まじい。

團伊玖磨の音楽は、ほとんど途切れることなく流されるが、当時のハリウッド映画でもそんな感じだったような気がするし、逆にまた浄瑠璃や長唄の音楽を伴奏とする歌舞伎や新派劇からの伝統を踏まえているのかも知れない。

終盤、音楽がいったん途切れたところで、法華太鼓のリズミカルな音が代わるのも効果的だった。

末造の嫉妬深い妻お常(浦辺粂子)のダラシない乱れた髪や、お玉の存在に気がついたときのヒステリーぶりやストーカーまがいの行為は、ほとんどホラーテイストでインパクトがある。
そんなお常が寝床で半乳をモロ出ししているのを末造が直してやるショットまであって、浦辺粂子も大奮闘だ。

原作の「僕」こと文科の学生木村の宇野重吉も良いが、「所詮彼女と僕らは住む世界が違うんだ」と差別を正当化しているのは、原作というか、鴎外その人の無慈悲にして無理解な思想を代弁しているのだろう。

本作で強調されているのは、高利貸しへの差別、そして「妾」という存在への差別である。

帝大の小使として人生を始めた末造は、「小使」という下に見られる立場から、貯めた小銭を資金に金貸しとなるが、裏で人は「高利貸し」を憎み蔑む。
だから頼みの「金」の力で、お玉を囲い者にして、自分だけの別天地を手にした(つもりだった)。

最初の結婚に敗れたお玉は、自分はもう傷物だから仕方がないと妥協して、「やがては正妻に迎えられるから」と騙されて末造の妾となったが、知らぬ間に「高利貸しの妾」という二重に差別を受ける存在となっていた。

隣家の縫い物師匠お貞(三宅邦子)に裁縫を習うことで何とか妾宅を抜け出して自分の翼で羽ばたいていこうとするが、父親はすっかり末造にあてがわれた賄い付きの生活に充足して娘の犠牲を良しとしていたことに驚かされる。

憧れの対象となった岡田への想いをよすがにしようと果敢な行動に出るが、岡田は遠く想いも届かないドイツに旅立って行った。

お玉の岡田への想いを知りながら、それがハナから届き得ない「無縁」であったことを残酷に告げる末造のセリフが、それまでと違ってやや文語的、書き言葉的なのは気になったが、お玉を支配しようとする末造もまた「差別を受けて来た」存在であることを述懐することに本作の「構造」を観せる意図があったのだろう。

はじめは感情を押し殺していたお玉が、末造の正体を知り、岡田と心を通わせるようになってからの高峰秀子の「開眼」した演技が素晴らしい。

いくらシャイロック末造が蛇のように睨んだとしても、一度、自由な空の存在に目覚めた鳥=お玉は決して、末造の意のままでは収まらないに違いない。
‥‥そう思わせられた高峰秀子の名演ではあった。

《参考》
*3 雁(1953)
1953年9月15日公開、104分、文芸
moviewalker.jp/mv23628/

*4 大衆文化評論家 指田文夫公式サイト | 「さすらい日乗」
『雁』について 続き 2004/11/4
sasurai.biz/00016.html

*5 普通人の映画体験―虚心な出会い
映画『雁』 January 23, 2020
ameblo.jp/selfmade2015/entry-12576512471.html

*6 【古典邦画】「雁」
TOMOKI 2024年3月7日 11:31
note.com/tomoki1014s/n/n0e79539dfdc2

*7 HUREC AFTERHOURS 人事コンサルタントの読書・映画備忘録
【2964】 ○ 豊田 四郎 (原作:森 鷗外) 「雁」 (1953/09 大映) ★★★☆
http://hurec.bz/book-movie/archives/2020/12/2964_195309.html

*8 東京紅団 森鴎外の足跡を歩く
●森鴎外の「雁」歩く -1-
初版2010年11月27日 <V01L02> 暫定版
www.tokyo-kurenaidan.com/ougai-gan1.htm
●森鴎外の「雁」歩く -2-
初版2010年12月4日 <V01L01> 暫定版
www.tokyo-kurenaidan.com/ougai-gan2.htm
●森鴎外の「雁」歩く -3-
初版2010年12月11日 <V01L01> 暫定版
www.tokyo-kurenaidan.com/ougai-gan3.htm

*9 RESEARCHERS COLUMN
赤門の隣に
松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)
www.intermediatheque.jp/en/rescolumn/view/year/2020/id/RC0130

《上映館公式ページ》
京都文化博物館
生誕100年 高峰秀子 銀幕に生きる
2024.10.8(火) 〜 11.8(金)
会場: 3階 フィルムシアター
www.bunpaku.or.jp/exhi_film_post/20241008-1108/
デコちゃんも素晴らしいが、同時に浦辺粂子も素晴らしい。白粉塗るためはだける胸元VS寝崩れて露わになる古女房の乳首。同じ傘クルクル真上からのカメラ、夜の霧、雨の夜、飯田蝶子の出入りする路地に坂道、三浦光雄撮影素晴らしー。学生の小遣いで成り上がった東野英治郎は今や学生相手の高利貸し。人の手に渡り続ける反物と本と金。籠の中の鳥はデコ、蛇は腐りきった社会、飛び立つ雁は前途ある比呂志こと洋行する学生さん。一生手にすることのできない幸福。豊四で成澤で大映。魚屋の女将さんは町田博子。

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