妻の心の作品情報・感想・評価

「妻の心」に投稿された感想・評価

ENDO

ENDOの感想・評価

4.2
保険屋の真意も長男の解雇も芸者の自殺も全ての理由は周到に描かれず排除されているがその空隙に見えずに詰まっている数々の切り捨てられた感情が蓄積されていくけれど決して崩壊はしない日常。兄の反応を伝えにきた妹の杉葉子が捕らえられお見合いをさせられる皮肉。高峰と三船が2人並んで歩いても何も起こらない。パントマイムのように演じられる喫茶店もやはり透明な存在。いつも困り果てた顔の桂樹がいい味出してる。近代化していく薬局の味気ない白く輝くネオンに浸食されていく過渡期の日本の在りし日の姿。芸者の『泣きたい時に笑い、笑いたい時に泣く』という言葉が後になって胸に突き刺さる。東宝は翌年に『七人の侍』を撮るわけだが同じ役者の静と動の差が凄まじいな。
三船敏郎が下手、を発見。逆に黒澤監督の偉大さ、確認。
今となっては理解しづらい人間関係。
小林桂樹の旨さ、光る。
まさわ

まさわの感想・評価

3.8
「女なんて損な役割ばっかり!」というフェミニズム映画。しかし最後は丸く収まるので「足りない」気持ちはするんだけど、姑、兄嫁、義理の妹、叔母、独身の女友達、芸者など、生き方や立場の違う女性がたくさん出てきてそれぞれの苦労と幸せみたいなものが垣間見えるようになってるのがよかった。
自宅敷地内で喫茶店を始めようとする小林桂樹と高峰秀子の中年夫婦。「乱れる」の若大将みたいには凸ちゃんに迫らない、品の良いミフネ。
籠

籠の感想・評価

4.0
意図的にすれ違おうとする家庭内での表情や動きの瞬時のアクションをタイムリーに記録したカット割が凄すぎる異質さに気持ちが悪くなる…三船敏郎扮する体育会系銀行マンのシーンの爽やかさに多少は中和されるが不機嫌な女王高峰秀子はひたすら我が道を往く。三好栄子の顔は別格にして千秋実の気持ち悪い動きと女王の打ち明け話に対する杉葉子の表情が出色だった。
こんな豪華キャストで誰も語らない50年代では浮いた存在だが小林桂樹の佇まいなどは「女の中にいる他人」に繋がっていると感じた。「ひき逃げ」含めて晩年の異様さには重要な作品ではなかろうか。

女王が出入りする店は見るからにおいしそうな洋食屋だった。店を営む夫婦役が加東大介と沢村貞子と実の姉と弟にやらせているのもある意味異様だが加東大介の息子が営んでいた永福町の黒森庵の独特な蕎麦の忘れられない味を思い出した。
ちょっとした台詞や仕草で家の中の力関係の変動が表されるのが面白い。お金に関する話題が多い成瀬映画の中でも、ひょっとしたらこの作品が一番イヤらしく金銭に関わる人間関係を描いているのでは。
突然の雨に閉じ込められた高峰と三船の胸キュンシーンと哀愁漂う小林桂樹の良さ…。
アノ

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3.5
小林桂樹が懇意にしていた芸者が自殺したことを高峰秀子に告げるシーンがタイミングもスリルも素晴らしい。
息を呑むってこういうこと。

家をウロウロする姪っ子の異物感が夫婦の壁の厚さをジワジワ滲ませていて上手いなあ。
義母(三好栄子)と夫婦(小林桂樹、高峰秀子)の3人暮らしで薬屋を営んでいたが、それと並行して喫茶店を開く計画が持ち上がる
資金繰りに苦労する中、妻の友人の兄(三船敏郎)が銀行に勤めていることもあって、融資を頼みなんとか開店の目処がたった時に起きるドラマ

夫は次男なんだけど家を継いでいるのは長男(千秋実)が家を出たから、その長男夫婦が転がり込んで来て居座っちゃう、そして金の無心
この辺りのすごーく気まずい空気、はりのむしろ的な、家の中になるべく居たくないってことから起きたお互いの過ちみたいな

こういう家族もののドロドロ、いかにも成瀬巳喜男っぽいですよね
でも三船敏郎がこういう系に出演していたってのは意外です
クレジットは高峰秀子に次いでの2番目、役的には助演って感じでなかなか珍しいかと

でもこういう三船敏郎もいいですね、真面目な銀行マン、頼り甲斐があって優しくて子供好き、そりゃよろめいちゃうよねー
雨宿りでのお互いなんとなくわかってるけど、言い出せない微妙な空気のシーンが良かった!

このラストは当時だからってのあると思う、現代の男女間を考えると高峰秀子の選択は何で!?って多少思っちゃうもん
古臭い考えなのか古き良き考えなのか、何れにしても今では絶滅種な女性像ですね、ファンタジー感すらあるもん
Jimmy09

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2.5
高峰秀子と小林桂樹が夫婦であり、パッとしない代々続いている薬屋を継いでいるが、喫茶店を空地に作ろうと、金の工面をしたりしている。 
そこに、かつて勝手に家を飛び出した兄(千秋実)の一家3人が戻って来た。兄が東京の会社をクビになったのかと思っていたら、会社が倒産したらしい。 
会社つぶれて金が要る、という金銭問題が重なる。 

この映画には、三船敏郎も出演しているが、安心して観ていられるのは、三船登場シーンぐらい。なぜかと言うと、金の問題が出てこないから。 

途中、高峰秀子と三船敏郎が突然の豪雨で帰れなくなる場面は、溝口健二監督の『武蔵野夫人』の狭山湖シークエンスを思い出すが、やはり安心して観ていられる。 

しかし、本当にイヤになるぐらい悪い事ばかり起こる物語であった。
kaomatsu

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4.0
東京近郊の地方都市で、慎二(小林圭樹)と喜代子(高峰秀子)夫妻が経営する老舗の薬屋は、新しい時代の波に押されて経営難に。二人は敷地に喫茶店をつくって、再出発することを計画するが、その矢先、薬屋を継がずに東京に出ていた慎二の兄で長男の善一(千秋実)が、会社を辞めて妻子もろとも実家へ戻ってきた。そして善一は慎二に、30万円を貸してほしいと言う。このタイミングの悪さに慌てふためく慎二。母(三好栄子)と二人息子である善一・慎二兄弟、そしてその嫁たち(善一の奥さん役は中北千枝子)をめぐって、成瀬巳喜男監督十八番の、オカネにまつわる実にチマチマ、ウジウジとした確執劇が繰り広げられていく。このチマチマ加減が、劇映画として実に面白いのだ。

個人的には、成瀬作品に三船敏郎というのがとても新鮮だった。彼は喜代子の親友の兄という役どころで、昔は喜代子とはお互いに慕い合っていた様子。どこまでも猛々しい、世界のミフネともあろうお方が、本作で高峰秀子扮する喜代子と雨宿りするシーンでは、急に無口になり、イイ感じになり、もじもじ、もじもじ…。こんなシャイなミフネを観られるのは、本作だけじゃないかな。でもつくづく、市井の生活を撮る成瀬フィルムの中に収まった(いや、収まり切れていない)ミフネというのは、やはりスーパースターとして別格の存在感があるな、と思う。
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