このドキュメンタリーは、日本人が食とどう向き合ってきたのか、その歴史と風土を、根源から見つめ直そうとした作品です。行き着いたのが「だし」「しょうゆ」という2つのキーワード。 「だし」 「だし」は、雄大な自然から“うまみ”を抽出したもの。仏教の肉食禁止のもと日本人は肉に代わる“うまみ”を探し、カツオ節、昆布、干しシイタケを得ました。これらが一般化するのは江戸時代に入ってからの 17 世紀。いわば「食の革命」ともいうべきものでした。 この「食の革命」を追体験しながら、自然と日本人との関係を見つめます。 また「だし」をめぐる最新の食品科学の知見は、「だし」がいかに健康によく理にかなっているかを明らかにしており、「だし」を大切にすることが「和食」を守ることにつながることを教えています。 「しょうゆ」 「だし」が日本人と大自然との関係を描くのに対し、「しょうゆ」は日本人と「目に見えない自然」(ミクロの世界)との長く深い関係を見つめました。それは「カビ」による和食創成のドラマ。和食の“うまみ”がつまった調味料(しょうゆ・さけ・みりん・みそ)は、1種類のカビによって作られるのです。特撮を駆使したミクロの映像で、千年にわたって磨かれた職人たちの知恵を浮かび上がらせます。 この作品に登場するのは、北海道の昆布漁の家族、九州の焼畑農家、鰹節・醤油・日本酒作りの職人たち、発酵のカギを握る商い“もやし屋”、禅寺で作られる精進料理、京都の料亭、そして赤ちゃんの初めての離乳食を鰹だしで作る母親 ― 。 観終わったあとは、ふだん何気なく口にしている和食が、まったく別の、愛おしいものに見えてくることでしょう。
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