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メカニック
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『メカニック』に投稿された感想・評価

プロの殺し屋が弟子を育成する『レオン』型の作品。本作のブロンソンは史上最強レベルの強さで、髪型や衣装も含め最高にカッコいい。激しいアクションや大爆発も盛り込まれていてストーリーも面白い。1番観たかった彼がここにいる!

冒頭15分セリフなしで坦々と仕事をこなすブロンソン、そしてその静けさを一気に蹴破る大爆発!全編ハード・ボイルドの極み!『ゴルゴ13』のように一生仕事シーンを観ていたい1作でした✨

う〜ん、マンダム!
リメイク元のオリジナル。
作品冒頭からブロンソンが初めてセリフを発するまで実に約15分。この間に彼が“メカニック”と呼ばれる凄腕の殺し屋たる由縁をバッチリ見せてくれる。まぁ、このブロンソンがスタイリッシュでカッコイイ!ついでに住んでる家もミッドセンチュリーのコンセプトハウスみたいでカッコイイ!真っ赤なガウン姿とかシビレるでしょ!それに道着を着て真剣を構えたり合気道なんかしているのも素敵!やっぱり当時のブルース・リーの影響を受けての空手・カンフーだったのでしょうか?
助手として迎えプロの殺し屋に仕立てていく、かつての友人の息子にジャン=マイケル・ヴィンセント!これは「超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」を見て育った世代としてはメチャクチャ嬉しい!若くてロン毛でチャラかった!彼が飛行機を操縦して宙返りをすると、ついニヤリとしてしまう。
ナポリでの銃撃戦、2人ショットガンを構え、走りながら撃つ姿、身のこなしのカッコ良さ!このブロンソンを堪能出来れば細かいツッコミどころなんかどうでもよくなる。
“メカニック”と呼ばれるほど冷静で緻密な仕事をするブロンソンが何故ジャン=マイケル・ヴィンセントを弟子に迎えたのか?そこらへんの描写がちょっと弱い。だが、その後リメイク版を越えるような衝撃の展開が待ち受ける。劇中、日本人の空手の師匠とアメリカ人の弟子が組手をするシーンがあったが、それがこの2人のその後を暗示していた。ブロンソンは、敢えてその運命を受け入れているようにも思えた。
「ナポリを見て死ね」
チャールズ・ブロンソン…。

自分が洋画にハマりだした小三か小四あたりの頃、TVを付ければ、アゴを撫でながら「うーん、マンダム」と呟く男性用整髪料のCMや、マッチョなタフガイを演じた「雨の訪問者(70年)」「狼の挽歌(70年)」「夜の訪問者(71年)」等がしょっちゅうOAされるなど、日本でもかなり知名度の高い、特に男性ファンからの根強い人気を誇る外国人男優だった。

但し、10代の入り口に差し掛かったばかりの当時の自分には、“カッコいい”というより、むしろ“異貌のオッサン”のイメージが強く、ファンの方には大変恐縮だが、極端に云えばブサイク。

ヒゲの生え方から骨格まで、赤塚不二夫の漫画キャラ「バカボンのパパ」そっくりに見えてしまった(汗)。

本作「メカニック(72年)」でブロンソンは、一匹狼の殺し屋に扮しているのだが、平時では前髪を横に流して、クラシックなスーツを着こなしビシッと決めているのに、殺しの仕事場では、前髪を下ろし、片目を隠したゲゲゲの鬼太郎みたいなヘアスタイル。
しかも、日本でのブロンソンのフィックス声優が、「ゲゲゲの鬼太郎」のねずみ男役で有名な大塚周夫氏…。
(注:本作のTV初放映時の吹き替えは、「刑事コジャック」でお馴染みの森山周一郎氏)

つまり、TVで観てきたブロンソン映画は概ね、ねずみ男の声をしたバカボンのパパが動いているワケで、演じる役柄が殺人マシンであっても、ガンマン、刑事、或いは囚人といったアウトローであっても、幼心にはイマイチ感情移入できなかったのだ。

