「好きな人、愛するのは自然でしょ。
それなのに、一度結婚したら許されない。夫以外の人愛したら、途端に不倫だとか、ふしだらだとか言われてしまう。途中で気持ちが変わることだってあるでしょ?」
私は、彼女の言ってることもわかる気がするけど、逆にまったく納得できない人、嫌悪感を抱く人は、そもそも見ない方がいいかもしれませんね。
まぁ、そういう映画ですからね。
私がいいと思った点はまず、役所広司と黒木瞳の感情を押さえた大人の風格。
それでいて、セックスの時は感情剥き出し。
この緩急がいいですね。
鴨とクレソンの鍋を食べる時の二人の口元のアップ。エロい。
肉体的なエロスと対照的に、バックで襖の隙間からちらつく雪が芸術的。
音楽も秀逸。
脇を固める寺尾聰、平泉成の中年ぶりもカッコいい。
「夏果てて秋の来るにはあらず」
つまり、夏が終わってから急に秋が来るのではなく、夏の間にも既に秋の気配は作り出されている、という徒然草の引用が作品中にもありました。
何かが始まるとき、何かが起こるとき、実はそれは急に訪れるアクシデントなどではなく、気づかない内にも既に醸成されてしまっているものなのだ。
恋愛や不倫もそうなのだろうか?
運命のいたずら、などではなく、イケナイ恋に落ちてしまう要素は、そのずっと前からその人の日常生活の中で作られてしまっている。
果たしてそうなのか?
また、本作はただ不倫するだけでなく、中年男たちの生き様も描かれている。
仕事とは?
恋とは?
家庭とは?
人生とは?
己の役割は何なのか?
今の価値観とは違うかもしれないが、通ずるところもある。
そして今、
50を過ぎたおやじ達が、それぞれの人生に結論をだす。
公開:1997年(日)
監督:森田芳光(『家族ゲーム』『の・ようなもの』)
出演:役所広司、黒木瞳、寺尾聰
音楽:大島ミチル
受賞:日アカデミー賞最優秀主演女優賞(黒木瞳)、キネマ旬報主演男優賞(役所広司)など。