「トンネル 闇に鎖された男」
原題「Tunnel」
2017/5/13公開 韓国作品 2017-150

2016年韓国映画興行成績ランキングにおいて、少ないスクリーン数にもかかわらず「新感染ファイナル・エクスプレス」「華麗なるリベンジ」「密偵」に次ぐ第4位にランクイン。韓国でメガヒット作品という事で鑑賞。
韓国を代表するキャストが集結、なかなか見ごたえのあるパニック作品です。
トンネル事故で身動きが取れない状況をカメラワークを駆使する事で飽きない映像にしてるところが秀逸で刻々と変わっていく状況にハラハラします。そして韓国作品ならではの政府批判もチクリ。
先ほどの「新感染ファイナル・エクスプレス」には及ばないかもしれませんが本当韓国作品のレベルは凄いですね！！

崩落したトンネルの中にひとり閉じ込められた男と、男の救助をめぐって奮闘する人々の姿を描き、韓国で700万人を超える動員を記録したヒット作。ハ・ジョンウ、ぺ・ドゥナ、オ・ダルス出演。

記録。
圧倒的絶望感。

車ごと崩落したトンネル内に閉じ込められる…。ハ・ジョンウ主演の本作は絶望視される生存を決して諦めない人間たちの物語だ。

2012年にはここ日本でも中央自動車道笠子トンネルで似たような事故が発生、9名の尊い人命が犠牲になった。本作は韓国映画だが、韓国といえば2014年のセウォル号沈没事故も忘れ難い。いずれも逃げ場のない空間に閉じ込められた人々の絶望と、人災の側面を持つ事故原因にはやるせない感情を禁じ得ない。

本作はフィクションだが、トンネル崩落事故に巻き込まれた、ハ・ジョンウ演じるジョンスの危機的状況に、観てるこちら側も思わず狼狽してしまう。スマホのバッテリー残量は78%と心許なく、水分はペットボトルの水2本。食料は誕生日を迎える娘の為に購入したケーキのみ。車体は見るも無惨にひしゃげている。果たしてジョンスは無事助かるのだろうか…。

主演のハ・ジョンウは勿論のこと、脇を固めるキャストの演技が素晴らしい作品。

決して救出を諦めない救助隊隊長役のオ・ダルスは、他作では個性的な役柄が印象深かったのだけど、本作では割とストレートにカッコいい。悲惨な状況の中でも曲がりない信念に従う男を好演。

夫の生存を信じ、何か力になれないかと救助隊の食事の準備などを買って出るジョンスの妻役はペ・ドゥナ。ある意味ジョンス以上に悲惨な心情であるはずの彼女の健気さには心を動かされるはず。ちなみにこの役柄の表現のためにペ・ドゥナはノーメイクで撮影に挑んだそうだ。それでも充分綺麗なのは流石。

…人災が招いた悲劇を描く本作だけに、終盤のとあるセリフは痛快。もう事故や事件なんてフィクションの中だけで充分だ。

⚪概要とあらすじ
『最後まで行く』などのキム・ソンフンがメガホンを取ったディザスタームービー。

無事に大きな契約を済ませ、妻セヒョン（ペ・ドゥナ）と娘の待つ自宅へと車で帰ろうとしていた自動車ディーラーのジョンス（ハ・ジョンウ）。だが、山中のトンネルに入ったところで崩落事故に巻き込まれて車ごと生き埋めになってしまう。目覚めるとがれきに囲まれており、手元には水のペットボトル2本、誕生日を迎えた娘に買ったケーキ、バッテリー充電が78パーセントの携帯電話のみ。一方、トンネルの外ではレスキュー隊を率いるキム（オ・ダルス）らが救助に取り掛かるが…。

⚪キャッチコピーとセリフ
“全長1.9kmの暗窟。手元にあるものは 残量78％の携帯電話 水のペットボトル2本 そして、娘への誕生日ケーキ。”

｢頑張って生きてよ お願い｣

⚪感想
人間の汚い部分や美しい部分、本性と細かな心情が描かれたサバイバル作品。

『ハウ・トゥ・エスケイプ？』とは比にならないぐらい良くできている。
実話かと思うくらい生々しい。

ハ・ジョンウ、ペ・ドゥナは演技派だし、オ・ダルスの演技も良かった。
ハ・ジョンウはいつも顔は同じなのに役が違うと全くの別人に見える。ペ・ドゥナはこういう役が多いからか変化はあまりないかも。