まぁ、こんな気持ちを助長させたのは、「雨の訪問者」での役名が“ドブス”というブサメン的だったことと、タイトルは失念したがブロンソン主演作の解説で、淀川長治氏が「まあ〜、なんてブサイクな男でしょ!」と発言したことが大きく関係していると思う…(笑)。

そんな中、何故か思い入れが強いのが本作「メカニック」。

おそらく名画座ながら、スクリーンでブロンソンの御尊顔と地声を初めて見聞きした作品であることと、本サイトにも画像として貼られている米国公開時のポスター、その絵柄に思いっきり騙されてしまったからだろう。

黒装束で腕組みをしているブロンソンの横には、岸壁でのバイク・チェイス、派手に炎上する船から逃げる一隻のモーターボート、海中から船に潜入しようとする潜水夫たちといった、まるでスパイ活劇のようなカッコいいイラストが描かれている。

これを一目見た自分は、マフィア世界の007=国際犯罪シンジケートに雇われたジェームズ・ボンドを主人公とした作品だと勘違いしてしまったのだ。

確かに劇中では(ポスターのイラストはかなり盛り過ぎだと思うが…)、バイク・チェイス、スキューバ・ダイビング、セスナによるスタント飛行、銃撃戦、爆発に次ぐ爆発と、派手な見せ場が続くのだが、「007シリーズ」のような動的興奮が一向に得られない。

その代わりにスクリーンから漂うのは、フランスのフィルム・ノワールのような、“クールさ”と“倦怠感”。

これは、チャールズ・ブロンソン演じる主人公殺し屋アーサーから、劇中終始醸し出される「ペシミズム=厭世観」、その所以からかも知れない。

アーサーはいつも孤独で寡黙だ。
決して感情を表には出さず、淡々と殺しの仕事をこなしている。標的に対して緻密な身辺調査を行い、偶発的な事故に見せかけて確実に仕留めるのが得意のスタイル。

このストイックでクールな殺し屋アーサーのキャラクターは、ブロンソンの友人でもあるアラン・ドロンが「サムライ(67年)」で演じた殺し屋ジェフを彷彿させる。

但し、ドロンが「サムライ」の劇中、ベージュのトレンチコートを羽織り、グレーのフェドーラ帽を目深に被っていたのに対し、ブロンソンの殺しの仕事着=勝負服は、カラシ色のブルゾンに茶色のスラックスという野暮ったい格好で、高額の報酬を得るヒットマンというよりは、工場の作業員か、港湾労働者の風情だ(笑)。

片手に同じく茶色の重そうなトランクケースを持って、ロサンゼルスの場末の通りを歩くアーサー。
(蛇足ながら、某雑誌で、カリスマ映画ライターと持て囃されるウェイン○山氏は、この場面の舞台をニューヨークと指摘しているが、それは大きな間違い…。確かに「WALL St」という道路標識が画面隅にチラッと映るが、それは同名の通りがタマタマ近くにあっただけで、実際の場所は、ロサンゼルスで“治安最悪エリア”と呼ばれるスラム街スキッド・ロウ、東5thストリート付近)

アーサーが向かった先は安ホテル。
そこで3階の一部屋を借り、徐にトランクを開ければ中身はなんと天体望遠鏡。それをニコンのカメラに付けて、向かいのアパートの一室(=標的の部屋)をじっくり覗きながら、一枚一枚、室内の写真を撮る。

因みに、この天体望遠鏡はクエスター社製で、鏡筒およそ30cmながら、天体は勿論、3m程の近距離にあるものに焦点を合わせても、高光学性能(!?)が変わらないらしく、70年代、製作当時の販売額は日本円で100万円以上したとのこと。

下見を終えた後、自宅に戻ったアーサーは、引き伸ばした写真を壁に貼って、パイプを燻らせながら、それらを眺める。この殺しのプランを練る姿は、これまで観た映画の殺し屋たちと異なり、非常に理知的で新鮮に思えた。

部屋に静かに流れるクラシック音楽は、ベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第6番 op.18-6」。

