▪️Title :「リラの門」
Original Title :「Porte des Lilas」
▪️Release Date:1957/10/06
▪️Production Country: フランス
🏆Main Awards : 1957年アカデミー賞 外国語映画賞
▪️Appreciation Record :2020-073 再鑑賞
▪️My Review
パリの下町を舞台にした喜楽と悲哀に満ちた人生と音楽家。
円熟期のルネ・クレール監督が脚本も担当し、パリの下町を舞台に描く人情劇です。往年の彼らしい雰囲気がある良作ですね。
「巴里祭」同様に、パリの下町の描写が素晴らしく、子供の遊ぶ容をうまく取り入れて巧く下町を演出し、小市民的な描写の中に友情と思いやりが流れているので、ほのぼのとしながら悲哀に満ちた展開になっています。
出演は名優「天井桟敷の人々」のピエール・ブラッスールと伝説的シャンソン歌手のジョルジュ・ブラッサンスです。ピエール・ブラッスールが、匿っている殺人犯にじょうろでシャワーをかけてあげたり、人の役に立とうと奮闘。シャンソン歌手のジョルジュ・ブラッサンスが音楽を奏でるのもとても良いですね。ヒロインであるダニー・カレルもとても可憐です。
物語は、仕事もせずに、酒におぼれるジュジュ。ある日、近所に住む音楽家の友人の家へ、警官殺しのピエールが逃げ込んできます。２人はピエールを追い出そうとしますが、負傷していることに気がつき匿うことに。しかし、ジュジュが密かに想いを寄せるマリアが、ピエールに夢中になり…。
ジュジュの心根の優しい子悪党のキャラがとても好感が持てます。ラストのジュジュ。。。こういうエンディングもなかなかですね。
今回、4Kデジタルリマスター版で鑑賞しました。優しい笑いで人々を包み込み、世界の映画作家にも多大な影響を与えたルネ・クレールの生誕120周年を記念し、代表作「巴里祭」「リラの門」が4Kデジタル・リマスター化されました。
本作もとても巴里らしい、そしてルネ・クレールらしい、映画の手本のような良作です！！

▪️Overview
ルネ・ファレの小説「リラの門」を映画化した作品。

フランスを代表する巨匠ルネ・クレール監督が、お人よしの男が殺人犯をかくまったことから巻き起こる騒動を描いた人情喜劇。パリの下町で暮らすジュジュは、仕事もせずに酒に溺れる毎日を送っていた。そんなある日、近所に暮らす音楽家の友人の家に、警官を殺したピエールが逃げ込んでくる。2人はピエールを追い出そうとするが、負傷した彼を放っておけず、かくまうことに。ところが、ジュジュがひそかに思いを寄せているマリアがピエールに夢中になってしまい……。「天井桟敷の人々」の名優ピエール・ブラッスールが、ろくでなしだが憎めない主人公ジュジュを熱演。シャンソン歌手ジョルジュ・ブラッサンスが音楽家の友人役を演じる。1957年製作・公開。2019年6月、クレール監督の生誕120周年を記念して4Kデジタルリマスター版が公開。（引用:映画.com）

円熟期の最高傑作！


ストーリー
お人好しで飲んだくれのジュジュは、仕事もせずに友人の〝芸術家″の家に入り浸っている。ある日、南仏から警官殺しで色男のバルビエが逃げてくる。ジュジュは〝芸術家″の家でバルビエを匿うことになり奇妙な友情が生まれる。


主演　ピエール・ブラッスール
監督　ルネ・クレール


マーティンスコセッシや様々な監督に影響を与えたルネクレール監督最高傑作！
映画史に残る伝説的作品をようやく。

最高に愉快で面白く、それでいてハラハラドキドキ。言葉にするには難しい"もどかしさ"と葛藤、そしてヒーロー映画より分かりやすい「人間の冷たさ」を見事に描写し切っている。

人の世界を見た目や肩書き、頭の良し悪しで判断する事への疑問を投げかけており、それは現代でも通ずる部分がかなりある。
この時代よりはるかにそれは増えただろう。
人が人に冷たくなった世界はまるでこの映画の様である。

この映画の中のお人よしは"人生が変わる"だろう。それはどんな結末を迎えようとも。
しかし、面白いのは"彼の様な存在が希望"であり、冷え切った人間社会での"祈り"として扱われているのを我々は応援せずにはいられない。
そんな彼がハッピーだろうが、アンハッピーだろうが、人間の幸も不幸も全てを背負って生き続けなければならない"罪人"の様は、思わず泣いてしまう。

この作品には確かな時代の"匂い"があり、どのタイミングでも世界観に入り込める。
そして、どこか憧れてしまう。
描いているのは人と人との交流であり、グロテスクな描写やエロいシーンなどは会話を除き一切描いてないのに残酷。
観客に考えさせる力を秘めているのだろう。

数々の名監督たちがベストに挙げるだけはある。一生に一度は見ておきたい名作である。

ルネ クレール作品4Kリマスター版@恵比寿ガーデンシネマ
地味だけど、後から切なさがじわじわとこみ上げてくる作品。
盗みはするし、大酒飲みだし、ロクなもんじゃないジュジュに最初から叱咤したくなるほどやれやれなんだけど、物語が進んでいく上で彼が最初に口ずさんだように本当に純粋なのは彼なのではないかと思えてくる。
そして酒の匂いがプンプンしそうな汚いおじさん2人や銃を持った逃亡犯が出てくるお話なのに、まるで絵本を読んでいるような気分にさせられるほのぼの感が拭いきれないのはジュジュの無垢さとピエールのお人好しさが度を過ぎてるからなのかも。
ちなみにこのジュジュに関しては日本人愛する「車寅次郎」にちょっと被るから愛おしいんだという事に気がつく。
そんなピエールとジュジュの凸凹コンビのやり取りがはじまりのフォアグラシーンから微笑ましくてこの素っ頓狂な感じに笑ってしまう完全なるコメディなはずだったのにみているこちらが虚無感に襲われてしまうラストシーンに呆然。
FINが描かれたこの後に描かれていないラストシーンを思うとなんとも切ない。
純粋さが仇になってしまう。
これはどの時代もどの国でも共通なのかもしれませんが、ピエールとジュジュのささやかで穏やかな友情だけはどうか永遠にと祈るばかりです。