『邦画史上初の女優のフルヌードシーンあり(後ろ姿)』というウィキペディアの説明が何となく笑いのツボに刺さり、もう借りるしかないよなって思いました。そして借りて観たわけです。

テンポがいいので最後まで退屈しないで観れました。無駄な説明がないっていうのはすばらしいですね。その分、想像力を働かせて登場人物の気持ちを忖度(笑)しないとなりませんが。

女真珠王の復讐そのものよりも南海の孤島での出来事のほうがおもしろかったです。
南海の無人島に流れ着いたヒロインを、先に漂着していた5人の男が奪い合い殺し合うのです。ヒロインはその殺し合いで生き残った男達を引き連れ、その島で採れた真珠によって莫大なお金を得て、復讐のために(そして無実の罪を着せられて死刑になりそうな恋人を救うために)帰ってくるのです！

フルヌードについては想像通りでした。
めっちゃ遠景でなんとなく『ああ、すっぽんぽんなんだな』と分かるレベルの後ろ姿。それよりも頻繁にあらわになるヒロインの太もものむちむち感がよかったです。

他の方も書いておられますが、戦後11年目の東京の夜はホントに真っ暗なんだなと思いました。舗装してない道とかもあるみたいだし。
ひょっとしてバブルの頃の映画を観ると東京の夜は人が多かったんだなって思うのかな。

• #邦画(せびたん)
• #エロ目当て！

◎実話の方が面白怖い 子ども騙しお色気mystery

1956年 新東宝 モノクロ 89分 スタンダード
＊フィルム鮮明で状態良好

ずいぶん無茶苦茶な会社乗っ取り殺人事件がメインストーリーかと思いきや、巻き添え食わされた部下の恋人が南の島に漂流して「女真珠王」（何で「真珠女王」ぢゃないねん？）となって、恋人と見事復讐を遂げる、というタイトル自体がそもそもネタバレになってまっせの大蔵・新東宝お色気映画。

まぁ言われてみれば、確かに、香川夏岐役の前田通子さんのヒップ、見えてましたなぁ、ぐらいで、史上初の全裸披露とか大騒ぎするほどのもんぢゃあ、ありません。

大体浅村だか浅沼だか知りませんが、専務が陸軍特務機関出身とか（だから藤田進なのか！）で当事の部下でギャングの野口吾郎（丹波哲郎）に社長水野松左衛門（平寛）を銃殺させて、自分は社長、丹波を専務にするって、どこの国のお話ですかい、な荒唐無稽。

今さら客船から落ちた前田通子嬢が女に飢えた漂流漁民しかいない無人島で「女真珠王」になったって、誰も驚きやしませんな。

それより驚くのが、本作が映画としてヒットしたこと。

もっと驚くのが、本作ヒットで新東宝の功労者となったはずの前田通子が、本作公開の1957年に時代劇映画撮影の現場で加戸野五郎監督に口ごたえしたところ、大蔵社長にクビにされた上に「五社協定」を盾に映画界から完全に干されたという「前田通子裾まくり事件」の実話の方が、よっぽど怖いし、興味深い。

＊1 「前田通子」で検索
ja.m.wikipedia.org/wiki/

＊2 城島明彦（作家）の『ちょっとあぶない雑記帳』 「メビウスの迷宮」へようこそ
本当にあった怖い話――〝日本初の全裸女優〟前田通子の手記『女優稼業の裏通り』
2010/06/07 13:24:24
ohkowa-omosiro.cocolog-nifty.com/kotyabannba/2010/06/post-2995.html

＊3 お宝映画・番組私的見聞録
前田通子インタビューその１
2015-07-23 00:51:21
ameblo.jp/tetsu8/entry-12053508926.html
前田通子インタビューその２
2015-07-26 00:31:53
ameblo.jp/tetsu8/entry-12054599196.html
前田通子インタビューその３
2015-07-30 01:30:25
ameblo.jp/tetsu8/entry-12056060488.html
前田通子インタビューその４
2015-08-02 01:13:45
ameblo.jp/tetsu8/entry-12057163823.html

苛烈な東宝争議を経たあとでも、映画会社や製作者が、芸能界で働く人びとを「言えば何でも言うことを聞く」「聞かねば徹底的に干し上げる」と事実上「奴隷」扱いしていた実例として、昨今の芸能界の話題と直接につながる話だ。

