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陽のあたる町の小のレビュー・感想・評価

陽のあたる町(2017年製作の映画)
4.0
2018年10月に岩波ホールで開催の「ジョージア映画祭」トリの作品。上映前、劇場の方が挨拶でとても素晴らしい作品であるようなことを話していたこともあり期待して観たのだけれど、静かで退屈な内容に前半かなりウトウト。

映画祭の資料には<炭鉱が寂れ、廃墟のようになった町に住む人たちの生活と夢を描く異色ドキュメンタリー。この作品の荘厳な世界は、あたかも人類の未来を映し出した黙示録のような趣がある。昨年、世界の映画祭で上映されて、高く評価された>とあるけれど、これじゃあなあ~というのが率直なところ。

で、感想を書くために舞台となっている「チアトゥラ」について調べてみると、俄然興味がわいてくるという。やっぱり映画は「知って観ると100倍面白い、観てから知っても100倍面白い」(by町山智浩氏)。

知ったところをまとめて書いてみると次のよう。

・19世紀にグルジアの詩人で貴族のアカキ・ツェレテリが創設。
・1879年からコーカサスにおけるマンガン採掘の中心地となり、第一次世界大戦当時、世界シェアの4~5割程度を占めるまでになった。
・ソ連時代でも工業の中心地。アメリカのハリマンという億万長者が巨額投資をして自らも住んだ。劇場、大学、コンサートホール、スタジアム、公園が建設され、世界初かつ最大の公共ロープウェイが設置された。

・1990年代、国営鉱山企業のチアトゥラマンガヌミが破産を宣言。1992年には電気、ガス、水道が崩壊状態となる。
・2004年になって電気は復旧したものの、ガスと水道は依然不通で、水は3~5日ごとに30分程度流れるくらい。飲料水は市内の噴水からの汲み取りで、比較的近代的な住宅、高層ビルまでも薪ストーブで暖をとっている。
・不便な生活から1989年に約3万人の人口は2002年には1万4000人と半減した。

廃墟マニアなら垂涎の場所で、ネット画像でみる老朽化したロープウェイが凄い。ジョージア人は、チアトゥラのことをバカにしているという話もあった。

というようなことを知ると<人類の未来を映し出した黙示録>という言葉が腑に落ちる。<人類と科学技術の大規模な挑戦が行われ、それが失敗に終わった>姿はこのようなものなのかと。

そのような状況でも、なんとかして人間の尊厳を保ちながら生きようとする人々が映し出されていたような気がする。

映画祭の資料にあった冒頭と最後のテロップ(トマーゾ・カンパネッラ「太陽の都」)を記録しておく。

【冒頭のテロップ】
全能の力をもって この世界を作りし方/その息吹はすべての生物と 人類に命を授ける/その方は限りなく 多様な世界を/我々 人間に与えた/全ての君主は 彼から力を得て/彼に似た姿を持つ

【最後のテロップ】
何も求めないから 彼らは豊かで/何も所有しないから 貧しい/そして それ故に彼らは状況の奴隷にならず/状況を有効に使うのだ

あらかじめ知識を得ていれば、もっと良く観れた気がするだけに残念。機会があったらまた観たい作品。
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