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パラダイス・ロストの作品紹介

パラダイス・ロストのあらすじ

東京郊外の人気のない場所。心臓発作で倒れたひとりの男が死ぬ。彼は山口 慎也。仕事はネットの古本屋で、原民喜の小説と木下夕爾の詩が好きだった。 妻の亜矢子は、彼の死後、夢で慎也に会い、彼の残したノートの言葉を読み、 ときには彼がまだそばにいると感じる。一年が経過。亜矢子のまわりには、 友人の佐々木ユキ、その恋人の川村講平、慎也の母信代と異父弟の翔がいる。 本作は、パラダイスへの夢を失ったこの世界にどう生きるのか。どう希望を とりかえすのか。夫を失ったひとりの女性と彼女をとりまく人々に問いかけ る。

パラダイス・ロストの監督

福間健二

原題
製作年
2019年
製作国
日本
上映時間
106分

『パラダイス・ロスト』に投稿された感想・評価

しゅみでつくっただけのえいがでおかねとるなんて、おじちゃんひどいよ。あたしのだいじなおこづかい、かえして。。。

『フェアリーテイルあるいは佐々木ユキ』の落ち葉ベッドを踏襲する始め方をしたり、『秋の理由』の木村文洋さんをほぼ同じ落ち着かない役で不思議なさらし者にしたり、『わたしたちの夏』みたく意味不明に女優に唐突に胸をはだけさせたりして、、集大成的なようだけど、どん底の出来にしちゃって福間監督どうした??
ことに前作『秋の理由』は隅から隅まで詩&詩成分で出来てるのが巧くて深くて私には面白だったのに、今作は、まるで出来の悪い三文小説みたいにムダだらけ。「人の死」を安直に支配的モチーフにした上で他人の書いた『夏の花』や『平和な小国』やトルストイ語録に半端にぶら下がってて、三文というより大二病。セリフも演技演出も人物設計も画も音楽も無農薬野菜も国立も吉祥寺も根本テーマっぽいものも、ムダ尽くし。散文詩を映画でやってアート的には成功した人が、今さら小説的に撮っていこうとして、これについては下手クソすぎて自滅だね。
「散文詩」とは、「読者の人生を変えうる重みをもつ言葉、だけから成る散文」だ。謎はあってもムダがなく全語全句全行が(受け手の受け取り方次第で)無限の救いとかの価値を持つ。聖書の詩篇がその代表例。
に対して「小説」は一般的に緩い。緩むけれども物語全体として魅了してのけようとする。(“品質的に緩みがゼロ” の名作というのはもちろん多々ある。詩人も兼ねてたヘッセの『郷愁』の特に序文とか、三島の『憂国』とか、芥川の『蜜柑』とか。ただ、小説には説明文がマスト要素なため、どうしても全語が神というほどには小説は凝縮できない。)
(ついでにいえば、福間監督がモチーフとして執着しつづけてきた “原爆詩人” 原民喜氏は、私にいわせれば詩人である以上に小説家だ。「昭和以降の日本の男性小説家の中で、素人が絶対追いつけない頂点としてわかりやすく三島由紀夫がいて、その三島よりも文章が上手だったのが大岡昇平で、その大岡よりもさらに上だったのが原民喜!」というのが文学部にいた頃に私がまっとうに辿り着いた “日本語を読み書きする者としての結論”。)
いずれにしても、福間監督が今回「詩を個性としては時折散りばめながらも、小説的に」映画を創っちゃおうとするにあたっては、もっともっと確かな濃さの物語の軸をまず用意する必要があった。全然出来てないよ。意欲さえ感じられない。
コハちゃん(小原早織)が七年ぶりに続きをやるっていう前情報に期待しつつ、演技者としての問題児・吉野晶さんがどんなふうに反省してきてるか不安、、ってなってた私は、役者がどうこう以前に監督のクリエイターとしての本気度の不足に、傷ついた。すなわち退屈すぎた。
福間監督にとって、「プロ女優=脱いでくれる人」なんだね。てか、女性を物体(肉感で供してくれるもの)としてしか見ることができない脳のおじちゃんなのか。魅力のない和田光沙は単にそのために呼んだ? コハちゃんが子宮に子がいる主婦みたいな逞しいシルエット(と自信ありげな分別らしさ)でアマチュアかセミプロらしく活き活きしてみせてたのを私は好きでも嫌いでもないんだが、気になったのは彼女の前々作での「佐々木ユキ」の名前を監督が勝手に自己ブランド化して「この天使のことは皆さん知ってるね? 当然知ってるよね? 和田さんとともに二の腕ぷくぷりっとしてていいでしょ? 天使だからこの子だけは脱がせられないけど、ハイ、着衣おっぱい強調ターイムっ」って自分の映画をますます私物化してるだけだった点。(端役で終わったために今回演技者として悪さの出なかった吉野晶さんも、本当に数秒の出番だったけどしっかりノーブラのポッチが浮き出てた。)
フランス映画の悪いとこだけをかじってる大学生みたいで、いやらしさの混入が痛いんだ。(その一方で男性陣に対してはどこかパワハラめなお山の大将っぽい演出姿勢が滲んでる感もある。)トルストイのキリスト教禁欲主義を信仰だけ抜いて都合よく借用して何か内省的な映画みたいに見せかけようとしてるのも、不発。
あ、このつまんないつまんない映画の中で、室野井洋子さんのダンスの古映像?だけが極上だった。最低点(1点)にしなかったのは幻想的な室野井さんのお蔭だよ。(同じくほっそりしてる吉野晶が頑張ってるのかと最初思った。)
と、いくつか書いたけども、一番がっかりだったのは、「政治に無関心な若者、について若者たちが考えて少し喋る」場面や「反ヘイトのデモ行進」をちまちまだらだら描き込んだ監督の無気力姿勢。かつて『わたしたちの夏』ではもっと歯切れよく男子学生の「世界が嘘臭いっていうか。9・11がきっかけで、大量破壊兵器があるからってことでアメリカがイラクを攻めて、後でやっぱり大量破壊兵器がなかったってことになって、でも誰もその戦争の責任を問われずにウヤムヤにしたままですよね?」という意見等々を映し込んで映画が私たちとともに大事なこといっぱい考えていこうよっていう真剣パワーがあったのに、あれから十年経って福間監督は既に日本(や世界)を諦めちゃってるみたいで、今回の若者たちの撮り方は、若者に何の期待もかけてない感じ。トランプへの短い悪口なんてバカでも言えるってば。(短髪の目立ってる女の子が一人よかった。)
てか、若者がどうこうじゃないでしょ? 監督自身が今はもう何もやろうとしてないみたいだよ? 誰が政治に関心を持ってるか持ってないかじゃなくて、真に人間や人類全体や世界や宇宙への関心があれば、その一部としての政治なんかにも当然必要な関心(知ろうとする心)を持つものだ。今の学生たちが政治に無関心かどうかじゃなく、学生たち一人一人が人間や人類や全世界に無関心なのかどうかを大先輩の立場から正しく探って、信用するなら信用する、叱りつけたいなら叱りつけるで、監督自身がしっかりまず自分を持つことが必要でしょ? 監督自身はこれからバカげた日本や狂った地球をどうしたいと思ってるの? 実際に何をしてるの? 映画は自分と国と世界をよりよく変えるための手段じゃないの? 単なる趣味なの? 詩はあなたにとって(私たちにとって)何なの?
誰かが一人死んでそれをみんなで慰めて時々脱いで無農薬八百屋が何度も映って、それが何なの?



