2003年　イラン　監督はアスガー・ファルハディ
監督の長編デビュー作。

　「彼女が消えた砂浜」以前の三作品は観れないと思っていたら、ひょんなことからフォローしている「マトリ」さんから情報を頂いて、今日から観れることになった。
　早速、第1作から観始めたが、「彼女が消えた砂浜」以降の作品に比べると脚本はやっぱり落ち気がする。つまり制作を続ける中で、あの独特なスタイルが確立していったということか。

（独特のスタイルと書いたが、たまたま私が観た期間の作品がそうであって、また違ったものをこれから見せてくれのかも知らないが。）

日常の些細な出来事が次第に複雑に絡まり、人生そのものを根底から揺るがすような大きな事件になっていく後年のスタイルの萌芽が観られはするが、まだそのスタイルは確立していない気がする。
何作目からそんな作品になるのか楽しみだ。

主人公の青年ナザレは、レイハネに一目惚れして結婚するが、ある事情で周りから離婚を迫られ、愛しているにもかかわらず離婚してしまう。彼は慰謝料を払うため砂漠での危険な毒蛇捕獲の仕事を始めることになるが…。

前半の結婚までのいきさつを、短いカットを重ねて、短時間で彼らのラブストーリーを描く才は、さすがファルファディだ。しかも青年の個性もしっかり描かれている。

現代においても、こんなに愛し合っているのに周りに離婚させられるイランの社会は、やっぱり理解できない部分があるということか。

後半、彼を砂漠に連れて行った無口なおじさんが何やら訳ありだと思ったら、それなりの人だった。これは観てのお楽しみ。
このおじさんとナザレのやり取りが特に面白い。

2022.12.23視聴-558

• #ファルハディを観る

アスガー･ファルハディ監督長編デビュー作。
そして遂にコンプリート！

毎度の事ながらイランのお国事情に新鮮な驚きを感じる。今作では結婚(離婚)事情とお仕事事情。
デビュー作らしい？迷走感がなんだか微笑ましい。←既に上から目線。笑

何かと子供じみた主人公の行動に終始苛立ちを覚えるも、脱獄囚とのちょっとしたロードムービー的な心の交流には引き込まれる。
なかなか台詞を吐かない脱獄囚の味のある演技と哀愁めいたものには魅力を感じたりも。

いや～ふたつ並んだビンの中味はなかなかのホラーだったなぁ…

ファルハディ監督作品にしては平均スコアの低さが気になってたけれど、後の作品に通じるショット達や世界観はちゃんと感じられた。ただし、鑑賞後のモヤり味の弱さは物足りなかった。
もっとも、プロットよりも何よりもあの爬虫類の存在が大丈夫か否かが評価の分かれ目なのかも…？

私はギリギリ大丈夫だった。

イランのアスガー・ファルハディ監督のデビュー作。
愛する妻と離婚させられた青年と毒蛇取りの老人との交流を描いたヒューマン・ドラマ。
原題／Raghs dar ghobar
制作年／2003(2003)

愛する恋人のレイハネ(バラン・コサリ)と結婚したものの、彼女の母親が売春婦だという噂のために、自分の意思に反して離婚せられたナザル(ユーセフ・ゴダパラスト)。
"結婚ローン"と"離婚慰謝料"の支払いができず、保証人が職場に取り立てに来ため、そこに偶然居合わせた毒蛇取りの老人(ファラマルズ・ガビリアン)の車に隠れて逃走。仕事も失う。
老人の車は毒蛇のいる人影のない砂漠に停車。
過去に人を殺したことがあるらしい不気味な老人は、彼を邪険に扱かう。
やがて、毒蛇を捕まえる道具を貸してもらったナザルは、実入りはいいが危険な捕獲作業をやってみる…。

老人の"財産"と"写真"

結婚するにしても離婚するにしても莫大な金がかかるイラン社会。
終盤、老人が過去を語るあたりからラストまでが作品の見どころ。
老人を演じたファラマルズ・ガビリアンが渋い演技をみせる。