津川雅彦のコーラスグループ、伴淳三郎の長崎カステラ、月丘夢路の東京カステラ、佐野周二の材木屋、それに佐野周二の娘の倍賞千恵子。三つ四つの軸が同時進行で進み、終盤の長崎で一応の決着がつく。それぞれが各々の理由をつけて（かなり強引に）長崎に向かい、ラストはフェリーニとかウディ・アレン映画っぽく登場人物が一堂に会してなにかが起きるのかと期待したが、そんな流れでもなく、場面場面でドタバタさせてのハッピーエンドで終わってしまったのはちょっとガッカリした。伴淳三郎を御供する大泉滉はゲイの役柄なんだろうか、気になった。佐野周二の芝居はいつも軽くて古さを感じさせない。この素晴らしい役者が出ているだけで現代的な映画に見える。
中心の人物の物語をただ追っているだけではなく、脇役の人生までそれなりにしっかり描いていくるのは本当に番匠義彰。群像劇とまではいかないが、多くの人物を配置し捌きながら一枚の絵を浮かび上がらせる映画ばかり撮っていて感心する。

• #月丘夢路生誕100年記念美しい人

長崎のお祭りで出演者にかるーく演出手ほどきしている伴淳のはじまりからもうお腹いっぱい。奥さんはヤッタネ高橋とよ。伴淳と大泉滉とのコンビネーションがかなり確立されている。カステラ屋にコーラスグループに藤間紫のおにぎり屋に、さまざまな拠点で人物が動き回る。転換に次ぐ転換。長崎の祭りの山車の回る速さも高め、みている者を麻痺させるサービス演出。幼馴染って関係でやたらとエロい佐野周二と夢路。バンドマネージャーは九条さんに代わって瞳麗子さんが昇格。瞳さんのスタイルの良さに見惚れーの、倍賞千恵子のセーター可愛いーの、小金治と千乃ちゃんが脇をきっちり支えーの。全員が長崎に集合しちゃうのを待ち構えるブルーロビンのコーラス。結末よりも一瞬で過ぎゆく過程が、その場のノリが大事、の番匠ワールド。

【詳述は、『夕日と拳銃』欄で】めぼしい特集上映制覇の知人が選んで通ってたのに倣い、今になって何本か観た作家。この、シリーズの安定して親しみやすい流れ、すっかり安心して嵌るようになった。川島で名をはせた脚本家も。