この曲は4つの楽章から構成されており、劇中で聴こえる第2楽章は、バイオリンとチェロが奏でる優雅な曲調なのだが、実は最後の第4楽章はそれまでと異なり、翳りのある何とも怪しい響きが続き、“悲痛さ”みたいなものが聴いていて伝わってくる…。
これは、以降綴られる本作のストーリー、明から暗へと転じる展開を仄めかしているようにも感じてしまう。

翌日、ターゲットの留守宅に潜入し、色々とトラップを仕掛け、その後、再びホテルの自室に戻ると、暗殺決行のタイミングをひたすら待つ。

その間、アーサーは時間潰しに、握力を鍛えるためか、右手で“ロウの塊”をハンドグリップのように、強く握ったり、離したり、その動作を繰り返す。

聴こえてくるのは、時計の秒針が刻むチクタク音と、隣室から微かに漏れるラジオのDJの声。そしてジェリー・フィールディング作曲のピアノと弦楽器が奏でる不協和音が印象的な、サスペンスフルな劇伴だけだ。
(うろ覚えだが、さいとう・たかをの漫画「ゴルゴ13」でも、ハンカチかコインを使って、引き金をひく指の力を強くするシーンがあったような…。どちらが先に世に出たのだろうか…?)

結局のところ、暗殺は無事に成功するワケだが、これまでの間、冒頭からおよそ15分間、一切の台詞が無い。
ブロンソンの劇中最初の台詞、組織の仲間からの電話をとる「Yes…」は、それから更に1分後のことだ。
(注:偶然なのか分からないが、「サムライ」でのドロンも冒頭から9分半、一言も喋らないし、本作が製作の際、参考にしたと云われる加山雄三がスナイパーを演じた「狙撃(68年)」も開巻して7分間、ほぼ台詞がない)

次に、アーサーに告げられた新たな標的は、組織の大物だった亡き父親の部下であり、アーサーが幼少の頃から付き合いのある友人ハリー(キーナン・ウィン)。

しかし、ビジネスに私情を一切持ち込まないアーサーは、普段通りに淡々と準備を進める。

自宅の部屋の壁にはいつものように、標的(=ハリー)の近影と、生活習慣や病歴を記した資料が貼られ、再び、クラシック音楽が流れている。
聴こえてくるのは、同じくベートーヴェン、今度は「大フーガ op.133」。
この曲は完成後、一部の評論家から失敗作とみなされ「取り返しのつかない恐怖」と酷評された。

ここで注目なのは、部屋に飾られている初期オランダ絵画の巨匠、ヒエロニムス・ボッシュの「快楽の園」。

この絵は3つのパネルから構成される「三連祭壇画」で、左から神がアダムにイブを与える「エデンの園」、中央が快楽に溺れ、堕落した人間が繰り広げる「快楽の園」、そして右が悪魔から拷問を受ける人間たち、そのさまを描いた「地獄」。
この作品は、神によって創造された地上の楽園が、人間が犯す“快楽”の罪によって、地獄の世界になってしまうことを表現したと云われており、つまり、パネルの左から右へ、発端→展開→帰結という流れになっている。

だが、劇中のアーサーは、中央の「快楽の園」しか見ない。
裸体の男女、性に突き動かされる人間の狂態ばかり凝視している。

このシーンを、背後に流れるBGM=ベートーヴェンの「大フーガ」と併せて考察してみると、アーサーにとっての殺人とは、自身に強い性的興奮を与える媚薬であり、それが行き過ぎてしまうと、いずれアーサーが取り返しのつかない末路(=地獄への道)を辿ることを、ボッシュの絵が暗示しているように思えてくるのだ。

このように本作「メカニック」は、ハリウッド出資の作品ながら、60年代のフランス製クライム・アクションによくあった、アンニュイな雰囲気が支配しているのだが、ハリーの遺児スティーブ(ジャン=マイケル・ヴィンセント)の存在が色濃く出始めた途端、物語は別の方向に転がり出す。

