ゴシックホラー+ジャーロ!
屋敷に住む姉妹は必ずいがみ合い殺し合う!それは100年ごとに起こる呪い!殺された方は「赤の女王」として墓から蘇り、7人を殺す。その7人目は自身を殺した妹!そして現代、赤いマントを羽織った殺人鬼が出没する。この伝説は本当なのか…といった感じのミラーリア製ジャーロ。
めちゃくちゃ面白かった!!こういうジャーロが見たいんだよ!っていう私のツボを的確についてくる大好きなやつ!絵画にまつわる古めかしい伝説、古城、ボロッボロの地下洞窟、それと対比するかのような近代的な日常、伝説通りに進行する殺人、そしてタイトルに冠しているだけあって強烈に印象に残る赤の色彩。もう堪んない!
主人公キティ(バーバラブーシェ)は幼い頃からずっと姉エヴリンに虐められ、数ヶ月前に取っ組み合いの末に勢い余ってエヴリンを殺してしまう。それを屋敷の面々が隠蔽するも、しばらく後に主人公の周りで連続殺人が発生。目撃情報から浮かび上がった殺人鬼の人相は姉のエヴリンにソックリだった…。伝説通りにエヴリンは蘇ったのか?
エヴリンはアメリカに行って音信不通の設定で隠蔽してるんだけど、エヴリンの彼氏らしき男が主人公にナイフを突きつけて「エヴリンの居場所を言え!彼女なしじゃ生きられないんだ!」って狂気の愛情みたいなのを見せつけてくるだけど、「本当はエヴリンなんてどーでも良いんだ!エヴリンの金が欲しいだけ!」と速攻で白状してくる正直さに笑った🤣
プロローグで描かれる2人の幼少時代と、それに合わさるブルーノニコライの楽曲が的確にその後に展開する物語の不穏さを煽る。無邪気に人形遊びをするキティと、物陰から窺うエヴリン。それは2人の衣装の違いを含め、2人の間だけでなく家族との関係性(与えられる者・物影から奪うしかない者)についての奥行きまでも浮かび上がらせる。「黒の女王と赤の女王」の絵画を見つめると、魔法にかかったようにキティの赤い人形を執拗に切り裂くエヴリンの姿には、「呪い」の実在性についての予感以上に、エヴリンの中に巣食う腐敗した関係性の投影としての意味合いも同時に訴えかけている。
貴族出身者にも患者が多いと語る精神科医の言葉のように、華やかな外観の裏側に巣食う腐敗はジャーロの中でも頻繁に取り上げられる主題。本作はソレを放棄しているかのように見えて、貴族の家柄である主人公一家にとっての腐敗の象徴たるエヴリンを跳梁跋扈させた先にある帰結は、まさしく恣意的に腐敗を作り出した資産家一族に対して「過去」による姿を変えた復讐そのもの。
『パラサイト』の金持ち奥様のように、自身の置かれた状況について盲目のまま成長してきたキティと、華やかな屋敷と対比するかのような汚らしい地下洞窟へと自分たちの「腐敗」を閉じ込めた一族。似て非なる両者の対比構造はラスト付近に明らかになるのだけど、無垢ゆえの無関心からくる無自覚の罪が許されるのかどうか…といった問答だけでなく、一族側の自浄としてキティに託そうとする姿にもグッとなった。
あとコレも女性殺人鬼だから女性殺人鬼⑤で。結構ネタバレになること多いからなかなか難しい!本作は『The Lady in Red…』って堂々と書いてるから大丈夫なはず!