《その他の参考》
＊4 「女真珠王の復讐」で検索
ja.m.wikipedia.org/wiki/

＊5 女真珠王の復讐
1956年7月5日公開、89分、アクション
moviewalker.jp/mv24727/

＊6 日のあたらない邦画劇場
女真珠王の復讐　1997年05月28日
home.f05.itscom.net/kota2/jmov/1997_02/970219.html

＊7 こんなんみっけ
日本初の○○○映画「女真珠王の復讐」
2010/01/2116:13
shira713.blog.fc2.com/blog-entry-469.html

＊8 瀧野川日録　「女真珠王の復讐」をみる。
2014-10-23 11:39:19
ameblo.jp/trickster0221/entry-12498375507.html

＊9 永遠のセルマ改め　2021年1月30日
女真珠王の復讐 1956 新東宝製作・配給 前田通子主演映画
cinekobe.com/女真珠王の復讐-1956-新東宝製作・配給-前田通子主演/

＊10 HUREC AFTERHOURS 人事コンサルタントの読書・映画備忘録
【2381】 △ 志村 敏夫 （原作：青木義久） 「女真珠王の復讐」　（1956/07 新東宝） ★★★ （× 志村 敏夫 「海女の戦慄」　（1957/07 新東宝） ★★
http://hurec.bz/book-movie/archives/2016/03/2381_195607_195707.html

＊11 青春会見録　2010.8.15
第３録　麗しの前田通子
super-guts.m78.com/uruwasinomaedamitiko.htm

《上映館公式ページ》
シネヌーヴォ日本映画大回顧展
新東宝 映画まつり
　Preseted by 新東宝キネマノスタルジア
2024.7.6〜9.6 シネ・ヌーヴォ
www.cinenouveau.com/sakuhin/shintoho2024/shintoho2024sakuhin4.html

「日本初のヌード映画」という煽り文句に期待して鑑賞すると肝心のその場面はロングで、しかも重要な場所は映らないように誤魔化しているので損した気分になるので注意。ただ主役をはる前田通子の豊かなバストは現在でも男性の目を引くほど魅力的で当時の観客同様そこを嗜むだけでもそれなりに楽しい、1950年代でここまで扇情的なシーンを撮ることが出来たのはやはり担当した志村敏夫監督と主演女優が当時付き合っていたからだろうなと邪推する(ちなみに当時新東宝のスター女優だった前田はその直後他の監督の作品で肌をさらすことを拒否して会社の怒りを買い、志村監督とともに新東宝を追い出されることになる。そして同じくグラマラスな容姿を持っていた三原葉子がその後釜を継ぐことに)。

序盤婚約者もいる幸せな生活を送っていた女性がある人物の罠により転落の人生を過ごす羽目になり、やがてある事故から海へ流されて漂着した島でアナタハン島事件みたいなことをしているうちに島の周りにある大量の真珠を回収して財産をなして自分を追い詰めた人間たちへの復讐を開始するという「岩窟王」みたいな展開へとバタバタと変化する濃すぎる内容を一時間半でテンポよくさばく演出も見事で、当時売れっ子監督だったという志村氏の手腕が確認できる。ただ特に工夫のある演出もせずオーソドックスに娯楽作品を撮っているだけなので見終わったあとは何も残らない。

まだブレイク前の悪人丹波哲郎や、女性を襲う藤田進など豪華なキャスティングの意外な役どころも面白く、なかでも主人公が漂流した島ですでに暮らしていた良識ある青年で復讐鬼前田をサポートする天知茂のイイ人演技が見所。朴訥で純情そうな振る舞いをする好青年ぶりはとても数年後に色悪でブレイクする人間とは思えず、役者ってこれほど変化できるのかと感嘆する(関係者いわく、イイ人演技のほうが地とのこと)。

ちなみに前田通子はその後映画での復帰がかなわず、テレビドラマの世界で細々と活動することになる。『仮面ライダーV3』でのゲスト出演もそうで、子供の頃はまったく印象に残らなかったが大人になりその事情を踏まえて見返すとその翳りのある風貌も相まって「苦労したんだな…」としみじみしてしまうはず。