顔がブチャムクレで短足のアーサーとは対照的に、スティーブはスラッとした長身でロングビーチにいるサーファーのようなサラサラヘアー。

20代半ばながらオヤジに小遣いをせびる放蕩息子で、生前中の父に向かって、「朝食代に1000ドルくれ! 金をせびられると親の実感が湧くだろ!?(笑)」と噛みついたりする。

更にオヤジが突然死んでも何の感慨もなく、その葬式の日にホームパーティーを開催。
父の死を悲しむどころか大喜びで、「これでこの家はオレのものだ!」と、ヒッピー風の友達を大勢集めて乱痴気騒ぎ。みんなハッパをキメながら、なぜかイタズラ電話をしている。カトマンズ、シドニー、アフガニスタン…他にもホワイトハウスやジョン・レノンのオフィスに電話しているヤツもいる(笑)。

但し、スティーブはバカ騒ぎをしている友達を、ただ眺めているだけだ…。

そんな中、ガールフレンドのルイーズ(リンダ・リッジウェイ)から自殺予告のTEL。
「他の女と一緒でしょ? 私はもうお払い箱なのね!じゃあ、死んでやる!!」

そこでスティーブは「自殺すると言ってる女がいるんだけど、見物に行くかい?」とアーサーを誘う。
まるで、見知らぬ人の交通事故か、火災現場を野次馬感覚で見に行くような冷めた言い方で…。

彼女の家に着いても、目の前でリストカットしようとしているのに、逆に「Go Ahead!」とけしかける。
とうとう、彼女は左手首を切るのだが、血をダラダラ流す女の子を、スティーブはサンドイッチを食べながら高みの見物を決め込む。

「死にたいと思って死ぬ人間に、なぜ同情しなくちゃいけないんだ。君が望みを叶える様子を最後までちゃんと見届けてあげるよ〜♪」と、言わんばかりに…。

こんなスティーブの冷血ぶりを見たアーサーは、何故だか分からないが、スティーブを自分の弟子にすることを決意する。

そしてアーサーは、殺し屋になった理由を「世間に飲み込まれないためだ」と言う。
更に続けてスティーブに「自分が何者か掴め」と諭す…。

本作のタイトル「メカニック」には、幾つかの意味がある。
自動車の整備工というのが一般的だし、他にもカジノのスロットマシンのトラブルに対応する仕事を意味することもあるらしいが、本作での「メカニック」は、マフィアの殺し屋を指す隠語だ。

それらの意味を掛け合わせると、アーサーは“殺し屋”としての自分を、“機械”としてどこまで研ぎ澄ませるか、極めることができるか、それに執着することで自分の存在意義、その必要性を見つけ出しているのだろう。

「オレは世間の外側に居る
 生まれながらの“アウトサイダー”で、
 殺し屋が天職なんだ」と…。

アーサーは、スティーブに殺人哲学を伝授し始める。

「銃は腕の延長のように構えろ」
「フリーの殺し屋はクライアントの要求に必ず応えなければならない。そのためには機動性・知性、そして当然、仕事上の技術が要る」
「ナポレオンもジンギスカンもジョン・デリンジャーも、今では名高い英雄だが、みんな殺し屋だ。要は自分のルールを、マフィアでも軍隊でも政府でも外国でも適応させただけだ」

自分のルールにのみ従うアーサーは、世話になった友人でも平気で殺すが、その代償として孤独に陥る。
だから神経が衰弱し、心的ストレスを募らせ、精神安定剤と思しき処方薬が欠かせないでいる。

こんな孤独を選んだ男が、どうしてスティーブを弟子にしたのか…最後までその理由はハッキリと語られない。

心臓を患い、迫りくる死の恐怖を感じたことが、自分の技を継承する弟子を求めさせたのだろうか。
ハリーを殺したその贖罪として、彼の遺児スティーブの面倒を見ようとしたのだろうか。

もしかしたら、父の死やガールフレンドの自殺に動揺する素振りすら見せず、冷酷なまでに合理的で、客観的なスティーヴの言動に、殺し屋としての素質を見抜いたのかもしれない。


