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メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬の作品紹介

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬のあらすじ

テキサス州の国境沿い。メキシコ人のメルキアデスは、ある日突然、銃弾に倒れた。親友のピートは、犯人が国境警備員・マイクであることを突き止めて拉致。親友との約束を守るため、ピートは遺体を掘り起こし、マイクを連れてメルキアデスの故郷へと向かう。

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬の監督

トミー・リー・ジョーンズ

原題
LOS TRES ENTIERROS DE MELQUIADES ESTRADA
製作年
2005年
製作国
アメリカフランス
上映時間
122分
ジャンル
ドラマ

『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』に投稿された感想・評価

3.4
男同志の友情を借りながらも、描きたかったのは米国メキシコ不法移民問題?~クセがすごいの vol1 ~

先月末のニュース

”米国とメキシコ国境での不法移民の拘束者数が1日あたり4000〜5000人と2022年12月に比べて半分近くに減った”(日経新聞)

減ったといっても、1日5,000人。。。昨年末はその倍の1万人/日!!
昨年一年間では、拘束された人の数は計200万人を越えたそうです。

すみません、時事ネタが枕で(笑)

というのも、この映画、メキシコから不法入国してきた、メルキアデス・エストラーダという移民の埋葬のお話なのです。

メルキアデス・エストラーダが生前、友達になったのが、トミー・リー・ジョーンズ演じる主人公ピート。

ピートはどこにでもいそうな米国カウボーイのおっさんです。

あるとき、メルキアデスが遺言をピートに伝えます。

「もしも自分が死んだら、故郷メキシコの村に埋葬して欲しい」

自分よりも年下のメルキアデスに、ピートはそんなの俺のほうが先だわと軽く受け流してたのですが、メルキアデスが不慮の死をとげる。

生前、メルキアデスは自分の馬を気に入ったというピートにあげると言います。
断ったピートに、「もうあんたの馬だよ」と。
メルキアデスは素朴でとてもいいヤツでした。
故郷メキシコに家族を残してここへやってきた。

ピートはそんなメルキアデスの遺言を律儀に守り、メキシコの彼の村まで、彼の遺体を馬で運ぶことになります・・・

普通、埋葬って一回こっきりのところ、なんで3回も埋葬するのか?というところがこの物語のミソです。

物語の時系列をくずしているので、最初はじゃっかんわかりにくいところがあったけど、独特なテイストにかなりしびれる映画でした。

— 男同志の友情を借りながらも、描きたかったのは米国移民問題? —

本作の脚本家が、メキシコの不法移民がいないと米国の経済は回らないと言ってましたが、冒頭のニュース記事からしても、実態はそうなのかもしれません。

拘束されずに国境をすり抜けた不法移民たち。
通報されると困るので、足元みられて低賃金で労働力を提供せざる得ない。

ところが、米国のブルーワーカーからすれば、自分らの仕事を低賃金の移民に奪われるので、移民には反対。

移民に反対するブルーワーカーの支援を受ける共和党→トランプでてくる→メキシコとの国境に壁をつくる

一方、雇う側からすれば移民のような低コストで潤沢な労働力はとても使い勝手が良い。

ただ、それをストレートに言うのもなんなので、

それって人道的にどうなのよ?ちゃんと国家として移民受け容れようよ!

人道面で移民に理解を示す(裏の理由は別にして)比較的富裕層の支援を受ける民主党→バイデンでてくる→国境の壁建築中止

まあ話はそんな簡単ではないのだけど、そういった米国固有の政治政策の視座をもってこの映画をみると(そんな大げさな笑)、なんとなく別の風景も見えてきます。

というのも、この映画、脚本家がいうような「男の友情を描いた」というには、あまりなピートの言動なもんで・・・友情のためにそこまでするぅ?

ピートさん、そこまでするには、友情を越えたそれ相当の何かがあるんでしょ?

