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ビューティフル・デイの小のネタバレレビュー・内容・結末

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

これは解説必要系の映画かな。レイトであっさり寝落ち。音が印象的だったものの、内容はほぼ入ってこなかった。断片的に覚えている感じでは面白いという気がしなかったから迷ったけれど、もう一度観た。言いたいことがわかるようなわからないような…。最近、疲れと加齢で頭が…、と言い訳。

ということでググって見つけたリン・ラムジー監督のインタビュー記事を読んで、なるほどな、と。世界は不確実であり、善悪は単純に決まらないということが監督の世界観らしい。故にかどうかはわからないけれど、監督は次のように話している(これ以降、ネタバレ)。
(https://i-d.vice.com/jp/article/9k8kev/beautiful-day-director-lynne-ramsay-interview)

<これは、男がやって来て少女を救うという映画じゃない。全く逆に、彼女が男に人生を取り戻してやった映画なんです。>

さらに面白いと思ったのが、次の話。

<あのエンディングは原作になかったもの。私が別のことをしているとき……、あれは確か土曜日の午後にカフェにいてチェスか何かをしている間にふと脚本のことが頭をかすめて、そこで思いついたのだと思う。それが何を意味するのか私には分からなかったけど、全くノーマルなアイデアじゃなくて、それがとても面白いと感じたわ。ホアキンも同意見だった。だから、とにかくそのアイデアからスタートして、すべてをその周囲に作り上げていった。そのせいで、この映画には沢山の解釈の余地があると思う。>

エンディングをふと思いつき、そこを目指して物語を作り込んでいったという。ここまでタネあかしされれば、鈍い自分でもこの物語が消化できようというもの。以下、私の普通(多分)の解釈を。

元軍人のジョーは幼少期に父親から受けた暴力と湾岸戦争によってトラウマを抱え、過去のフラッシュバックに悩まされ、自分を見失ってしまいそうになる。そこで、必要ならば力業も辞さない行方不明人捜索者として、少女たちを探し救うことで、自らの存在を確認し、自分自身を保っている。

ある時、ジョーは政治家の娘ニーナの捜索依頼を受ける。彼女を売春組織から救い出し、依頼主のニーナの父と待ち合わせしたホテルで待機していると、テレビでその父が自殺したことを知る。するとほどなく警察官が押し入ってきて、ニーナを拉致していく。一体世の中どうなっているんだ、と大混乱するジョー。

なんとか逃げ出し、仕事仲間に事情を聞きに向かったジョーだったが、彼らは襲われていて、襲撃者に自宅の住所がバレたことを知る。自宅に戻ると母が既に殺されていた。ジョーが、家の中にいた2人の男を銃撃すると、1人が即死、もう1人は出血多量で死にかけながらも話すことはできたので、その男から事件の真相を聞き出す。

するとあろうことか、黒幕は少女趣味の知事であることを知り、ニーナの父は保身のために娘を差し出したものの、罪悪感に苛まれていたらしいことを理解する。

母親の喪失に加え、何が善で何が悪かもわからないぐちゃぐちゃな現実を目の当たりにしたジョーの精神は崩壊寸前。母親の亡骸と一緒に水中に沈んで死のうとするものの、ニーナのことが脳裏をよぎり、何かにとりつかれたかのように彼女を助けに向かう。

かつて、父親の暴力の道具だったハンマーを片手に売春宿に忍び込み、ボディガードを1人、また1人と倒していくジョー。いよいよ知事とニーナのいる部屋にたどり着くと、なんと知事は喉元を切られ死んでいた。

物音のするダイニングに向かったジョーはそこで何事もなかったかのように平然と食事をしているニーナを見て呆然とする。

場面が変わって、問題のカフェでのエンディング。少女を救うことでどうにか生きてきたジョーは、自分が存在する唯一の理由となった「ニーナを自らの手で救うこと」が達成できず、完全に自己を喪失、“You Were Never Really Here(あなたは本当にはここにいなかった)”状態となり、ニーナがトイレに立つ間に、壊れてしまう。

しかし、そんなジョーと同じように、酷い精神的苦痛を受けたはずのニーナは戻ってくるとこともなげに言う。“Let's go. It’s a beautiful day.(さあ行きましょう、いい天気だよ。)”

屈強だけど、ガラスのようにもろいジョーは、超然と動じず特別なことは何もないと思っているかのようなニーナに<人生を取り戻して>もらう。

善悪は判然としない、少女が弱くて軍人が強いとは限らない、世界は不確実である。

●物語(50%×4.0):2.00
・監督インタビューを読んで、ようやく納得できて何ですが、ナカナカ面白いじゃないかと。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・いろいろ意味が隠されていそうな雰囲気あり。ホアキン・フェニックス、観てるとこっちまで落ち着かない気分になってくるかも。

●画、音、音楽(20%×4.5):0.90
・音がやたらにでかく、不協和音で、気分良くなく印象に残るけれど、<地獄ではきっとこんな音が聞こえてくるのね!ってこと>(監督)らしいです。
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