だが、ネタバレで恐縮だが、後半に差し掛かる頃、物語は思わぬ方向に舵を切る(!!)。
とあることを理由に、スティーブはアーサーを殺そうとするのだ…。

その道のベテランが、年下の男を息子のように思って厳しく指導するが、その一方、若者は年長者の熟練度を見せられるほど逆に反発し、そればかりか、いつしか彼を倒そうとする…。

こんなプロット、ベテランと若者の確執を描いた映画はこれまでにも何本か作られてきた。

おそらく、その嚆矢となるのが、監督ハワード・ホークスの「赤い河(48年)」。
牧場主ダンソン(ジョン・ウェイン)と養子のマシュー(モンゴメリー・クラフト)は、カウボーイとして牛の群れを運ぶ途中で対立を深め、最後は互いを殺そうとする。

以降、老練なギャング(ジャン・ギャバン)が、カンヌのカジノの売上金を強奪するために、若い世間知らずのチンピラ(アラン・ドロン)を雇う「地下室のメロディー(63年)」や、本作同様、ベテランの殺し屋(ロバート・ウェッパー)と若い殺し屋(フランコ・ネロ)の軋轢を描いたマカロニB級アクション「殺しのテクニック(68年)」などなど、所謂「師匠と弟子モノ」は、世界各地で製作・公開されてきた。

しかし、“せっかく育てた弟子に寝首を掻かれる可能性がありながら、その時が来るまで、互いに笑顔で胸の内を探り合う”という、抜き差しならぬ関係をスリリングに描いた本作「メカニック」終盤の展開、その源流は、やはり「イブの総て(50年)」ということになるのだろう。

大女優マーゴ(ベディ・ディビス)の付き人となった新人女優イブ(アン・バクスター)が、師匠マーゴを踏み台にし、狡知の限りを尽くして、ノシ上がっていく姿を描いたアメリカ演劇界の内幕ものだ。

上述した作品は概ね、“蓄積された経験と知識、己を律するルール、そして人間に対する深い理解”を備えたベテランが、“無軌道で根拠のない自信”だけの若者と対立することを描いているワケだが、老害と囁かれ始めた自分が今、改めて本作を見返してみると、画面から匂ってくる“初老オトコの意地と悲哀”が、妙にズシン!と胸に突き刺さってくる(笑)。

自分が殺される決行日が不明な中、ナポリのレストランで、地酒のカーサ・デ・フィオーリを酌み交わしながら、アーサーはスティーブに最後の哲学を指南する。

いつ仕掛けてくるか分からない状況下に於いて、相手を信じる素振りを見せたり、その挙句に情に流されてしまったら、即“負け”になる筈なのに…。

「ゆっくり飲め。貴重なひと時を堪能しろ。味と香り、舌触り、喉ごし…一つ一つ味わえ。心に染み渡るように飲め。味わい切るか、酔いしれるかのどちらかだ…」

ここでレストランのギター弾きが歌うのが、ナポリ民謡の「O Sole Mio(1898年)」。

「♪〜太陽が輝く日は美しい/(中略)だけど もう一つの太陽はもっと美しく輝いている/私の太陽/それはあなたの顔に輝く〜♪」

お分かりのように、この曲は、天に輝く太陽と愛する人を重ね合わせた情熱的な歌詞を唄っているのだが、実はアーサーのスティーブを想う気持ちを代弁している。

なぜなら、本作のオリジナル脚本、その初稿では、アーサーとスティーブがハッキリと“ゲイの関係”であると書かれており、それが映画の主題だったのだ。

本作「メカニック」の企画は、カーク・ダグラスが興した会社「ジョエル・プロ」が製作する「暗殺(68年)」のシナハン中、脚本担当のルイス・ジョン・カリーノがマフィア関係者に取材し、殺し屋のことを“メカニック”と呼んでいると知ったことが発端となり、そのためプリプロ段階では、監督は「暗殺」に続いてマーティン・リット、カーク・ダグラスの主演作として準備されていた。

