
ミニシアターに勤める恵理は、子供を持たず、夫の史也とふたりきりで生活している。生まれてくる誰かの父と母になるのではなく、一生を互いの夫と妻であり続けようと決めたのだ。朝早く出勤する恵理のために史也はコーヒーを淹れ、夜遅く帰宅する史也のために恵理は温かい食事を作る。職場の苦手な上司のこと、愛犬の去勢手術、すくすくと育つベランダのゴーヤ、美しく咲いた朝顔の花、懐かしい母の訪問、友人の突然の死。喜びも悲しみも、恵理は史也と共有しようとする。毎日がゆっくりと積もるように重なり、層を成してゆく。そして、ある事態が、静かに、でも確実に、ふたりの当たり前だった日常にさざ波を起こす。特別ではない些細な日常をみつめ、人と人の関わりのなかに生まれる温かみや、ふとした瞬間に感じる孤独や不安を微細に描きだす。スクリーンに映しだされる夫婦の姿に、わたしたちの毎日が重なり合う。
戦争未亡人の春子は、熱海の旅館で働いている。敗戦後の混乱のなかで彼女は歌子と清一という二人の子供を抱え、かつぎ屋や怪しげな女としての商売までやらねば生きていけない。おまけに唯一の財産だった…
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