minorufuku

修道士は沈黙するのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

修道士は沈黙する(2016年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

世界経済の今後を左右するG8の財務相会議がドイツで開かれる。その中心人物であるIMFの専務理事の意向で、ゲストとしてロックミュージシャン、絵本作家、そして修道士の3名が招かれる。会議の前夜、専務理事は修道士を自室に呼んで告解(罪の告白)を行う。その翌朝専務理事は死体で発見される。死の原因や会議の決議に関わる内容が告解に含まれていたものと予測され、修道士の事情聴取が行われる。しかし彼は戒律を理由に沈黙を貫くのだが…という話。イタリア映画。

経済界の政治ドラマに宗教観や哲学的な要素を絡めた、一風変わったサスペンス作品。
とにかく登場人物の対話のほとんどが専門用語か、抽象的な哲学問答か、シニカルなジョークばなりなので、最初は話の流れを追うのが大変。だが、話の仕組み自体はシンプルで、一部の先進国の一部の人間たちが世界を牛耳り、他の国家の命運を握っているかのように考えてる輩を痛烈に皮肉った内容となっている。財務相会議での決議案については作中でそれほど具体的には語られていないが、要は経済的に上位にいる強国が生き残り、弱い立場の国々が淘汰されるような決議と思われる。その会議の前夜に専務理事が、財務相たちの後ろ暗い部分や決議そのものをひっくり返すような事実を修道士に告白したらしく、各国の要人たちが慌てふためく様子が滑稽に映る。そして主人公の修道士も清廉潔白な聖人というわけではなく、無表情で何を考えてるか分からない人物なのも面白い。映像的には奇妙な角度のアングルや色んなものの隙間からの撮影が独特だった。
通常の時間軸に、告解の回想シーンを小出しに挿入する構成が上手かった。最後に修道士が開示する秘密によって迎える結末が意外性もあって驚かされた。修道士が元◯◯なのは少しご都合主義と思ったけれど。あと、専務理事の葬儀のあとの展開はかなりファンタジーで、そのことでこのお話自体が寓話めいた意味合いの作品なのかもと感じた。

この会議、現実なら日本から麻生さんが参加してるんだよなあ…
minorufuku

minorufuku