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花籠の歌
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目次

『花籠の歌』に投稿された感想・評価

◎銀座トンカツ屋看板娘の婿取り コックは中国人

1937年 松竹大船 モノクロ 69分 スタンダード
*冒頭あたり音声聴き取り難いが概して状態良し

これは拾い物。良かった。

小津の初期作品にもよく出る河村黎吉が銀座のトンカツ屋「みなと」の亭主敬造。

雑誌のグラビアも飾る人気の看板娘洋子が田中絹代。
おキャンで闊達、口八丁手八丁な銀座娘だ。

帝大出の医者岡本(近衛敏明)を婿に、と世話してくる叔母お菊(岡村文子)のお節介を当の本人の洋子が嫌がっていることから頑として拒否する父敬造の肝の座りぶりが見事で、未婚の娘の心配を家族・親族一同こぞって競い合う小津作品ばかり観ている身には、かなり新鮮でサバけた父親像だ。
河村黎吉のベストアクトに数えたい。

なお、一般客のふりをして洋子のご機嫌を伺う岡本は確かに鷹揚かつ品のある帝大医学士ぶり。演ずる近衛敏明が後に新東宝の石井輝男作品で悪役ばかり演じる同一人物とはすぐに気が付けない。

洋子がホントに好きな常連学生小野(佐野周二)を敬造も気に入って、本人も了承の上、さっそくトンカツ屋の入婿見習いを始める。
叔母のお菊は最後まで「今どきの学生なんてダメに決まってますよ」と譲らないのが可笑しい。

お菊の夫富太郎は何故か関西弁でボケ役に徹して笑いを取る。
小津のサイレント作品『東京の合唱』で岡田時彦をクビにする保険会社の社長役だった人。
本作のトボけた味も捨てがたい。

小野の親友で坊主の息子の堀田念海を笠智衆が演ずる。
笠も、お馴染みの訥々とした喋りではなく、熊本訛りもあまり目立たず、よく話し、よく食べ、よく眠る。
学生らしい、年相応の若さを発揮した演技で、これも小津作品とイメージが違って新鮮だ。

海外航路の客船シェフだった敬造の妻がシンガポールで亡くなって何年か目の法事にお坊さんを呼ばなければ、という段になって、急遽任された堀田が学生服の上に法衣を着て読経するさまが可笑しい。

敬造の店は銀座だが、住まいは木造アパートの二階で、狭い部屋に親族が詰め込まれて法事が営まれるさまも現在では見られない光景だ。

妹の浜子は若き高峰秀子、12歳にしてデコちゃんの愛らしい顔だちが完成している。

そして、もう一人重要な役割を果たしているのが、「みなと」のコック、上海出身の中国人李さん(徳大寺伸)だ。

昭和12年当時でも中華の店なら中国人の店員も当たり前だっただろうが、和製洋食のトンカツ屋で中国人が働いているだけで、本作の多様性への目配りが感じられる。

演ずる徳大寺伸は赤坂の料亭の息子で、当代七代目尾上菊五郎の父、六代目菊五郎の養子となった故七世梅幸の兄だそうだ。

密かに洋子に想いを寄せていた李さんは、恋に敗れ、失意のうちに「みなと」を離れる。

海外航路の客船乗務だったこともあるためか、下町のおじさん風のキャラでありながら、敬造の会話には「イエスかノーか」など英語が自然に入って来ていて現代風なのが面白い。

太平洋戦争が始まる2年前の頃までは、少なくとも銀座のトンカツ屋では、いや、五所平之助の作品世界では、生活レベルで大正デモクラシーの気風が生き延び昭和モダンを謳歌していたことが分かる意味でも貴重な作品だ。

娘の周囲からの「結婚圧力」「良家との見合強制」を叔母に任せ、父親は娘の恋愛を応援する、店員として中国人が家族同様に働いている、笠智衆がヤンチャな学生ぶりを発揮しているetc.というだけで、いささか窮屈な小津映画の家族観、世間観とは大分違った多様性を感じる社会像が提示されているのだ。

本作を「社会派」と言うのは当たらないが、やはり社会派たる五所平之助の本質的な視野の広さが作品世界の広がりをもたらしているのだと受け止めたい。

小津信奉者こそ観るべき、隠れた名作である。

斎藤達雄がカメオ的にアメリカンなイカつい刑事役で登場するのも御馳走のひとつだ。

《参考》
*1 『花籠の歌』(1937年1月14日・松竹大船・五所平之助)
佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所
2024年2月15日 18:14
note.com/toshiakis/n/n78d8434fd3ac

* - 2024.7.18 花籠の歌(1937年)
2024-07-19 00:55:54
ameblo.jp/tankcap/entry-12860438062.html

*3 大衆文化評論家 指田文夫公式サイト | 「さすらい日乗」
『花籠の歌』 2013/3/6
sasurai.biz/0002830.html

*4 映画じゃなくても語れるよ?
乙女の謎は誰にも解けない『花籠の歌』:A++
2013/08/16 20:00
blog.livedoor.jp/basedonfacts/archives/67940228.html

*5 荻野洋一 映画等覚書ブログ
『花籠の歌』 平之助ごしょ 15/04/16 03:11
blog.goo.ne.jp/oginoyoichi/e/2bfb6c2f5a26324ddbf424c3a3e42cf7

*6 映画(昭和初期)のおすすめ
【ネタバレ注意】映画「花籠の歌」感想/評価/あらすじ|開放的で軽いノリの若者たちがいい感じ
2019.02.16 30年代、五所平之助
nihon-eiga.milliwalk.com/hanakagonouta/
【ネタバレ注意】映画「花籠の歌」感想/評価/あらすじ|銀座が文化の最先端だった頃のハイカラな様子が楽しい
2019.02.21 30年代、五所平之助
nihon-eiga.milliwalk.com/hanakagonouta_2/

*7 ハリネズミの耳
松竹映画100周年 “監督至上主義”の映画史『花籠の歌(1937年 監督:五所平之助)』神保町シアター
2020.12.01 2020.12.02
http://myosotis.tokyo/2012hanakagonouta

*8 TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History
Review: 五所 平之助 (dir.) 『花籠の歌』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/12/04
www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/2020112802.html

*9 俺の命はウルトラ・アイ
花籠の歌 平成十九年五月十・十二日京都文化博物館上映版を併せて学ぶ
2024-05-13 11:21:29
ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12852019301.html

《上映館公式ページ》
京都文化博物館
生誕100年 高峰秀子 銀幕に生きる
2024.10.8(火) 〜 11.8(金)
会場: 3階 フィルムシアター
www.bunpaku.or.jp/exhi_film_post/20241008-1108/
hiroki
3.1
銀座のトンカツ屋の看板娘を巡る恋物語。ていうか今だったらシットコムみたいな。とにかくトンカツ食べたいなあって感想しかないんだけど。明治チョコレートのネオンの横に見えるあのムーランルージュの風車みたいなの何あれ?学生服の笠智衆がニセ坊主になってお経唱えてた。田中絹代の妹役の高峰秀子のいつになったらスターになれるんだろうなあ〜がパンチライン
尻切れトンボなエピソードと魅力的なキャラクター達。特に揚げ場の韓国人・李さんの男はつらいよ感が切ない。2020年に向けて日本髷を結った女の子が給仕するトンカツ屋は流行ると思う。@神保町シアター

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