しかし、主人公が男性同性愛者であることから、出資者、プロデューサー、監督、主演俳優らに次々と断られ、シナリオは流れ流れて、後年「ロッキー(76年)」を製作するロバート・チャートフ&アーウィン・ウィンクラーのもとへ辿り着く。

そこでようやく、ルイス・ジョン・カリーノは、テーマである“ゲイ”の要素・エッセンスを泣く泣くカット。
つまり、前述したナポリ民謡の「O Sole Mio」が流れるのは、初期台本の名残であり、アーサーがスティーブを弟子にとったのも、実は恋愛感情、おっさんずラブが原因なのである…。

後年、ルイス・ジョン・カリーノはインタビューでこう語っている。

「この映画は、当初、老いた殺し屋と年若い弟子のチェスゲームのような作品にしたかった。
若い男は自分のセクシャリティが武器になると悟り、ゲームに勝つためのアキレス腱を徐々に見つけていくのだが、終幕に向かうにつれ、それが恋心へと変わり、師匠を殺して自分がNo.1の殺し屋になるべきかどうか、葛藤するハナシだったのに…。
それがボンド映画の二番煎じみたいになってしまったのは、これまでの人生で受けた大きな失望の一つだよ(笑)。」

本作は2011年に、「コン・エアー(97年)」とか「トゥームレイダー(01年)」といった(イイ意味で)底抜けアクション大作ばかり撮っているサイモン・ウエストによってリメイクされ、ストーリーは同じだが、登場人物の心理はよりわかり易く描かれた。

でも、なんでだろう…。
オリジナルの本作の、モラルとか義理人情とか微塵も通じない、無機質で冷たい演出とブロンソンの無表情の方が、不思議にも魅力的に感じてしまうのだ…。


最後に…

本作「メカニック」のメガホンをとった監督マイケル・ウィナーについて、チョットだけ書かせて頂きたい。

マイケル・ウィナーは暫し、ブロンソンと“黄金コンビ”とか、ブロンソンの“座付監督”と称されることが多い。
確かに彼がメジャースタジオで撮ったフィルモグラフィー、全20本中、そのうち6作品がブロンソン主演作だ。

映画に対する考え方・作り方・アプローチの仕方が、ウィナーとブロンソンは似ていたのかもしれないし、人間的にも相性が良かったのかもしれない。

70年代後半から、ハリウッド映画の黄金期を描いた「名犬ウォン・トン・トン(76年)」、フィリップ・マーロウを現代に甦らせた「大いなる眠り(78年)」、ソフィア・ローレンを主役にした「リベンジャー(79年)」など、どれも製作・脚本を兼ねて監督するも、興行的大惨敗を繰り返したウィナーに、助け舟とばかりに、大ヒット作「狼よさらば(74年)」の続編「ロサンゼルス(82年)」、その3年後にシリーズ第3弾「スーパー・マグナム(85年)」のオファーを出したのは、盟友ブロンソン本人だった…。

但し、本作「メカニック」の主人公役をブロンソンに演じさせたいと希望したのは、マイケル・ウィナー。

ブロンソンは「荒野の七人(60年)」「大脱走(63年)」「特攻大作戦(67年)」で個性的な脇役として頭角を現し、「さらば友よ(68年)」「ウェスタン(68年)」「レッド・サン(71年)」の国際的ヒットで、日本や欧州ではスターダムを駆け上がっていったが、この時期の出演作はどれもフランス・スペイン・イタリアといった欧州資本の作品ばかりで、肝心の本国アメリカでの人気は、いまひとつ盛り上がらなかった。

そこで、ハリウッドへの本格復帰を願うブロンソンとタッグを組んだのが、「ハリウッドで成功したい!」という同じ志を持つ英国人監督マイケル・ウィナーだったのである。

実のところ、二人にとっての初タッグ作は「チャトズ・ランド(72年)」なのだが、ハリウッドが出資・配給した作品ながら、オール・メキシコロケで、英国のシミター・フィルムが制作したもの。

つまり、その直後に作られた本作「メカニック」こそ、ウィナーにとって、自分の足をハリウッドの地にしっかりと付け、初めて撮り上げた悲願の作品であり、ウィナーがブロンソンの“真のハリウッド凱旋”を後押ししたものなのだ(!!)。

