あまのかぐや

ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

寒い日には「これよりはまし!」「これに比べたらこんな寒さはなんてことなない!」って思いながら、寒い映画を観て暖をとる。

この映画公開のあたりに、ハリウッド版スペクタクル映画「エベレスト3D」とか、クリパの「ブリザード」とか、邦画でも岡田准一の「エヴェレスト」とか「類似品注意」な映画がいろいろ公開された中に、こんな韓国産映画があったとは。…山映画はそんなに得意なジャンルではないわたしは、これはファン・ジョンミン映画としてセレクト。

名作「新しき世界」の愛すべきチンピラから最近では、踊る祈祷師や極悪市長など、ちょっと他に類をみない個性的な演技に魅了されています。今回のジョンミンは実在の韓国の登山界レジェンド役。カリスマ隊長、オム・ホンギル。ジョンミンを見るとつい「兄貴」といいたくなるのですが、今回の役は劇中でも「兄貴」と呼ばれています。みんなの兄貴。男も惚れる頼れる兄貴。

カリスマ隊長のサバイバル譚かとおもいきや、同じボリュームで主役級の愛弟子、ムテクの愛すべき存在感が光る。この二人あってのドラマ。

前半は大邱出身のムテクがホンギルの隊に入り、絆をふかめあいその後二人であちこちの世界最高峰を制覇していく話。韓国映画らしい、べたで人情味あって、かっこわるさと、ある意味乱暴さもあって…(ここまで書いてるけど褒めてます。こんなところが韓国映画の好きな部分です)。

そして、後半は。ガラッと空気がかわる。足の古傷のため登山家の道を断念し、大学の助教授におさまったレジェンドに代わり、愛弟子ムテクが隊を率いてエベレストを目指すことになる。


と思う間にムテクが遭難、そして死。

ここ、テンポ早い!

なぜなら、その先、山に置き去りになっているムテクの遺体捜索のために、引退したはずのホンギル隊長が再度、隊を率いて山を目指すという第二部が控えているのです。

前半の軽妙な味わいの物語があったからこそ、愛すべき後輩ムテクを探し、無謀な計画に挑む隊長に感情移入できる。

とはいうものの、心の中では「やめようよ」「戻ろうよ」「あきらめようよ」「かわいそうだけど」とずーっとつぶやいてた。

まだひよっこだったムテクが「エベレストを制圧してやる!」と息巻くときにいさめるホンギル隊長の「山に敬意を」「人間は、神様の域に少しだけいさせてもらうだけなんだから」というのがな。とてもわかる。東洋ならではの思考なのでしょうか。そうそうそうそう、だから人間は気軽に手をだしてはいけない。選ばれた一部の人間が、さらに敬虔な気持ちをもって臨まくてはいけない域なのよ。
険しい雪山での雪崩や落石、さらに凍傷などなど、ここまでしてのぼっておりる行為についていけなくて、さらには極限状態の疲労と睡魔と戦う一夜に耐える姿に打ちのめされた果てに、遠くに登る太陽に照らされた山肌をみるとき、まさに「神に感謝」な気持ちになる。ホンギル隊長の言葉そのもの神々しさがありました。山に登る気なんかさらさらないけど、こうして決死の踏破した人の経験談から映像化してその片鱗をみせていただくだけでじゅうぶん、手を合わせたくなるほどありがたい。


「いやそれ無理」「いやそれ違うから」で頭がいっぱいの常人と、山を愛するストイックな登山家では決定的な意識の差があるので、最後にまとめるならひとこと。「ジョンミン兄貴、惚れてまうやろー!!!」の叫びで締めさせていただきます。
あまのかぐや

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