このレビューはコチラの記事とセットになってます ・サフディ兄弟『The Pleasure of Being Robbed』移ろいゆく世界の観察者たちよ https://note.com/knightofodessa/n/n9838c894006e
宣伝失礼しました。以下、本編。 [父への愛憎は天に昇る] 90点
大傑作。『Go Get Some Rosemary』という別の題名も付けられているサフディ兄弟の監督二作目。映画の中ではそっちになっているので、"あしながおじさん"という題名のほうが後から付けられた…のか?映画は34歳になる映像技師のレニーが、別れた妻に付いていった子供たちを数週間引き取るところから始まる。彼は父親というよりも年長の友人として振る舞い、それは子供たち以上に子供のようだ。ガキっぽいということではなく、子供のように好奇心旺盛。そう、『The Pleasure of Being Robbed』に出てきたエレノアのように。そして、エレノアを演じたエレノア・ヘンドリクスは本作品にもレニーの恋人としてカムバックする。姉妹編と言っても差し支えない。ザラザラのフィルム画質で捉えられる寒々しいニューヨークもそのままに、バーで出会った女性と一緒に子供も連れて郊外に行くシーンなんか、完全に前作のボストン行きのシーンと重なってしまうし、しょうもない犯罪で逮捕される展開まで似ている。シロクマに代わって登場する巨大な蚊も不気味そのもの。下手ウマなトランペットの音色が染み渡るようなニューヨークの寒空もそのままである。
異なる点を挙げるとするならば、主人公が三倍に膨れ上がったことか。子供たちはお世辞にも行儀がいいとも言えないが、それ以上に父親も悪ガキがそのままある程度の責任感を持って成長したようで、父親と親友の両面を持った人物と言える。その点、ある意味無責任に窃盗を繰り返していた前作のエレノアより人間味がある。また、映像技師としての仕事には真摯に向き合っており、この手のちゃらんぽらんな父親にしては珍しく勤務態度は真面目そのもの。恐らく『赤ちゃん教育 (Bringing Up Baby)』らしきケイリー・グラントが何度も映像の中で言及されるのは、彼が映像技師であることに加え、悪ガキ二人(baby)を育て(bring up)ようとするレニーの悪戦苦闘にまで言及しようとしているのかもしれない。
原題が2つあるんですね。 『Daddy-Longlegs』→邦題は文学作品と同じ『あしながおじさん』(原題 Daddy-Long-Legs)になってますが、内容も関係ないので誤訳では? Daddy-Longlegsはザトウムシという足の長いクモみたいな虫のことらしく、この虫に似た?、自然史博物館で見学した巨大な蚊と絡めているのか? レニーは特に脚が長いわけではないですが、衝動的に駆けずり回って、脚がこんがらがっちゃってる(ように息子たちから見えた?)なのか。。 『Go Get Some Rosemary』の方は、二人の息子に買い物メモを渡してスーパーに買い物に行かせるシーンで、リストにあるローズマリーが出てきます。実際の思い出なのかも知れません。