▪️JPTitle :「運動靴と赤い金魚」
ORTitle :「Bacheha-Ye Asen」
▪️First Release Year : 1997
▪️JP Release Date : 1999/07/24
▪️Production Country : イラン
🏆Main Awards : ※※※
▪️Appreciation Record : 2022-008 再鑑賞
🕰Running Time : 88分
▪️Director : マジッド・マジディ
▪️Writer : マジッド・マジディ
▪️MusicD : ケイヴァン・ジャハーンシャヒー
▪️Cast : アミル・ナージ、ミル＝ファロク・ハシェミアン、バハレ・セッデキ
▪️Review
とても良い作品です。家族の、兄妹の互いの思いやりに温かい感動に包まれます。
幾つかの印象に残るシーン。ひとつの靴をかわりばんこに履いて学校へ走る兄妹の登校シーン、父親がモスクでお茶を作りながら自分の不甲斐なさに涙するシーン、兄のアリがマラソン大会を終え、カメラマンに向けた顔が涙で溢れているシーン、そして何と言ってもラストのアリの水に浸けた足の周りに金魚が集まってくるシーンが最高な余韻を残します。
邦題の『運動靴と赤い金魚』、赤い金魚の意味はクルドやイランに残る風習では「幸せの象徴」を意味します。この後の幸せな展開を予見させるような伏線のシーンで、赤い金魚が、妹のために一生懸命走ったお兄ちゃんの足の周りに慈しむように集まってくるようにも見える、ほんと美しいシーンです。
本作、イラン映画として初のアカデミー外国映画賞候補になったマジット・マジディの監督作品です。貧しい家族の物語を温かな目線で描き、家族の温かさを浮き彫りにして描いています。モントリオール世界映画祭でグランプリを含む4部門を受賞、第71回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートされた良作ですね。

物語は。。。
妹の運動靴をなくしてしまったアリ少年。家が貧しく、両親になくしたことを打ち明けられない彼は、妹に自分の靴を貸し、彼女が帰宅してから学校へ通う日々。そんなとき、学校のマラソン大会の3位の賞品が靴だと知った彼は、靴を獲得するために出場することにしましたが。。。

▪️Overview
妹の靴をなくしてしまった少年の奮闘を生き生きと描き、イラン映画として初めてアカデミー外国語映画賞にノミネートされた作品。貧しい暮らしを送る9歳の少年アリは、修理してもらったばかりの妹の靴をなくしてしまう。親にも言い出せず、自分の靴を妹と交代で履くことに。まずは妹が靴を履いて登校し、下校途中に交代してアリが急いで登校するのだが、遅刻してばかりでなかなか上手くいかない。そんなある日、小学生のマラソン大会の3位の賞品が運動靴だと知ったアリは、妹のために3位を目指し必死で走るが……。1997年・第21回モントリオール世界映画祭でグランプリなど4部門を受賞した。（引用:映画. com）

　貧しい家で暮らす少年アリ(ミル＝ファロク・ハシェミアン)は、家の仕事のお手伝いで八百屋に寄った際、修理してもらった妹ザーラの靴をなくしてしまう。両親に怒られることを心配したアリは、ザーラに頼んで自分の運動靴を彼女と交代で履くことを提案する。渋々兄の靴を履くことを了承した妹。朝はザーラが運動靴を履いて登校し、彼女の下校途中でアリは運動靴を受け取って学校に行くようにするがどうしても遅刻してしまう。開巻直後、八百屋の軒先に妹の靴の入った黒い袋を置いてしまったのがそもそもの失敗の始まりであり、店内でじゃがいも集めに夢中になっている時に、ゴミ収集おじさんが無慈悲にも黒い袋を持ち去ってしまう。我々観客はその一部始終を目撃したところから、主人公のアリを応援する。じゃがいもを買い店を出ると、そこにあったはずの黒い袋が見当たらない。木箱の山を手当たり次第に探すうち、店の陳列棚を崩壊させてしまう。案の定店の主人は激昂し、アリは一目散で家へと戻る。妹に靴をなくしたことを何と言えばいいのか兄は心から悩み、狼狽し、妹の前で不覚にも涙を流す。泣きたいのは妹の方であるが　笑、兄のただならぬ雰囲気を感じ取り、彼をそれ以上責めることはしない。健気な兄弟愛にほろっと涙する。

　マジディは90年代のイラン映画の伝統的な傾向に則り、この映画を製作する。その一つには非職業俳優の起用が挙げられる。主人公であるアリも、その妹であるザーラ(バハレ・セッデキ)も、彼ら兄弟の父親(アミル・ナジ)もこれまで一度も俳優経験のないアマチュアを起用している。このことはイラン映画の特徴であるドキュメンタリーとフィクションの境を曖昧にする。つまりそれはもっともらしい嘘であり、作為的にフィルムに収められた真実でもある。ここでいう波風とは妹の靴の入った黒い袋をおじさんが持って行ってしまうことであり、妹が兄貴に貸してもらった靴の片方を水路に落としてしまうことであり、兄貴が校長先生に遅刻を見つかり、学校を追い出されそうになることである。要所要所に彼らにとっては高い壁を設定することで、作り手は登場人物を陥れ、困惑させ、絶望の淵へと持って行く。キアロスタミの『友だちのうちはどこ？』からちょうど10年、狭い路地や彼らの育つ環境の貧困や子供達の純粋な瞳は10年経っても少しも揺るぐことはない。

良い映画を観たとはまさにこの事。イランに悪い人間は存在しないんじゃないかって思えるレベルで良い人しか出てない。お母さんは腰を痛めながらも家事に子育てに一生懸命だし、お父さんは結構怖い人なのかと思いきや滅茶苦茶お茶目で可愛い人だし、妹は女神のように可愛いし、お兄ちゃんは異常なくらい泣き虫で優しくて憎めないし…。もう悪いところがない。

お父さんと自転車の二人乗りするシーン、ニューシネマパラダイスみたいで泣けた。まあ安全運転には気をつけなきゃなんですけどね笑。ラストシーンはこのあとすごい幸せな出来事が待ってるんだって思える。今までにないくらい幸せな気分で映画を終えることができる。アッバス・キアロスタミに並ぶくらい良かったな。

妹の靴をなくしてしまい、一足の運動靴を共有する生活を始めたアリは、マラソン大会の賞品が運動靴だと知り、妹のために奮闘する。健気で一生懸命な兄妹の姿を描き、アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた感動のドラマ作品。

ぜひぜひぜひぜひ