と勘ぐってしまったが、特にそんなことは描かれなかった。

— 謎の宇宙人はどっちより? —

トミー・リー・ジョーンズといえば、聞いてるところだとかなりの日本びいきで、缶コーヒー好きな謎の宇宙人、あるいは黒い服着た宇宙人バスターというイメージが定着してますが(してないか笑)、実はハーバード卒のインテリで、”不都合な真実”でおなじみの元米国副大統領アル・ゴア(民主党)と、ご学友だったそう。

この監督作品は賞とってるし、評価は高いものの、なんとなーく、多少なりとも彼の政治信条が絡んでる映画ではないのかなぁと勝手に邪推もする。

まあでも、そんなこと考えずにみても、十分面白い作品です。

アメリカの田舎については知らないけど、あっけらかんに不貞が描かれてたりするし、とにかくメルキアデス・エストラーダの遺体がキツイ(見た目も)・・・

ほんと普通の映画じゃない、クセがすごいんです(笑)
3.9
BOSSのおじちゃんトミー・リー・ジョーンズの初監督作品


死体は三度埋葬されます

そのどれもに芯の通った確固たる意味がある

血の匂いが終始漂う物騒な物語ですが、男二人の素敵なロードムービーでもあります

主演もつとめるおじちゃん、荒涼とした場所がよく似合いますなあ
panpie
4.1
「ダラスバイヤーズクラブ」「最後の追跡」などに続くテキサスの男臭さ全開の今作。
フォローしているきざしさんのレビューで気になったので久しぶりのAmazonプライムで観てみました。


二人の警官がコヨーテを発見しライフルで撃つ。
見事命中した!
二人が行ってみるとコヨーテの死骸の傍に男の死体が!

警察は遺体をピートに確認させる。
男の名前はメルキアデス・エストラーダ。
牧場で働いていたメキシコからの不法就労者でピートの親友だった。
検視の結果射殺されて7日が経っているという。
早く埋葬しなければならない。
ピートは検視が終わったらメルキアデスの遺体をくれと保安官のベルモントに頼むがベルモントはピートの申し出に頭がおかしいやつ位にしか思わずピートに知らせず勝手に穴を掘っただけの簡単な埋葬をしてしまう。
祈りもなしで。

シンシナティからやってきた若きマイク・ノートンとルー・アン・ノートン夫妻。
国境警備隊で働く事となりテキサスに新居を構える事になった。
この一風変わった男が事件を巻き起こす事になる。
国境警備隊員なのでマイク・ノートンは国境を越えようとするメキシコ人を殴る蹴るして捕まえる血の気の多い男だ。
女であろうと容赦なしに殴る。
面倒はごめんだ。
殴るのはよせ。
隊長から説教される。

ピートはメルキアデスの撃たれた場所から離れた所に薬莢が二つ落ちてた事を知る。
メルキアデスは殺されたのか?
誰に何の為に?
ピートはメルキアデスが殺されてから2日間も家にこもって悲しんでいたが薬莢が二つ落ちていたという事実を知ってから犯人探しを始める。
薬莢の事をベルモントに言ってものらりくらりとかわすだけで一向に犯人を捕まえようと動こうとしない。
何かおかしい。
犯人が誰だか知っているようだ。
調べていくと国境警備隊の誰かが撃った弾だと分かりベルモントに告げに行くがベルモントはメルキアデスの遺体は埋葬したとだけ告げる。
何故知らせなかったと怒るピート。
警察が動かないなら俺が捕まえる。
遂にピートはある計画を立て実行に移す。

ある日の回想シーン。
メルキアデスはピートに家族と一緒の写真を見せてもう5年も会ってないという。
「約束してほしい。
もし俺が死んだら家族の元へ連れて行ってくれ。
国境のこっち側に埋められたくない。
必ず故郷のヒメネスに連れて行ってくれ」と。
俺の方が年上だから先に死ぬと笑い飛ばすピートにメルキアデスは何度も何度も約束させる。
まさか本当になるなんて。

メルキアデスの故郷へ向かう途中立ち寄った家にいる孤独な盲目の老人のシーンもいい。
3人で食事の前の祈りを共にし別れ際に俺を撃ってくれとピートに頼む老人。
来てくれていた息子は半年経っても来てくれない。
息子は癌なんだ。
もう来る事はないだろう。
だから俺を撃ってくれ。
ピートが撃つのではないかと観ていてドキドキしたが彼は撃たなかった。
老人は両目の上から頰まで縦に2本切り裂かれたような傷跡がある。
それで目が見えなくなったのか。
どんな過去があったというのか。
説明はないがこの少ないシーンに登場する老人の生き様を想像させるとても秀逸な好きなシーンだ。
生きる事に疲れスペイン語も分からないのにスペイン語のラジオを一人聴いている老人の寂しさよ。
孤独に死を待つ辛さが沁みてくる。

テキサスが舞台なのでやはりどうしても女は男の慰み者か添え物扱いだ。
この町の唯一のダイナーで働くレイチェルは若くないが色気全開で女を利用し男を手玉にとるしたたかな女性だ。
演じるメリッサ・レオは調べて分かったのだが「スノーデン」でローラ・ポイトラス役で出ていた事に観ていて全く気づかなかった程の別人だった!
今作は「スノーデン」から10年程前の作品なので無理もないか。

