【実話に基づく傑作映画たち】
　～事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈0.001秒でも先に市場情報を掴む！〉
　～高頻度取引 (HFT) 確立 / 2010年
・場所: アメリカ
・組織: スプレッド・ネットワークス社

〈見処〉
①現代のタイムマシン /1600㎞の
　光ファイバーが0.001秒を稼ぐ！
・『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』は2018年に製作されたカナダ・ベルギー共作のドラマ映画。
・舞台は米国ニューヨーク。株の高頻度取引を進めるトレス・サッチャー社で働くヴィンセント(ジェシー・アイゼンバーグ)と、従兄弟のアントン(アレクサンダー・スカルスガルド)。株の取引はミリ秒単位の差で莫大な損得が発生するため、彼らの会社もその遅延を減らすべく、システム構築に必死に取り組んでいた。
・ヴィンセントは、カンザス州にあるデータセンターとニュージャージー州にあるニューヨーク証券取引所のサーバーまでの直線距離1600キロに光ケーブルを敷くプロジェクトを思いつく。これによりアクセス時間が1ミリ秒の短縮がさにて年間500億円以上の収益が見込めると確信したヴィンセントは、アントンとともに退職し、プロジェクト実現のために走り出すが…(eiga.comより抜粋)。
・本作は『マネー・ボール』で有名なノンフィクション作家、マイケル・ルイス著書『フラッシュ・ボーイズ10億分の1の男たち」(2014)を原作としており、株取引で年間500億円以上の儲けを確実に手にするため、あるプロジェクトを実現させた男たちを描いた実話をもとにしたドラマである。

②儲けのカラクリ
・2008年、ニューヨークのウォール街での取引証券は、従来の人の手から電子取引に移行を迎えたが、しばらくすると、一瞬で売り株が消えてなくなったり、株の売値が高騰して損をするような現象が発生。
・これらは、株売買のオーダー時に発生する1/1000秒 (ミリ秒: ms) 単位の遅延(レイテンシー)の間に、コンピューター・アルゴリズムによる高頻度取引 (HFT) を繰り返しているため。
・株式市場で「買い」が出た発注に対し、瞬時に「売り」に出ている取引を先回りして仕入れするカラクリにより、わずか一瞬の間に巨額の利益をもたらす構図となっている。
・本作の元となった実話では、ニューヨークとシカゴ間の直線上1,158キロの通行権を買い上げ、3億ドルをかけて光ファイバーケーブルを敷設、既存のルートの10数倍にあたるケーブル使用料を課金しても、スピードに差をつけたいHFT業者にとっては利用する価値があったそうだ。

③結び…本作の見処は？
○: 淡々と進むビジネス・ドラマであるが、予見しづらい内容にて、集中力を切らすことはない作品。
○: ハゲ面アントン役を『ターザン：REBORN』イケメン、アレクサンダー・スカルスガルドが、敵役の元女上司をサルマ・ハエックが演じているが、どちらもその風貌から判別出来ない。
▲: 人生をかけたプロジェクトとして、後半部は美化されているが、実際には公平性に欠ける汚い取引であることがわかりづらい。

• #実話に基づく傑作映画たち

「株取引」されてる方も多いと思います。様々な金融商品が有る中で、銀行に預けるだけでは何も期待できない。老後を考えると年金だけでは到底足りない。国は死ぬまで働けと言うが、厚生年金なら未だしも国民年金だけではお先真っ暗。Tジョイ京都で鑑賞。

「high-frequency trading」HFT、高頻度取引。1秒に満たないミリ秒単位の短時間に、株価の取引戦略を行うシステム。シカゴとニューヨークの時差を利用して、現物の株式との価格差を素早く見つけ、裁定トレード。アルゴリズムも複数あり、メイキングやディレクショナル・アルゴリズム。超高速度のインターネットと高演算能力のパソコンが必要。実際に個人投資家が銘柄の乱高下を操り、逮捕されてる。良いか悪いか別にして、高頻度取引してる人の利益は、していない人の損失により成立する。

本作には原作が有る。Michael Lewis著「フラッシュ・ボーイズ 10憶分の1秒の男たち」文藝春秋刊。2014年に発表された時は全米でセンセーションを巻き起こした問題作。高頻度取引はアメリカでも日本でも、法に触れる訳ではないが株取引の平等と言う精神を根底から覆すモノ。この小説をインスパイアして本作は創られたが、闇の事情で名は連ねてない。同じ作家でBrad Pitt主演「マネー・ボール」原作者でもある。

株はチンプンカンプンでも、カンザスとニューヨークの間1600kmに真っすぐなケーブルを引く。と聞くと中島みゆきを思い出すのは、私だけ？(笑)。でも考えて見て下さい。東京の皇居と京都の御所を真っ直ぐに繋ぐ、絶対無理です。劇場で予告編を見た時から、その疑問が尽きません。土地に対する権利がルーズなアメリカでも、山も川も湖も有る。都市部では地下でも地下鉄や都市ガス、水道管、絶対無理。