主に6つの視点。
事故に巻き込まれたジョンス。
ジョンスの奥さんであるセヒョン。
レスキュー隊を率いるキム。
報道陣。
政府関係者。
一般人。

30分でお腹いっぱい。
1時間でしんどすぎて無理。
1時間半でつらいつらい。
2時間でほぼ無。

メインの3人以外基本ムカつく奴らしかいないわけで。でも実際にこういう事故が起きたら関係者でなければ同情はするけど、時間が経てば飽きたり、忘れられるんだろうなと。最初は｢早く助かって欲しい｣とか思っていても、時が経てば｢まだやっているのか｣｢もう死んでいるだろう｣って結構なんじゃないかな。ニュースとか見ていても行方不明とか大体そうだし。心配してもやっぱり他人事。
また、長い時間が経っても生きていて助かれば美談にされる。そして他人事だった人も｢助かってよかった｣とか｢最近心配してたんだよな｣とか都合のいい言葉を吐く。
私もその分類だからメインの3人以外を責められない。

ジョンスが本当に心優しい人物で常に心が痛くなった。そんなに優しくしなくたっていいのにって。

周囲の少しの共感と配慮があればなと何回も思った。
自分や家族がジョンスの立場に置かれたら全く考え方が変わるはず。

ほぼ密閉空間だけど息苦しくて観づらいということはなかった。

サバイバルと人間ドラマの程よい中間。

車ってどのぐらいの重さまで耐えてぺちゃんこにならないのだろうか。



⚪以下ネタバレ



誕生日に子供が犬を欲しがっていたからトンネルで登場したパグを飼うのかと。
最後の方でペットショップみたいなところにいたのがそのワンちゃんで、娘がそれを見ていたのかなんだかよく分からず少し残念。

ジョンスが水やケーキを考えて飲み食いしていたのに同じく事故に巻き込まれた女性と犬が登場したことによって両方ともなくなってしまうのが複雑だった。ジョンスは携帯も貸してあげるし、水もあげるし。ケーキは犬に食べられてしまうけど怒って手を出したりはしない。途中ドックフードが見つかっても独占せず犬にもあげる優しさ。

奥さんがずっとジョンスの帰りを待っているのを見て凄く強い素敵な女性だと思った。
救助の中で1人死んでしまってその母親から責められても謝るし、トンネルの開発を再開して耐える。私だったらおかしくなってしまいそう。
トンネルの救助の事故で死んでしまった男性の母親は可哀想だけど責めるべきなのはそこじゃない。
ジョンスが｢もう無理だ｣と言った時に｢死になさい｣｢私も娘も死ぬ｣｢お願い｣｢生きて｣と伝えるシーンが良かったし、ラジオで救助活動が中止され、もし生きていたらごめんなさいと伝えるシーンも良かった。

レスキュー隊のリーダーであるキムは最初はダメな人なのかと思いきや、ちゃんとアドバイスをくれるし、最後までジョンスが生きていることを信じてくれていたのが良かった。尿も自分で飲んでみていたし。

｢最高記録が〜｣とかいう報道陣や最後に｢大切な命が〜｣と言っていたおばはんは不快でしかない。やっぱり自分の命、自分の名誉が大事なわけで。
おばはんの手のひら返し強いし最後の最後にヘリに乗ろうとしてくる傲慢さよ。

同じトンネル崩落に巻き込まれた女性はニュースでは取り上げられなくてちょっと残念。ごちゃごちゃしちゃうけどジョンスしかいない扱いになっていた気が。
ジョンスが他にも居るってメッセージを送っていたのはなんだったのか。あの子は母親にも電話していたわけで。

人は水があればかなり生きられるらしいが35日となるとどうなんだろう。自分の尿と岩の間の針金みたいなところから出ていた水を飲んでいたってことでいいのかな。でも途中崩れたから何も無いのか。ドックフードはとれたのか。
後半にジョンスと犬の食事のシーンがもう少しあってもわかりやすいかな。

以外ストーリー。
ガソリンを入れた帰りにトンネルの崩落事故に巻き込まれたジョンス。何とか携帯は繋がるも救助はかなりの時間がかかることが分かった。食べ物はガソリンスタンドで貰った水2本と娘の誕生日のために買ったケーキのみ。何とか食いつなぐも、自分と同じく事故に巻き込まれた女性と犬によってなくなってしまう。さらにその女性も長時間岩に挟まれていたことによって死んでしまう。救助隊は穴を掘るも場所を間違える。長い時間が経ち希望がなくなり、救助隊の1人が過って亡くなったことから作業の中止と近くのトンネル開発が再開される。それでも希望を捨てなかったキムが調べに行くと音がすることに気づく。それにより作業が再開されジョンスは無事助け出される。
最後は退院して奥さんが運転する車に、トンネルで怯えるも奥さんが手を繋ぎ難なく通過。

⚪鑑賞
GYAO!で鑑賞(字幕)。

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