どことなく『制服の処女』に似た雰囲気を出している。しかし、やはり『制服の処女』の方が間違いなく優れた珠玉の名作だ。感化院は黒い服、笑うのも歌うのも禁止。不良少女には「厳罰」こそが必要だと叫ぶ旧院長に「愛すること」こそ大切だと少女達を信じ改革を行っていく品格ある美しき新院長。
「少女時代の思い出は一生つきまといます。あの子達を憎悪と怨恨に満ちた女にはできません。気の毒な娘達ですから、幸せに社会に戻すのが私達の仕事です」「後悔しますよ」旧院長の一言。この一言が最後のクライマックスの伏線になっている。
美しく聡明だね、イヴォンヌ院長。ひねくれて素行不良、脱走の常習犯ネリー、しかし本当は彼女の心は潔白で純情なのだ。イヴォンヌはそれに気づき彼女を信じる。彼女の瞳を信じたのだ。
イヴォンヌ役のアニー・デュコーが気に入った、演技力ある女優だ。

旧院長と新院長の言い争いの白熱、テンポの速さ！同時代の日本映画、いや現代でもこれ程の表現、演出はできないのでは…訴えるものがある。イヴォンヌの顔の正面斜め右側からのアップ！
「20年来のしきたりは一切私の責任で変えます。罰するのではなく更生させるのです。あの娘達にここに来た理由を忘れさせるのです。罰より報いることを教えるのです。不幸は不当であり、人は皆幸福になる権利があります。生きることを教えてやるのです。ほほえむことを…」
希望に満ちた若きイヴォンヌの顔、それにオーバーラップで鉄格子などがなくなり、感化院が改善されて行くところが浮かぶ。

「腐った果実は新鮮にならない」
旧院長のこの言葉は辛辣だが、果実と人間は違う。

問い詰められるネリーと雨音、これはネリーの心理描写、黙るネリーを捉えるキャメラ、何度かネリーを捉えるが嘘を吐き出そうとした時、髪型が乱れており、イヴォンヌとの初対面のときを彷彿させた。彼女がまた不良少女に故意に戻るのかとハラハラした。
そしてカーテンを開け雨降る外を哀しく見つめるイヴォンヌ…この窓外からの雨シーンはイヴォンヌの心の涙。

悪いのは愚かなりしはフランス男、こいつが婚約者を自分のそばに置いておきたくてイヴォンヌを連れてきたのだ。「妻か聖女か」二者択一を迫る自己中心男。イヴォンヌが忙しくて仕事に没頭し顧みられなくなり駄々をこねる子供だ。これがフランスだ。身勝手なんだよなぁ最初から！ネリーとの関係もできつつ、イヴォンヌも愛しているという、イヴォンヌへの愛が深いが二股野郎だ。このフランス的ロマンス大嫌いだね、バカバカしい。
男が誠実なままで、ネリーを諭し、そしてイヴォンヌの気持ちを察し自ら彼女の為に身を引き黙って去り行く…この筋ならこの映画は間違いなく名作になっただろう。

「永住するわ。娘達はここを通り過ぎるだけ。いつかは去るわ。ここの真の囚人は わたしたち…」
深〜い淋しきイヴォンヌの最後の言葉。
窓から自由の身となるネリーを見送るイヴォンヌ院長は力なく右手を挙げ一気にやつれ老けてしまった。

古典。
レオニード・モギー監督作品として興味深い。

我慢

矯正院に新たな院長としてやって来たイヴォンヌ
反抗的だった不良少女ネリーも次第に心開いていくが、イヴォンヌの恋人である医師がネリーに恋心を抱いたことから様相が一変する……

愛情

女性たち
少女たちの想い

関係性
ドラマがなんとも

自由
囚われの身

最後まで見応えありました