あまのかぐや

ザ・キングのあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・キング(2017年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

うわあ、思ってた内容と違った。くっそおもしろい、なにこれ!

田舎の詐欺師の息子が自分の父をはたく検事をみて「検事になったる!」と思うところからスタート。喧嘩に明け暮れてたチンピラがスラムのガキからKINGを目指すじゃないけど勉強してソウル大学入って司法試験に通って。「てっぺんとったるぜ」という成り上がりギラギラストーリー。

オープニングの80年代以降の変遷VTRのがちゃがちゃ編集映像からして、ダサさから一周まわってクールな映像と音楽で彩った快作。すき。

主人公のテス(インソン)が、当初志していた正義の検事から、やがて臭いものには無理やりふたをすることを学び、最高検事に見初められ中央に呼ばれる。政権のアップダウンによって浮き沈みを余儀なくされる木端検事。しっぽ切りで地方に飛ばされたのあとの、やられたらやり返せも痛快。

つか、この「やり返せ」が本筋。上る、落ちる、そしてすべてを覆すという、ちょっとラストはとってつけたような、できすぎな感もありますが。

私の中の韓国俳優ネームバリューから、ウソン目当てで手に取った本作で、中央で繰り広げられるギラギラパートに目を奪われがちでしたが、とんだ伏兵がいたものです。テスとジョンヨルの田舎時代から続く友情物語に心を撃ち抜かれました。汚れ仕事は俺がやる。おまえは中央で偉くなれ、って。おおおジョンヨル…おまえってやつは。

顔もスタイルもよすぎて、しかも検事の最高峰エリートの役なんて「この人どういじったら?」とどうも好きになれなかったウソンさん。かっこいいままおもしろいという、こりゃファンになっちゃうよねー。バブリィなカラオケシーン、無駄にキレのあるダンスシーンは、ことあるごとにわたしの脳内でリピートされています(応援上映やったら楽しいね、これ)

韓国の現代史を背景にくるくると変わる政権。韓国は政権変わるたびに前政権のあれこれが暴露され断罪されるから、なかったことにして上書きしてしまうよりはまだ健全なんかなぁ(遠い目)

その背後には、醜聞を数多おさえ、キムチのように熟成させ頃合いを測って放つ、大統領さえコマとみる中央検事という存在があったのでした、という話。こわいこわい。

「国際市場で会いましょう」みたいな近代史ものを観て、ちょっと韓国史を知りたくなったなぁと思ったら、今度はもっと近い近代。「タクシー運転手」も今公開中の「1987」も気になってます。地理も心も近いけど遠いような、そして他の世界のどこよりも似たような違うような…国自体もそうだけど、その歴史となればさらに興味深い。

それでも政治臭ぷんぷんではなく、うまくエンタメにしあげているところが痛快なのでしょう。近年の邦画のような「日本中心」「我が国最高」と涙と美談をもってしむける方が、嘘臭く感じてしまう。
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