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春の戯れ
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『春の戯れ』に投稿された感想・評価

4.1
戯曲『マリウス』が原作とはいえ、邦画にこんな秀作があったなんて~!

脚本の山本嘉次郎監督によれば、金持ちの呉服問屋 越後屋や主人公 お花( 高峰秀子)の恋の相手 正吉(宇野重吉)の頑固親父も、ありがちな人間設定と違った人物像。
兎に角、苦渋をなめた大人の思考。

恋愛と愛情が別次元のモノだと感じる、ドキドキの事件性な展開。
男性の思考と女性の思考の違いや幸せの定義も重要なテーマで。

男の道、女の道、人の道を 考えさせられる作品でした。

それにしても、女優業が嫌でしょうがなかった高峰秀子は、本当に上手で~感動。

女子高や女子大で観せて、結婚観について 討論会するのいいかも。

上映後の、
斉藤明美『高峰秀子を観て語る女の生き方講座』中井美穂 トークショー 

2024/5/27 女だらけの夜 渋谷ユーロ ライブ
結婚について考えさせられるなぁ…

『馬』併映。
ストーリー
船乗りになって西洋に行きたい正吉、そろそろ嫁入りの年になるお花。幼なじみで仲もよくこのまま夫婦になってもいいと考えているうちお花に越後屋の旦那の後添いになる縁談が…


宇野重吉がめちゃくちゃ若い。夢を追いかける青年(プラス外洋乗りだから何年も帰宅しない)か、オジサンだけど全てを受け入れて不自由なく生活させてくれる人か、やっぱり恋愛と結婚は全然別物だなあと痛感。

舞台は明治の品川。八ッ山橋とのりで気が付きました。

高峰秀子が清純ぽそうで1番肝が据わっていたというか、母は強しというのか。生みの父(DNA上の父)と育ての父は、育ての父のほうがよっぽど父親らしいと凄むシーンは今の時代も考えてしまうな…

越後屋さんがただのエロじいやではなく、すごくいい人なのがこの作品を細やかにしているのでしょう。

オマケ
女性がバナナと戯れているシーンはなんとなくエロチック。
✔️『春の戯れ』(4.4p) 及び『続 向こう三軒両隣 第三部 どんぐり歌合戦』(3.1p)『花と波濤』(3.4p)▶️▶️

