傑作サイレント。
10年監禁されたストライキのリーダーが1日だけ｢自由の日｣をもらい外に出るが… って話。
電車寝過ごしたら西部劇的な世界に舞台が変わるのが最高ではないか。

また照明がバキバキに効いてて、光と影による幾何学的な画面を形成している。

主人公が釈放されるまで、秒単位でカウントする描写(部屋の四隅を順番に観ていく主観ショット)が1番好きだった。

均衡と不均衡な画面がリズム良く連鎖して最高に気持ちがいい。

　上映時タイトル『帰らぬ幽霊』。劣悪に近い画質で、後付け音響付属のサイレント映画。
　闇と光、影の包み重なり浸食したようなモノクロに、いかにもソ連映画というか、より作家的なラング的巨大幾何学的建造物の囲みと林立、ドブジェンコ的な俯瞰めやローでの巨大な懐ろの淡い光の中での自然空間での人の存在感、と言うベースが立派で、家屋内や酒場や列車内が変に広め空間ながら米映画的芝居空間の置き方なのか。そしてこれらのベースも立派だが、ここからの、刑務所反乱に対する一斉放水鎮圧、乗り越し列車内からの車窓、感極まり走り来る姿、酒場での秘密警察乗り込みに対する広い油田でのスト開始宣言、らでの段差や速度猛烈なモンタージュ、はみ出し揺れ動くカメラの放逸さ、らで構図も流れ崩れ溶け入りブレ動く、直に伝わる凄み、ｶﾞﾝｽやﾇｰｳﾞｪﾙｳﾞｧｰｸﾞ・ﾆｭｰｼﾈﾏらも霞む、抑圧されてた筈・しかし内包してたソ連映画の凄さ、と言うべきか、昔見た傑作『ﾍﾞｯﾄﾞとｿﾌｧ』の作家を讃えるべきか。残念ながら、観れた素材はかなり潰れてて、観られる最低限レベルの画質としても。
　アメリカ南部の大油田と、そこでスト等を主導した者らを収監した大刑務所、そして故郷の文化住宅みたいな中の一軒の我が家と集会の場の酒場、らを舞台とし、列車や車輪の勇姿も挟まる。スト活動の中心人物が収監されてて、彼への連絡の為に命を落とす、自ら新規収監者もいる。その為のキツイ独房も含め、10年も囚われてる。体制側は、10年の収監者には１日の休日が与えられる規則を使い、これまでもしてきたように、我が家に帰りに外にでた者への、秘密警察を使っての暗殺を計画す。家では家族らが駅へ出迎え用意、折しも大ストの決行日で、願ってもない中心者の帰還・取込みとなる。秘密警察が張り付いてて、寝込んで駅を過ぎ飛び下りた主人公を、既に野外で待ち構えてるが、周りの人の制止や以降家族や工員らに、躊躇い温情も生まれそうだが、更に困惑混乱してく。時間内の務所に帰らずに、射殺でなく、スト主導てわかると沸き立つ。
　多数ホースでの檻室の格子並びへの一斉放水のカメラ位置の左右アングル切り替え頻繁ばかりか、サイズや角度も異常に細かく強くモンタージュしてゆき、まさに発作的表現の模範で、サイズの急変等では絵自体が崩れ溶けんともす。歩くき来る縦フォロー移動は序盤よりあれど、迎えや帰還等で感情と速度が高ぶると、顔もカメラも揺れ、動きはみ出し、躍動感そのものに溶けてゆく。我が家前を過ぎて疾走し始めた列車からの車窓は、郷愁と焦り、矢継早に流れ去る光景が激しくも美しく繋がれ、この種のもののお手本みたいだ。終盤の主人公差し出し要求、自ららもスト決起スタートの、酒場での駆け引き動き、全てが揉み合い争う混乱シーンでの、ショットらは内なる形が認められない勢いと激しさの一挙吹き出し・膨らみだ。これらのレベルは先に書いたように、映画史上最高レベル。
　いつ、どこでも、映画は息づき呼吸し、共闘魅了してく、足場と実践がある。素晴らしい。時間経過と切迫に
時計強調刻み音みたいなのを、序盤使ってたが、オリジナルはどうだったのだろう。