あまのかぐや

サニー 永遠の仲間たちのあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

サニー 永遠の仲間たち(2011年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

最近広瀬すずちゃんら豪華キャストでリメイクされた日本版が公開されたとのこと。
観に行く時間が、まだ取れないので、まずは予習がてらオリジナルを。
「オリジナルを知らない方が楽しめる」「いや知っている方が」などなどいろんなご意見もあるでしょうが、耐えられず、先に観ちゃいました。

結婚して、稼ぎの良い夫、高校生の娘と、そこそこ良い家庭を営んでいるイム・ナミ。
夫はナミや娘にお金だけわたして仕事第一のそっけない男。高校生の娘は反抗期+学校生活に悩みを抱えているよう…。
そんなとき、母の入院先の病院で高校時代の友人チュナと再会する。チュナはガンで余命2か月と知る。高校時代ある事件でバラバラになってしまった仲良しグループ「サニー」のメンバー7人にもう一度会いたいというチュナの願いをかなえるために奮闘する。

田舎から転校してきたナミは、訛りをからかわれ不良たちからいじめを受けていましたが、彼女を助ける姉御肌のチュナが「サニー」のリーダーでした。サニーメンバーは7人。敵対するグループ(その名も「少女時代」w)とケンカするとき人数合わせでナミが加入させられます。
その他のメンバーは、明るく豪快なアイプチ娘は、25年後、成績の悪い保険外交員に。
ミスコリアをめざすキュートな美容院の娘は、25年後、母親の借金がもとで場末の水商売に身をおとし、アル中で情緒不安定。
悪口辞典を編纂したいと言っていた学者の娘は、整形を繰り返し不自然な顔ながら教養あるブルジョアミセスに変貌。そして夫に浮気疑惑あり。
歯科医の娘は、いまや小さなアパートで義理の母にいじめられながら不自由な暮らしをおくっています。
クールで無口な美少女、スジは、ある理由から最初ナミを避けていましたが、やがて、屋台で泣きながら酒を酌み交わす(?!)仲になります。

メンバー探しのなか、このスジが、なかなか見つからない…。25年前、メンバーがあえなくなった原因だったスジは今どうしているのか。…

日本版よりメンバーの人数は多いのかしら?ちょっと人数が多すぎてキャラを深く描き切れていない子もいるけど、韓国社会ならではの勝ち組負け組、さまざまな成人女性の姿を見せてくれます。みなそれなりに個性的なメンバーたちです。

日本版は90年代が舞台のようです。自分はその頃はもう社会人なりたてだったから「高校時代は遠くなりにけり」だったけど、外まきながら観てきた時代だけになんとなくイメージだできる。韓国版は、挿入歌を聞くとシンディ・ローパーや、ソフィー・マルソーとか「ラ・ブーム」とか(韓国歌謡曲はよくわからなかったけど)韓国版サニーは、たぶんわたしの中高時代と、かぶる年頃だと思うのですが、すぐ隣の国で同じ時代を生きた少女たちの生態がとても興味深かったです。お化粧とか恋とかファッションとか文化祭とか…痛々しくも全力投球な点は、たぶん共感できる。ダサくても要領悪くても、くだらないことに一生懸命なんです、あのころは。それは変わらない。

しかし、これは想像できなかった、すぐに殴り合いのケンカをする女子高生。飛び蹴りする女子高生。携帯もスマホもSNSも、もちろん裏サイトなんかもない。しかし素手殴りや角材やカチコミはある。流血はさすがに、ね(ナイとはいってません)だからわかりやすくケンカするし、仲間のために復讐する。そんな彼女たちが、次は何をしでかすやら分からなくて、ハラハラするし目が離せなくて面白かった。

時代的に街頭デモに混ざってライバルチームにタイマン勝負かけるシーンや、ナミやメンバーの兄貴が学生運動に参加していたり、音楽喫茶で初恋に落ちる(笑)など日本の70年代か?と見えるシーンも。(あの街頭デモの舞台は明洞市街でしょうか)


ラストは涙涙というより、ちょっとご都合主義にまとまりすぎだけど、病院の個室で孤独に死をまつチュナの素性、というか彼女が生きた25年間がはじめて明かされた気がします。高校時代も現代も、チュナは自分のことより仲間のことを心配してばかりの姉御肌。日本よりも男社会の当時の韓国で、必死で働き、生き抜き、勝ちをつかんできたハンサムウーマンの、急ぎすぎだけど、高校時代はそのままのかっこいい生き様が垣間見えた気がします。

喪服を脱ぎ捨てておばさんたちが歌い踊る「サニー」、かっこいい?いや、かっこいいというより、ものすごい突き抜けた爽快感があった。いろいろあったけど、この先もいろいろあるだろうけど、7人そろえばこの通り!って感じ。

ほんとの涙、涙は、その手前。チュナがナミにわたしたDVD。
夢を語る田舎娘のナミをはじめ、夢の詰まった全身いっぱい使って元気に踊ってた女子高生たちの姿でした。

時代や国が違っても、いや、より厳しい社会に生きるこの子たちだからこそ、とても眩しくてそして切ない気持ちになりました。

エンドロールも泣けたなぁ。画家になりたかったナミの絵なのかな?オリジナルのシンディ・ローパー版ではないけど「タイムアフタータイム」がジーンと心にしみます。

ところで、いまの女子高生はもっと個人主義なのかなぁ。趣味は嗜好も多様化してるっていうし。この映画や、日本版の90年代女子高生をみてどう思うんでしょう。ムスメいわく「陰キャ」と「ウェイ」の二極はあるけど、それ以外もたくさんいる。そしてお互い世界が違いすぎて対立なんかしない、とのこと。そしてこの映画のようにグループ単位で行動し、派手な言動で、騒いだり踊ったりキラキラ生きているのは主に「ウェイ」。なるほどねー、確かに、私の年になっても、やっぱり同窓会を企画して、今も変わらぬ行動力で誘ってきてくれるのは、当時の最先端「ウェイ」な子たちだなぁ。そういえば。


笑ったのが、導入部分の病院のシーン。ナミの母が入院している大部屋でおばちゃんたちが1台のテレビで韓流ドラマをみているのですが。
テレビ「実は血がつながっている兄妹だったのです(ババーン!)」
おばちゃんたちいっせいに「ほらねー」「またかよー」
やっぱり韓国国内でも韓流メロドラマってそう映っているのか。
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