正直なところ、30 Seconds to Mars(30STM)はあまり好きではないバンドだった。というのも、役者と歌手の両立なんて不可能だと思っていたからだ。そんな折、何の前情報もなくレコード店で『This Is War』の何十種類もの人の顔のアートワークが目に留まり、試聴するやいなや、すぐに購入に至った(私が購入したのは虎のジャケット)。初めて聴いたとき、いつもと異なる出だしに、何か起こりそうな期待感が感じられ、Angels & Airwavesの1stアルバムを想起させた。そのため、ジャレッド・レトはうだつの上がらない役者の道を諦め、これからは音楽でいくのだと思ったほどだった。 このドキュメンタリーを見て、作品に溢れる力強さの意味がようやく理解できた。レコード会社がアーティストを契約で縛り、搾取するシステム。多額の負債を突きつけられた訴訟問題に立ち向かう彼らの崖っぷちのどん底ぶりが赤裸々に記録されていた。本物の芸術と商業の両立はほぼ不可能だと思う。しかし、作品を生み出し、世に広める手段として、多方面でコストがかかる。そのグレーゾーンに一石を投じた彼らの姿勢は評価に値する。 役者としてのジャレッド・レトは、『ファイト・クラブ』や『アレキサンダー』の印象が強かったが、近作の『ダラス・バイヤーズ・クラブ』での演技は圧巻だった。『スーサイド・スクワッド』のジョーカー役も期待している。もちろん、30STMの活動も。