戦後の10年間くらいの、人間くささが嫌味なく拡がる、3人の名匠·巨匠の、戦後の不安定で覚束なくも、新価値観を、旧来の呼吸の中で掴み始め、健全さが客観性増して感じさせる3本。
『春の~』。記憶も怪しい昔に観たかも知れないが、三年前のこの作家の特集でも取り分け、意識的に観たかった作品。しかし、スケジュールが未定な2ヶ月前では、休暇届けで押さえられなかった作。そんな映画やはり数十本はあり、あらゆる著名作は10数年前に観きったという、年下もプロの評論家はやはり羨ましい。
さて、本作は事前情報は取って無かったが、見始めて直ぐ(でもないか)、パニョルの翻案と分かり、地方色と庶民のやり取りに惹き込まれる。只、舞台掛け合いの平面性·即場性と、セット·バック特撮系含めた立体的映画マジックや名刀のキレ、その溶け合いは、山本嘉ならではの飛躍·密度。日本·品川も南仏よりは近しく、距離も取りやすい。パニョルも巨匠中の巨匠だが、凸凹はあっても、映画才気が時折鮮やかに吹きあがる、歓びはより本物。山本嘉自身にとっても、開放的な戦前の『馬』と対蹠的ながら、多彩な作家歴中の二大傑作と呼びたい。平面的芸見せを映画活力·清風に昇華したもう一つの作風。が、内実の庶民的人間性は同じ。傑作『風の子』に次いで、独立プロでの気概と清々しさが見事、かつ慎ましく結実している。
憎まれ口を叩き合うご近所さん·恋人同士。セット内やロケの横移動に時折縦めが入る、寄りとその対応も、割りとスッキリめ、軽演劇風の前半の、底で通じ合った粋のいい庶民劇のキレいい展開。そのスッキリ感は、主人公2人の最後の逢瀬のシーンで移動もパンも角度変もジクジクしてきて、割り切れない煮詰まり方をし、翌朝の日常に戻っての、噴き出さんとするものの予兆が、立体的な格子や戸を突き抜けんとする(突き出る)アングルの複数出で垣間見えてくる。そして選択やトリックの起点に来ると「(私の他の男への傾きとも、)いいように取って。貴方を苦しめるより、(夢の実現の)幸せを遠くから祈っていたい」の送り出しへ。それから3ヶ月後、待ってる側の品川でヒロインの妊娠発覚時か、走り出すその母の·気の狂った踊るその妹(ヒロインの叔母)との衝突する、ズーム·顔面超CU·ワイプのキレから、全てを納得の帰国の恋人の正面顔捉えから俯瞰頭部へ上がってゆくカメラの間に、煮詰めに煮詰めた人情·愛情な機微·価値が問われてゆく。ヒロインの妊娠を隠した母の申込みに事情察し結婚を受ける老呉服屋、ヒロイン本人が断りに来て全てを打ち明けると感心し退いて男帰還迄の後ろ楯を約す。「本当の愛情を知った」と婚儀を受け直すヒロイン。2年後の男が帰還し、妻子を返す要求にも、ヒロインの方が、難産を手を握り支えた時から·この子の父と私の夫はこの人と言い切る、といった濃い芝居が、あくまで日本的な抑えた相手重視の控えめな味わいで詰まる。
新旧価値観混在の品川、蒸気に押され下火の渡し船屋らの流れを感じつつも、飯屋父子と物売り母娘の隣同士、子らの幼馴染みで互いしかない仲が進めないは、男の西洋見聞水夫の夢。それでなくても、辿々しく覚束ない2人のいじらしさ。それでも、裕福呉服屋が30以上下のヒロインに、後添いを切り出したのを、2人しておずおずと断る。しかし、その含みを敢えて持たせて、男の為に夢に送り出す娘。そして、男の帰還の遅れ、最後の夜での妊娠分かった後、老呉服屋の、気の回しや、自分は泥を被っても若い2人への最良思案らを、受け、思わず本当の愛情というものを知るヒロイン。好きあってる気持ちに変わりのない2人の再会と、男の引き渡し依頼にも、その気持ちは翻らず、強く続く。
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次の巨匠、寅次郎の『~歌合戦』。戦前の才気煥発大傑作らより、この期の戦後の、心の安らぐ、新旧価値観の残し·融合の試み期の悪のり手前で抑えた1篇。前編を観て、後編に向かう前日·緊急出勤となり、観たのは半分だけ。昔気質の、自分を曲げない喧嘩っ早い車引きは、浮浪児を妙に心通じ、養子手続きを進める。戦前高級官吏から職なしの戦後、高慢な妻が再就職を否定の中、小学生の娘の隠れた·美声売り物の早朝納豆売りに倣い決意し、サンドイッチマンこっそりやってく男。傲慢·豪奢婦人や、何でも診る医師らも並行し、善良浮浪児の、学級費集金着服疑い·別れた兄の復員兵として戻ったらしいのへの捜しで、失踪で、後半へ。
少女ひばりの歌唱力、金語楼の顔芸ら散りばめ、戦後の暴力性否定民主主義導入、貧富差や偏見への憤り、恥じる事や嘘の空威張りの苦痛、それでも変わらぬあらゆる皆に続いてく人情の瞬間らを描き、爽やか正直通せる作だが、描写はまだ馴染まぬ戦後民主主義に怖じけ気味でもある。
タッチも、寄り·(横へ)ズレ·少確度変·切返しと全図、ら平明もどこか及び腰。
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『花と波濤』は、やはり戦後の自立する若い女性の選択を描いた作で、社長シリーズや戦争ものばかりではない、この作家の誠実で、自己の根を失わない確かさを感じる。ショットは詰まり叩き込まれる忙しない今風とは無縁で、適度のすき間を持ちつつ安定し自己を見失わない、バランスとポイント押さえがある。人の動きの絡みと空間性·リアクションの寄りの微妙入れと何げのトゥショットの確かさらが見事だ。
岡山から京都の伯母の家に出て、勤めを始めた若い女性の、勤め紹介の積極的過ぎる若き考古学者、田舎の幼馴染みの·作家を目指してる·こっちは性格的に弱すぎる教師、の2人のプロポーズに帯と襷と迷う。男女関係は思う以上に複雑、やはり最初の異性が重要、と話してくれた、別れた妻と·パトロンの長い付き合いの実業家夫人、の 間で揺れる、年長の美術家の存在も入りくる。枯れの方は2人を失い·また2人の為にこの地を離れる。その(元)妻は、ヒロインとの事を書いた自作小説の否定的顛末に自殺未遂に至った、作家志望とくっつく。のこる考古学者は、ヒロインの獲得に勝ったつもりも、その自己本位過ぎるを指摘され断られ、同時期自信を強めてもいたたいそうな受賞を断る姿勢の改めを起こし、それは仕事を止め帰郷のヒロインへのどこか通底、微かも明るい再燃の可能性にも繋がってく。
おそらく読んでないが、映画の原作小説の高レベルへの大衆化·通俗引き下げはあるのだろうが、当時の新人女優ヒロインの、畏れを知らない·手垢にまみれてない未洗練の原石的魅力もあり、低俗は指摘されても·屈しない力は秘め·確かさは持ち得てる良品。

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配給:

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