1966年製作の映画)

製作国:

上映時間:87分

3.6

「雁」に投稿された感想・評価

2013年1月30日(水)、池袋・新文芸坐で鑑賞。 
本編上映前に、若尾文子特集のため『婚期』などの予告篇をスクリーン上映という嬉しいおまけつき。もちろん「大映ニュース」である。 

さて、物語は『まだ東京の空にも雁が飛んでいる頃の物語』と言って始まる。 

貧しい家であるため、そして妻のいる男と肉体関係を持ってしまって「壊れたからだ」となったため、強欲な高利貸し(小沢栄太郎)の妾となったお玉(若尾文子)。 
囲ってもらっている家の近所の人たちからは「高利貸しの妾」と陰口を言われ、蔑まれる。お玉自身も「浜町の呉服屋の妾」のつもりでいたところ、違ったことからショックを受ける場面があるが、どうも冒頭のあたりの語り口があまり上手くないので、「呉服屋の妾なら良くて、高利貸しの妾は良くない」というのがよく分からない。退屈な序盤である。 

若尾文子が傘をさして歩いているシーンを真上から撮った場面があるが、なかなか良いショットである。「男はつらいよ 寅次郎相合傘」の真上からの傘シーンを思い出した。 

お玉の住まいの鳥かごに蛇が来て、それを退治した学生・岡田(山本学)のことが好きになるお玉。その退治直後に、突然雨が降ってきて、お玉が走って岡田に傘を貸す。このあたり、若尾文子が雨の中を傘さして走る場面で、人力車や昔の街並みが良い美術の仕事。

その後、高利貸しの猜疑心と闘いながら、お玉の学生への恋愛感情の葛藤、そして結局、ヨーロッパ(ドイツ)に行ってしまう岡田とは一緒になれない薄幸の美人として存在感のある若尾文子の演技は、終盤良かった。 

学生を見送る若尾文子が、月光を浴びて立っている場面、そして空を雁の群れが飛ぶ場面、更に、夜道を帰る若尾文子の後姿の影が美しい。 

「明治という時代を生きた女性の魅力を出したい」と言った若尾文子の魅力的場面が多々ある作品であった。 
しかし、物語進行(特に前半部分)が若干難あった気がしたが、中盤以降は面白かった。
青二歳

青二歳の感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作森鴎外。DVD化されたので10数年ぶりに再見。かなり忘れていたがえらい弱い若尾文子は記憶の通り。弱すぎてむず痒い。しかし忘れるには惜しい妾を抱える小沢栄太郎の見事ないやらしさと、その妻山岡久乃のヒス芸、父役の伊井友三郎の頼りなくも善良な父親が素晴らしかった。
女中の姿美智子の愛らしさ、藤原礼子のやっかみ、水戸光子のわけ知り顔。さらに魚屋の婆さん村田芙美子といい、妾の話をまとめる口入れ屋の婆さん武智豊子といい、おばあちゃん達も好演!
「脇見」とは何事だ貴様と思いつつ、お馴染みのおっさん学生には60年代らしさを感じてホノボノ。昔の学生は20代半ば〜後半が多かったからいいんだけどね。
当時のかき氷屋を再現したカットがあるが、カンナのようなもので氷を削っていた。手が冷たくて大変だと思うが、後にあのかき氷器を発明した人は偉大だ。
そして本当に昔は茶殻を畳にまいて箒かけするのね。若尾文子の姉さん被り可愛い。

初めて観たのは男女の抒情も分からないガキンチョの頃でしたし、後味がえらい悪い印象だけで、弱すぎる若尾文子はなぁと思っていたけど、大人になって観るともう助演が素晴らしくて結局若尾文子映画祭でも見てしまった。スターを揃える訳にはいかない大映末期とはいえ、それが却って無駄がないキャストになっていてとても良い。