最大の疑問を本作はハッキリ説明してくれない。「テーマは其処じゃない」と言わんばかりの展開に、大きなクエスチョンしか残らない。前半と後半では、作品のロジックが転換するが、この点にリアリティが無ければ。幾ら俳優が頑張っても嘘臭く感じる懸念が尽きない。Kim Nguyen監督は父親はベトナム系、母親はフランス系カナダ人。「魔女と呼ばれた少女」アカデミー外国語賞候補にも成ったが、原作小説は事実を伝えてるが、本作はフィクション。原作の名前を言えない闇も含め、ドス黒い利権も見え隠れする。

【ネタバレ】思いも依らない展開が待つ中盤以降、鑑賞後にご覧下さい【閲覧注意！】

「諸般の事情でそれは言えない」と言うのなら、映画的に面白ければ良い。この展開なら、最後はガッツポーズでスカッと爽やか、と誰しも思う。だが「道理に適ってる」点が不足してる本作は、サクセス・ストーリーを強引に捻じ曲げる。京都風に言えば「思うてたんとちゃう！」。計画自体が途轍もなく大事な事を忘れてる。大資本の会社が、もっと速いスピード回線を開発したら、膨大な苦労が全て水泡と為る。見る側は古いけど「プロジェクトX〜挑戦者たち」をイメージした筈。主人公の未来を閉ざしてしまう。そんな、屁理屈な脚本は初めて見た。この業界は民主党の言う通り「2番」じゃ駄目。

ハリウッドなら「今日は駄目でも、明日は頑張ろう！」で締め括る。本作はカナダとベルギーの合作、だとしてもセカンド・チャンスの無い映画を見せられても、観客は謎のフラストレーションが溜まるだけ。なぜ多言語な世界でハリウッド映画が人気なのか？。それは「大事なのは結果じゃなく努力した事実」と言うアメリカ人の精神に有る。だが、本作では「無理」のオンパレードで、破綻するのは目に見えてる。本作には日本人が大好きな「敗者の美学」も欠如してる。この作品を見て小学生がどんな感想文を書くのか、とても興味が有る。

トロント映画祭でプレミア上映、CCIFF、Canada China International Film Festival で作品賞受賞。つまり演者は頑張ってる。主演Jesse Eisenbergは、レビュー済の傑作スリラー「ビバリウム」前の作品に成るが、監督で作品を選ぶ人。定番のマシンガントークも健在で、自信満々の野心家が良く似合う。それは醸し出す演者としてのパッションが、観客にも伝わるから。Alexander Skarsgårdは作品を邪魔しない存在感で、見事に貢献。彼は助演男優賞に最も近い俳優の一人。何時もと違うスタイリングのエロ姐さんことSalma Hayek、55歳。自慢の巨乳は御健在の御様子。プロット的には彼女の方が「正論」作品の大きな欠陥を補填する役周りを見事に熟した。

マネーゲームは基本的に映画に似合わしくないと、株をやってる私も思う。誰かが儲かる話を見て面白いのか？、と言う視点も有るし日進月歩の業界は、今日は最新でも明日には古く為る、それの繰り返し。リスクヘッジを顧みない本作は早々に破綻するが、勝者が居れば敗者が居る、本作の着地点は確かに「正論」だが、演出のマッチポンプも感じる。ぐうの音も出ない正論に背を向けてこそ、映画ではないか？と強く感じた。

私は制作過程で何らかの圧力が掛かり「フラッシュ・ボーイズ」通りに描く事を諦め「これはフィクションです」とマイナーコードへ転調したと思う。本作は社会派スリラーの傑作に成るだけのフッテージは有った。だからJesse Eisenbergも出演した。批判的なレビューを書いた割に、4.0とアベレージが高いのは理由が有る。傑作を妨害したのは誰か？、貴方も推理して欲しい。

生き急いでも、ナニが速くても良いってもんじゃない。現代版の悲喜劇は一見の価値あり。

良い配役に良い演技👬✨多数ノミネート(後述✏️)も納得の『丁寧に作られたドラマ📽』。とくに主演二人のバランスが絶妙(アレクサンダー・スカルスガルドの特殊メイクが💦ww)。実話がコミカルに脚色されており見やすいものの、内容に興味が持てず最後まで置いてけぼりに(´･ω･｀)。でもジーンと来ますた♨️

【🇨🇦カナダ・スクリーンアワード(音響賞)受賞🏆✨カナダ・スクリーンアワード(視覚効果賞・プロダクションデザイン賞・編集賞・ヘアスタイリング賞賞・作曲賞)５部門ノミネート】

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