『楽園』映倫区分G
製作年2019年。上映時間129分。

吉田修一の短編集『犯罪小説集』を、『64 ロクヨン』の瀬々敬久監督が映画化サスペンス作品。
ベースとなったのは実際に起きた事件らしいですよ。

ある夏の日、青田に囲まれたY字路で少女誘拐事件が発生。
事件は解決されぬまま、直前まで被害者と一緒にいた親友・紡(杉咲花)は心に深い傷を負う。
それから12年後、かつてと同じY字路で再び少女が行方不明発生。
町営住宅で暮らす孤独な男・中村豪士豪士(綾野剛)が犯人として疑われる。
追い詰められた豪士は街へと逃れ、そこである行動に出る。
さらに1年後、Y字路に続く限界集落で愛犬と暮らす養蜂家の善次郎(佐藤浩市)は、村おこし事業を巡る話のこじれから村八分にされてしまう。
追い込まれた善次郎は、ある事件を起こす。

綾野剛、杉咲花、佐藤浩市ら豪華キャストが集結し、犯罪をめぐる喪失と再生を描き出す。。。

この映画でテーマの一つは
『スケープゴート』(集団内の不平や憎悪を他にそらすため、罪や責任をかぶせられ迫害される人。人身御供。)のメカニズムかと思います。
スケープゴートを作って地域の問題を解決する方法は、問題が解決したという幻想を人々に与えます。
でも、結局、方法自体がこの村のすべての悲劇の種と云える。
今作品のエエとこは、上記のテーマを扱っている一方で、個々のコマイ(小さな)罪と罪悪感を見逃さへんことかな。
すべてのキャラは、彼ら自身の状況のために村で起こった悲劇に何らかの形で関与しており、そこからの罪悪感に巻き込まれていく。
せや、それは人として当然の運命であり、今作品は、主人公の紬によるそのような罪悪感から解放される過程を示してる。
ほんで、それはそれが楽園への道であることを自然に示してるんかなぁと。
映像も本当に素晴らしいっす、日本が誇れる自然と文化。
村じゃ火祭りが開催されてて、火事の大火は放火事件、
憧れ、
罪悪感、
恐怖、
憎しみとか、
色んな事を思い起こさせます。
また、村の田んぼを下るロングテイクシーンも、田園の灼熱の太陽を感じさせる場面かなぁと。
村の限られたスペースを利用して、『楽園』てのはどこにあるんかちゅう難しいテーマをうまく描いた傑出した映画でした。

なんのために生まれてきて
なんのために死んでいくのか

母さんは、ここに来るとき楽園に行くと言った

どこに行っても同じ。
何も変わらない。


理不尽
悲しすぎる
やりきれない
怒りと絶望と恐怖。

地方都市の山間の村。
青田のY字路で少女が行方不明になる。
少女は見つからず12年が経過する。

夏祭りの夜、また別の少女が行方不明に。
村人達は、幼少期に難民で外国から来た内向的な豪士を疑う。
集団で自宅のドアをぶち破り、土足で部屋を荒らし、豪士を追う。
子供の頃から疎外され、母子で酷い目にあっていた豪士は集団に追い詰められ、恐怖から灯油をかぶり村人達の前で自らの命を断つ。
すぐに少女は無事に発見され、少女の帰還に喜ぶ村民達。

豪士の死には罪悪感を持たない。
疑われる方が悪いといった風情だ。


妻を亡くし、村で養蜂業を営む善次郎。
村民に頼りにされ、とても親切で良い人だ。
ある日、寂れゆく村を活気づけようと町おこしを提案するが、老人達の思惑と噛み合わず村八分にされる。

ゴミを回収されない、
墓に破廉恥な落書き、
可愛がっていた愛犬の外出禁止。

そして妻の遺骨が眠る自宅敷地の木を無理やり伐採され…

この村では村民の「決めごと」と行政が一緒。
善次郎は追い詰められ心身共に疲弊して行く。
村人達の陰湿な村八分はエスカレートし、善次郎の精神は限界を超え、村に惨劇が起こる。

「誰かが罪人になれば丸く収まる。おさめたいんだよ、俺は。」

12年前失踪した少女の祖父(柄本明)の言葉。

ふざけるな
異質な者や、昨日まで善人な、異なる意見をたった一度言っただけの人間を、死なせるまで追い詰め無ければ気が済まないのか?

閉塞した歪んだ人間達が起こす残酷な話。

豪士の無実を信じ、12年前、失踪直前まで少女と一緒にいて、事件を抱えて生きて行く女性を杉咲花が好演している。

元難民の青年豪士役の綾野剛の演技が繊細で、自信の無さ、不安を表現する芝居が素晴らしい。　

善次郎役は佐藤浩市。　
この人のやりきれなさはもう、何とも言えないくらい上手すぎる。


完成度が高く惹き込まれる。

見応えがあり作品のレベルがとても高い。

俳優陣の感情の波動を劇場で感じられて良かった。

綾野剛の映画観たいって言われて一緒に観たらすごく重くて暗かった。

２つの事件を扱ってたけど、２つとも実際にあった事件を元に作られた小説の実写と知ってびっくりした。

２つとも重くてつらい。田舎の村八分って本当怖いって思った。