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戒厳令の夜
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『戒厳令の夜』に投稿された感想・評価

2022/5/28DOMMUNE 崔洋一最後の闘争を見ていて佐藤慶の酒癖の悪さと山下耕作の酒癖対決がおかしい。「佐藤慶を簀巻きにしろ!」と言う若松孝二は、本映画より面白い。
2019/6/22予告編で樋口可南子のヌードシーンもあり是非観に行きたかったが機会を逸し2019年して初めて観ることに。海外ロケもあり鶴田浩二、伊藤雄之助、佐藤慶、長門勇も出てきて豪華俳優陣。長門勇にいたっては、女装で出てくる。話となると伊藤孝雄演じるルポライターがロペスなる南米画家の絵を博多で見てから、南米、フランスそしてナチス、戦後直前のドサクサそして現代へ。うーん壮大すぎてなんのことやら。伊藤孝雄は、「戦争と人間」で標耕平の兄役だった人で演技が変わらない人なんだな。ともかく観ながら誰にも感情移入できないのとこの画家凄いと言われるが、心に響かない。期待の濡れ場も浜村淳の裸体(バックショット)を観ないと観られないという厳しい試練が待っている。久しぶりに観るDS(どうかしてる)映画だった。
五木寛之の反体制的な伝奇小説『戒厳令の夜』(1975)の映画化。脚本:佐々木守。製作:若松孝二。監督:山下耕作。撮影:宮島義勇。絵画:竹中英太郎。樋口可南子のデビュー作。※クレジットには製作・脚本に竹中労が連名されているが若松孝二によると殆ど何もしていないとのこと。

1973年。ルポライターの江間隆之(伊藤孝雄)は博多のバーで、壁に掛かる「ジプシー少女の絵」に目を留める。それは、全作品が行方不明とされる“南米チリの天才画家パブロ・ロペス”の絵とそっくりだった。江間は大学時代の美術史の恩師・秋沢助教授(佐藤慶)を訪ねて報告するが「忘れたほうがいい」と追い返される。その夜、秋沢助教授は自殺を遂げる。友人から “戦時中にナチスがロペスの絵を略奪し財宝と共に筑豊の炭鉱に隠した”との情報を得た江間は、かつてヨーロッパへの美術探訪で同行した“九州の天皇”こと大物国士・鳴海望洋(鶴田浩二)に相談を持ち掛ける。秋沢助教授の娘・冴子(樋口可南子)も合流しロペスの絵の真相を追い始めた彼らは、やがて日本国家の暗部に巻き込まれていく。。。

ずっと観る機会を逸していた一本。良いタイミングで観ることが出来た。というのも先日観た佐々木守脚本テレビドラマ『三日月情話』(1976)※とテーマが通底していた。即ち佐々木守のライフワークである“反皇国史観”だ。奇しくも同テーマを扱った五木寛之の原作をブーストし、大作映画の土俵で反権力の物語を繰り広げていた。

鶴田浩二が演ずる鳴海老人の設定が面白い。古来から日本に先住しながらも大和朝廷に服従を強いられてきた海人族・山人族の末裔であり自らを“外道”と位置付ける。まつろわぬ民としてチリ(映画ではヌエバグラナダ)の被抑圧民と共鳴し、パブロ・ロペスの絵を故郷に届けるために私設部隊と共に玉砕を遂げる。内閣総理大臣を人質にして立てこもる鳴海と11人の隊員の姿は、明らかに三島由紀夫と盾の会へのオマージュ。三島が大ファンだった鶴田浩二が演じているのも一つの見所だろう。

その間、江間と冴子は“外道の民”の手引きで港に向かう。密航前夜、外道山人の長・鹿火隼人(浜村 純)が立ち会う中で行われる二人の契りの儀式。唐突に展開するアナクロな光景ではあるが、この通過儀礼によって二人が“外道の民”の一員に迎えられたことは伝わってくる。

ロペスの画と共に二人が到着したのは1973年9月11日のチリ=アメリカCIAの策謀による軍事クーデター勃発の日(史実)。街の至る所で市民が虐殺される中を「ジプシー少女の絵」を抱いて走る二人。世界中で行使されている国家権力による暴力。抵抗する民たちへの祈りを表現して映画は暗転する。

3年後、反天皇思想を扱った小説『パルチザン伝説』(1983)は右翼による脅迫事件を引き起こした。本作も共通したテーマを内包するが問題は起こらなかった。天皇という固有名詞を示さない反体制伝奇ロマンという点で、本作と大江健三郎『同時代ゲーム』(1979)は同種と言える。

完成度が高いとは言えないが、戦後81年目の8月の幕開けにふさわしい、気合の入った反権力映画だった。

※テレビドラマ「三日月情話」の詳細は、「男神」(2025)のレビューに記した

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