ウディ・アレンの
初期作には、
ベルイマンの影響を
色濃く受ける作品がある。

昔々、そんな話を聞いた様な。

「私の中のもうひとりの私」

インテリアあたりはそうでしたね。こちらも見るとなるほどと…。

イングマール・ベルイマンの撮影監督のミカエル・ニクヴェストを招いて作られた作品だそうで…確かにそんな感じが。ベルイマンを数本しか見ていない私でも野いちごは見てますので…ストーリーもそんな感じが。ただ…壮年の女性を主人公に持ってくるのがウディ・アレンらしさかもしれません。

哲学者として成功を収め、医者であるケンと再婚し、一見幸せに見えるマリオンは50歳になったある日、偶然隣室の心理カウンセラーでの女性患者の会話を聞いてしまった事から、自分の人生を振り返り始める…。

回想や夢、そして現実を交差させながら、丁寧にマリオンの思索、心模様を描き出してくるのは、ウディ・アレンらしさ。勿論、その中に彼らしい人生の苦味がまぶされています。

他者が思っていた自分と
自分が思っていた自分は違う。
その逆も然り。

当然ながら、人の記憶は時として全く違うものに…。友であれ、家族であれ、見方が違えば、そうだろう。

それは悪意がなくとも、人に悲しみを与えていた事でもあり、その事実をダイレクトに聞いてしまえば…、しかも信じていた人から聞けば…その苦さ、辛さは尚であろう…。実社会で人と繫がっている、関係している人、全てに当てはまる様なストーリーであり、営業をやっている自分には…刺さりますね、痛いほど(T_T)

ネガティブなストーリーであるものの、この時期のウディ・アレンはまだ救いを与えているが、人はそう言うモノだと言う乾いた目線も感じなくはない。ベルイマンに傾倒しているアレン作品はイマイチと言う論評を見るが、これはこれで刺さるものがあって、良かったかなと。

かなり地味目ですが、主演はグロリアのジーナ・ローランズで強さと悲しみの両方を演じられる方ですし、時間は短いですが、かなり良い役で名優ジーン・パックマンが出てますからね。注目して欲しい作品です。

• #80s傑作選
• #女性への畏怖と尊敬

空気孔

失われたもうひとつの自己を求め、苦悩し彷徨するひとりの女性の姿を描く

心理モノ

男と女
関係性って難しいです

監督らしい会話劇
でも、そこまでクセは強くないかな

哲学界で輝かしい実績を残した50歳の大学教授マリオンは、再婚した夫ケンと義理の娘とも幸せに暮らし、まさに順風満帆な人生を送っていた。ある日、アパートの隣室から精神医とその患者ホープのやり取りが聴こえてきた。ホープの相談がかつて自分が抱えていた苦悩と重なったことから、いつしかマリオンは”自分のもう一つの自己”を見つめ直すようになる…。

未見の作品が減ってきて、ウディ・アレン作品コンプが見えてきましたが、今のところ『アリス』『カイロの紫のバラ』そして本作が個人的ベスト3。一般的にはあまり知名度の高い作品ではないようですが、それくらい本作は素晴らしい作品でした。
ジーナ・ローランズ扮する、自信を持って人生を切り拓いてきた素敵な女性マリオン。誰もが彼女の成功を羨み教え子や友人からも一目を置かれる存在ながら、実は人には言えない多くの苦労を重ねてここまでやってきました。思いがけず耳にした若い女性の相談を契機に、50年の中で経験した苦い思い出を回顧し、さらには自分の”欠点”も痛感させられることになります。
ウディ・アレン作品って、いつもぶっ飛んだ人が出てくるので共感はできないことが多いのですが、本作のマリオンに対してはこれまで努力してきたところや自分の過去の汚点にもしっかり目を向けようとするところにすごく好感が持てました。
誰もが”よそ行きの自分”と”本当の自分”を抱えていて、時に前者に集中して後者と向き合うことをやめてしまう瞬間がありますよね。私自身この２つの自分をかなり分けている自覚があるので、余計にこのテーマに共感できたし、マリオンが劇中で耳の痛いことを他の人に言われるたびに一緒にグサリ（笑）。でも、いくつになっても自分の人生に満足してはいけないし、何度でもやり直せるという希望も見いだせるストーリーにすごく奮い立たされました。
コロナ禍の今だからこそ、ちょっと自分探しをしている人にオススメ。

主演のジーナ・ローランズも素晴らしかったけれど、本作の個人的MVPはジーン・ハックマン。かつてマリオンに想いを寄せていたラリー役をいつものハードボイルドなイメージとは一変した抑えた演技で好演。出番自体は少なめではあるのですが、本作におけるキーパーソンでもあるのですごく印象に残りました。特にあのラストシーン、セリフはないのに表情ひとつでラリーの感情を体現してしまうところ、俳優さんって素晴らしいなと改めて痛感したのでした…！