他の出演者達も凄い人だらけ!
マイク・ノートン役のバリー・ペッパーは「プライベートライアン」で注目された俳優だし(詳しく思い出せずやはりもう一度観直そうと思っている)、ベルモント役のドワイト・ヨーカムはグラミー賞の受賞歴もありノミネートは数知れずの有名なカントリー歌手で俳優や監督もしているマルチな才能の持ち主だった!
今作のちょっとズレてる保安官役でいい味出してた。

トミー・リー・ジョーンズは現在御年70才なんですね!
1993年の「逃亡者」はジェラード捜査官で素晴らしい演技でアカデミー賞助演男優賞を受賞し本当にカッコよかった!
たまに思い出して観る作品です。
そのイメージが大だったのでCMで宇宙人ジョーンズとして登場した時は度肝を抜かれた。笑
そしてこんなに渋く歳をとって今作の枯れた演技に拍手を送りたい。
今作ではやはりカンヌで男優賞をとっているらしい。
流石の演技でした。
そして監督もこなしていてほんと凄いですね。
「最後の追跡」のジェフ・ブリッジスと渋さでは甲乙つけ難い!
長生きしてまだまだ素晴らしい作品に監督で主演で携わって欲しい。

メキシコの広大な風景が素晴らしい作品だった。
ベルモントがピートを撃とうと狙ったが撃てなくて空を見上げるシーンでの鷹?や渓谷を転がり落ちるシーンでの馬など描写が素晴らしい。
メキシコに着いてから酒場で子供が不思議な音色のピアノでショパンの別れの曲を弾くのだが妙にマッチしていて良かった。

あとピートのメキシコからの電話でレイチェルへの愛の告白をするシーン!
無下に断られるがレイチェルの本心は如何程だったのか。
お尋ね者になった男など願い下げ!と額面通り受け取っていいものか迷った。

1度目は時系列が複雑でストーリーを理解できずやはり2回観てしまった。(^^;)
男の友情を熱くしっかりと描いている。
死してなお友を大切に扱う所や約束を守る所はは滑稽でもあり笑いも誘う。
メルキアデスの死体の顔がいい!
蟻さんの件はニヤニヤ笑いが止まらなかった!
他にも腐らせないようにあの手この手を使うのだがそれって本当に腐らないの?と思う所もあるがトミー・リー・ジョーンズの「逃亡者」を彷彿とさせる嬉しそうで若者の様な素敵な笑顔がここで観れる!と嬉しくなるシーンもある。
「もう蟻には食われないぞ」と笑う所は苦笑いを誘う。

ちょっと精神的におかしい無感動のキレやすいマイクが最初は半ば誘拐されて脅されて連れて行かれるのだが関わっていくうちに少しずつ変わって行くところがとてもリアル。
蛇に噛まれたマイクを放置せず連れて行った薬草で治す女の登場の仕方がまたいい。
同じ目にあわす所もメキシコ女の強気が出ていていい。
親友を殺した男を殺したい程憎んでいるのに助けるピート。
人間はともに過ごす時間が多い程助けたり助けられたりして関わっていくうちに変わっていくのかもしれない。
登場人物達の微妙な心の変化をじわじわ表現している脚本も演技もお見事!
脚本のギジェルモ・アリアガは私の好きだったイニャリトゥの「バベル」の脚本も手がけていたのですね!
素晴らしいストーリーに拍手!

マイクは自分の犯した罪にピートによって向き合わされてそれを見つめ直しいつしかピートの理解者になった。
銃で脅されなくてももう逃げない。
一緒にメルキアデスを弔う。
二人で作り上げたヒメネスを肩を組んで一杯やりながら弔う。
もはや友達の様。
マイクの赦しを乞う姿に涙が溢れる。

とても奇妙なロードムービーだった。
殺した男と殺された男とその親友の物語。
なぜメルキアデスはピートに嘘を語り故郷への埋葬を約束させたのか。
嘘というより願望だったのかな。
ピートもメキシコでメルキアデスの家族を探していくうちに気付いたのだろう。
案外真実とは分かった瞬間に拍子抜けしてしまうのかも知れない。
律儀に約束を守った男の哀しい物語だった。
観ていてゆったりとした時間が流れた今作。
忙しい毎日を観ている間は少し忘れられた気がする。
改めて友達を大切にしようと思いご無沙汰の友達に連絡を取ろうかな。

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