(注:ウィナーのハリウッド・デビュー作とされている西部劇「追跡者(70年)」も、実は「チャトズ・ランド」同様、オール・メキシコロケで、英国のシミター・フィルムが制作)

そして、本作のアーサーとスティーブの捻れた関係、その人物描写は、演出したウィナーにとって好みの題材だったような気がしてならない。

なぜなら、本作の前年に公開された、ヘンリー・ジェームズの「ねじの回転」の前日譚を描く、ウィナーの意欲作「妖精たちの森(71年)」が、マーロン・ブランド演じる横暴な下男クイントが実は被害者で、天使のような貴族の子供たちが殺人者だったというハナシだから…。

これを本作に当て嵌めれば、クイント=アーサー、子供=スティーブとなり、“人生経験が未熟で、無垢な者こそ残酷である”と謳っているのだ。

(そう云えば、やや強引かもしれないが、ウィナーの代名詞とも呼べる傑作「狼よさらば」も、虫も殺せない“平和主義者”でマイホームパパの建築士が、暴漢に妻を殺され、娘を廃人にされたことでヴィジランテになり、チンピラ退治を続けながら、徐々に“快楽殺人”という麻薬に溺れていくハナシだった…。)

また、マイケル・ウィナーは楽しんで、本作「メカニック」を演出していたようにも思える。

ウィナーはアメリカ映画の熱狂的ファンで、ケンブリッジ大学在学中から雑誌にハリウッド作品の映画評を書いていたらしい。

それを想像させるようなシーンが、劇中の序盤にある。
アーサーの恋人と思しき部屋、その壁一面いっぱいに貼られた、クラシカルなアメリカ映画のポスターだ。

サイレント時代の大女優メアリー・ピックフォードの「連隊の花(1918年)」やコンスタンス・タルマッジの「Good Night, Paul(1918年)」を始め、RKOが製作した「キング・コング(1933年)」、タイロン・パワーとリタ・ヘイワースの恋愛モノ「血と砂(1941年)」、そしてグレタ・ガルボ最後の出演作「奥様は顔が二つ(1941年)」…。

これらの作品全てに共通するプロットが、タフな男(&一匹のオスザル)が一人の美女に出会い、恋に堕ち、我を失っていくという展開。

アーサーも彼女の部屋を訪ねるや、「会いたかったわ! 愛してる♡」と抱きつかれ、彼のために書いたという恥ずかしいほどベタベタのラブレターを朗読され、ニヤニヤと目尻を下げる。そこに殺し屋の面影は一切ない。

「愛するあなたへ。私は今、あなたのいない部屋で静けさに一人で耐えている。帰る日を待ち侘びて…。もう何もいらない。帰って来てさえくれればそれでいいの」

しかし翌朝、ベッドに裸で寝ているガールフレンドは、アーサーに向かって冷たくこう言う。
「あの手紙はプラス100ドルよ!」
そう、彼女はコールガールで、全ては演技だったのだ…。

この顛末は先述のポスターで、実は既に仄めかされていて、「Good Night, Paul」と「奥様は顔が二つ」の2作は、恋人、あるいは妻に成り済ましたファム・ファタールのハナシ…。
(更に付け加えれば、壁に貼られたもう1枚の映画ポスター、「City of Missing Girls(41年)」は、表向きは美術学校ながら、その裏側は娼婦を斡旋するナイトクラブだったという物語だ…)

この場面でコールガールを演じているのが、ブロンソンの実生活での愛妻ジル・アイアランド。
「戦うパンチョビラ(68年)」で初共演を果たして以降、「トップレディを殺せ(86年)」まで数多くの作品(多分、計16本)でラブシーンを演じ、どの作品でも二人は照れもせず、大っぴらにイチャついている…。

ちなみに本作のコールガール役に自分の妻ジルを推したのは、当然、旦那のブロンソン。
「オレのカミさんを出さなきゃ、役を降りる!」とプロデューサーを脅したらしい…(爆)。

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