コロナが何? (←ついでに。)
jam
3.8
僕はまもなく死ぬだろう
僕は完全な無機物になるだろう
僕は今まで持たなかった自由をもつだろう

僕は視る
僕を燃やす焔の色で

僕は語る
僕を燃やす風の音で
そうして僕は

自分を抱いてきた地球を
別な愛のかたちで抱く

木下夕爾の「死の歌」をそのままなぞるような慎也の死、からはじまる
彼の死後一年
妻の亜矢子とかかわる人々の織りなす詩的な世界


この「死の歌」は
僕は生きられるだろう、からはじまる
「生の歌」という詩と対になっているという
そう、確かに慎也は死んだけれど
亜矢子は時々、そばに慎也を感じていて
彼に、そして自らに問いながら手探りで生きる場所を探している


とても静かに流れる時間
失ったものを想いながらも
ごはんを食べ、味わい
人と触れ合い、好きになり
一緒に居たいと思う

生きる歓びという麻薬

ここでもうひとつのモチーフ
原民喜の「心願の国」からの一節

人々の一人一人の心の底に静かな泉が鳴りひびいて

が私のなかにするりとおちてくる


福間健二監督の作品を観るのははじめてで
もしかしたらこれがベストではないという人もいるかもしれないけれど
今の私には染み入る部分も多かった

前作、前々作も観ていると繋がりがまたみえるようなので、観たいと思ったものの…
もう少し後になるかな。



緊急事態宣言がこの後出される、というタイミングで。
おそらく明日からは東京の全ての映画館が閉まる、そう思い滑り込みで。
同じように思ったのか、定員50人ほどのミニシアターには10人ちょいくらいの観客
それぞれ複雑な心中にこの映画はどんなふうに響いたのか…

劇場の外はまるでこの映画のタイトル「パラダイス・ロスト」そのもので。
いつもは不夜城の街がひっそりと静まり返り、胸がザワザワする

コンビニと富士そばの灯りにホッとしつつ

劇場関係者のみなさん心労を想いながら
私たち映画を愛する者が、またいつものように映画館で楽しい時を過ごせる日が戻ることを願って
詩人と映画監督という2つの顔を持つ福間健二監督の最新作は、「岬の兄妹」「菊とギロチン」の和田光沙さん主演で、夫を突然失った亜矢子、そして彼女を取り巻く人々の愛と生きる姿を、時に詩劇のように、時に寓意劇のように描いていく。
この作品では亜矢子を中心にした愛と、福間健二監督作品で“ミューズ”的存在、小原早織さん演じる佐々木ユキを巡るものという2つの愛の物語が展開する。
福間監督は邦画の既成の枠組みや構造を解体し、新たなものを実験的に、ダイナミックに作ろうとしているように思える。
ただ、それが時に詩的ゆえに抽象的になって、我々観客を置き去りというか、“迷子”にさせてしまう。
主演の和田光沙さんは、代表作「岬の兄妹」を筆頭にエキセントリックな役柄が多いが、本作では普通の女性を繊細に演じている。
愛や生き方に惑い、葛藤したり、袋小路に迷いながら、登場人物たちは何を見出だしていくのか?
何か一つの“悟り”のようなものを感じさせるラストが印象的だった。

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