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アルマーニのmazdaのレビュー・感想・評価

アルマーニ(2000年製作の映画)
3.8
イタリアのファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニを情熱大陸的な手法で1年間追ったドキュメンタリー。
デザインやショーが好みのブランドはたくさんあるし、映画として良かったといえるファッション映画はこれまでにもあったけど、ハイブランドのデザイナーの信念や思考に共感できたのは初めてかもしれない。
偏見の混じった考えだけど、ハイブランドのデザイナーって自分のセンスに酔ってるって感じがして、成功者特有の溢れた自信とかプライドの高さとか、とにかく自尊心が強くて、ファッションという観点で好きになることはあっても人としてはなかなか好きになることはできない。アルマーニも独特の思考の持ち主だし、どちらかといえばプライドも高い。けれどこの映画に描かれる彼の感性は1人の人間としてとても魅力的だし、デザイナーとして働く彼の姿勢がとてもかっこよくて気づけば釘付けになっていた。

まるで立ち上げて初めてのショーをするデザイナーのような緊張感。1つのショーを作るというだけで何百人もの人が関わっているのにそこでまかせっぱなしにせず、スタイリング・ヘアメイク・照明などあらゆる方向に気を配り、ARMANIのデザイナーとして、全てに責任を感じているのが伝わる。
考えてみればあなたのショーなんだから細部にまで気を配るのは当たり前でしょという感じもするが、他のデザイナーのドキュメンタリーや、制作の裏側を追うビデオを見てると、デザイナーのわがままに振り回されて縫製さんやスタッフが終わりがみえない、、と必死で仕事してるイメージしかなく、デザイナーよりもスタッフすごいなあという印象の方が強い。

神経質で完璧主義が多い日本人にはARMANIみたいなタイプのデザイナーさんは意外とあまり珍しくないと思うが、『ファッションが教えてくれること』でも感じたように、海外だと良くも悪くも適当なところがどこかしらに現れてしまう印象があるので彼のデザイナーとしての働きはとても意外性があった。アルマーニは私のこの"海外のイメージ"を、この映画によってある意味壊してくれた。イタリアなんてちゃらい男の多い国No.1といわれるくらいだからなおさら、日本の職人のような繊細な彼の雰囲気からは、イタリア男のイメージとはとても結びつかない。
良いか悪いかはおいといて、彼はファッションを楽しむというよりも、ファッションという仕事をこなすというスタンスなんだと思った。とはいえこれだけ現場で怒鳴り厳しく指示を出していれば他のデザイナーと同様、裏で仕事してる人達は結局ヒーヒー言いながらやっているんだろうけど、「自分のブランドに関わる人達全員に生活があり家族がある。」という責任感をもってる彼の言葉を聞けば一方的だなんて思わない。ブランドの成功を望むのは、名声やプライドの為というよりも社員達を思ってこそで、だからここまでストイックに神経質になってやれるんだと思った。

基本的にファッションにおいても映画においても服・作品から入ることが普通だと思う。その服や映画が自分の好みにはまって初めて「これはどんな人がどんな思いで作ったのだろう」という興味になり、知っていく上で好きな監督や好きなデザイナーになる。興味がなければその人のことを話されたところで記憶に残らないだろう。
この映画を借りてきて観てる時点で、アルマーニへの興味が少なからずあるわけだけども、『ARMANI』というブランドにそこまで惹かれるわけではない。この業界では有名なブランドで大物デザイナーだ。という印象だけで、ブランドの特徴はちっともぴんとこない。
だからこそこの映画をみてアルマーニという人物を知った時、この人が作る服は、作るショーは、どんなものかなと新しい形で好奇心が生まれることがなんだか不思議だった。

『若い時は未熟でとても緊張したが、この歳になってもショーの前はドキドキだ。長い経験を積んでもこの緊張感は変わらない。』
生きてるうえで、いろんな出会いをしていろんな事に取り組んでくると日を重ねてくうちにちょっとのことでは驚けなくなってしまうかもしれない。だからこそ彼のこの言葉にはとても惹きつけられた。私よりずっといろんな経験、挑戦してきたこのおっさんがドキドキするものってどんなもんなんだろうって。映画では彼のコレクションを見せないからこそ、もっと知りたくなる。
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