ゲイリー・オールドマンの初監督作。

ゲイリーの父親はアルコール依存症で、ゲイリーが７歳の時に家族を捨ててしまう。
そんな彼の自伝的な映画。
タイトルも恐ろしや。


暗い奈落に落ちていくような気持ちになって
二度と観たくないと思った記憶あり。

これ観てからレイ・ウィンストンはどんな役を演じてても恐ろしいよ。

• #tulpen+1999

ゲイリー・オールドマンの唯一の監督作。自身の生育環境を描いた自伝的作品と言われている。今まで観た映画のどれよりもPTSDになりそうな重さと荒んだ環境だった。トラウマ級の暴力にもかかわらず細やかな表現で文学的に感じた。

アルコール依存症で家族を捨てた父親に捧げられている。

主人公ビルの姉のDV夫レイが父親の面影なのか、レイの亡父なのか、ビルそのものか、ビルの前科ある行方不明の父親なのか、さまざまな形で、人でなしの男が登場する。

ビルも義兄レイも、レイの悪友も、ヤク中でもあり、それをビルの姉も母も致し方なく黙認している。というのは彼らは売人でもあるから、ちょっとした贅沢ができる。DV夫に殺されかかっても、ビルの姉は夫、母、祖母、友人夫婦たちとパブで一時を楽しむ。夫は幼い娘の横で、煙草を吸い、薬を吸い、猥談を妻の祖母にもする。

ゲイリー・オールドマンは主人公のビルのようにも見えるが、ビルの姉の娘ミッシェルかもしれない。レイが捨ててきた会わせてもらえない先妻の息子かもしれない。荒んだ環境の子どもたちばかりだ。

言葉が汚く、f＊＊＊を口にした数が映画史上最高記録らしい。

アメリカだったら、怒りを他者に向け、あっという間に銃で誰かが撃たれていそうだが、階層社会のイギリスでは、物言えぬまま、笑いながら自身を傷つけていく。

タイトルの「ニル・バイ・マウス」とは医学用語で、「口から食べたり話したりできない」という意味。生きる喜びを知らず、苦しみを語ることもできない、という意味だろうか。

劇伴が抜群によくて、クラプトンだった。

オールドマンの実姉がビルの母役で登場している。

あまりの暴力にうんざりしたのに、文学的に感じたのはなぜだろう。

＊スコアは後でつけるかもしれませんが、2023.6.2時点ではスコア無しで。重くてわからなくなってしまいました。映画というより、オールドマンの人生にスコアつけるみたいな気がしてしまい、躊躇しています。

好意的に言えばカサヴェテスとケン・ローチの中間の様な作風、だからこそそこまで悪くないとも言えるし没個性とも言えてしまうが、なんせ作品の主な成分が有害な男性性過ぎて本当に嫌な気分になる…。とは言え女も女で本当何考えてんのよ…が多く、母親はヤク中の息子を溺愛してんのかなんなのかわざわざ売人のところまで送り届けたりするし、その娘も凄惨なDVにあって流産までしてるのに最後しれっと元鞘に収まっていて超怖い。ただその負の連鎖性こそがこの作品の主題だろうし、自身もその谷底に落っこちそうになりながらギリギリのところで踏ん張れたゲイリー・オールドマンにとっては、妥協無く醜態を晒し続ける事こそが重要だったのかもしれない。願わくばあの幼子だけは健全に育って欲しいと思うが…あの父親への懐き方は結構危うい。DVシーンとその後のフルボッコフェイスがかなりリアルなのでちょっと気をつけた方がいいかも。