【名作を観ようシリーズNo.92】

《乗せたら最期。》

絶大なカルト人気があるこの作品。存在は知っていたけど動画配信もなく、なかなか観る機会がなくて。クリストファー・ノーランにも影響を与えた作品ということで、レンタルで初鑑賞。



”ブレードランナー〟でのレプリカント役の怪演が印象深いルトガー・ハウアーが狂気のヒッチャーを演じている。

この作品、終始謎に包まれている…

ヒッチャーがなぜ青年を執拗に追いまわすのかがずっと意味不明で…
2人の関係性を、あえて観る者の想像に委ねているようだ。
派手なカーチェイス、風景の映像美、残忍で衝撃的なシーン…と見どころはあるも、このようなカルト人気作は普通の感覚では計れない魅力があるのだろう…🤔
クリストファー・ノーランの観る者に容赦ない難解な作風に通じるものがある、クセがあってアクの強いマニア向けの作品です。

"I want to die…"

シカゴからサンディエゴまで車を陸送中の青年ジム・ハルジー。

突然の土砂降りの中、ハイウェイに佇む一人のヒッチハイカー…

男の名前は、"ジョン・ライダー"

善意で乗せてくれたジムの顔にナイフを突き立てるジョン…間一髪の所で走行中の車から突き落とし、難を逃れ歓喜するジム。

一方、車から突き落とされたジョンの顔にも喜びの笑みが浮かぶ…やっと止めてくれる奴を見つけた…

最初の劇場公開から35年、まさかのHDリマスター版での再上映。

勿論、初公開時も劇場で見ております。
こんな形で再び今作を鑑賞するとは思ってもいませんでした。

35年も前の作品ですが、今見ても全く古さを感じさせず、むしろリマスターされて暗いシーンがクリアになり、演者の表情等ハッキリする事で初見に比べてヒリヒリとした緊張感が増しているような気がします。

今作の成功は、無駄な説明が一切なく、ジョンとジムの追走劇に絞っている事と、何より"ジョン・ライダー"を演じたのがルトガー・ハウアーである事だと思います。

ルトガー・ハウアーが演じた"ジョン・ライダー"の不気味な無表情から、ニカって笑ったり、戯けてみせたり、時に落胆の表情を見せますが、何だか訳わかんないサイコパスな怖さが滲み出てまして、"人智を超えた存在"感ありありで、流石、レプリカント"ロイ・バティー"粘着性たっぷりの演技とその間が他の追随を許しません。

本作はリメイクもされ、ショーン・ビーンがジョンをやっていますが、本作を越えられなかったですからね…

ジムを演じたC・トーマス・ハウエルは、コッポラの"アウトサイダー"で主役のポニー・ボーイを演じ、一気にYAスター（後に、ブラット・パックって言われましたっけ？）として、マット・ディロンやロブ・ロウらと共に、持て囃されていた頃で、どこか少年の面影がまだ残るジムといった感じ。

本作でのジムの衣装が"ザ・80年代"といったシルエットを感じます。

偶然、ジョンを撃退した事でジョンに気に入られ、執拗に追跡・窮地に陥る事で拳銃の弾の込め方も知らなかったヘタレな若造が、過酷な現実によって、一人前の大人に成長する苦い苦い青春映画であるとも言えます。

ヘタレでビビりなジムの顔付きが締まってきて、最初のシーンとラストシーンでは別人のようになるのは、C・トーマス・ハウエルの演技力の素晴らしさだと思います。

そういう意味では、今作のキャストはベストな布陣でだからこそ、今でもリマスターされ再上映される程のカルト的な人気を得たのだ思います。

そんなC・トーマス・ハウエルが数十年後に、"クリマイ"で稀代のシリアルキラー"リーパー"を演じるのですから…

無能な警察官といい、主人公の行動が少し不自然な所、色々とツッコミどころ満載だったけどそれも含めて楽しめましたー

他の作品ではあまり見られない殺人鬼の描き方は斬新で良かったと思いました。

犯人の目的が全く分からない感じがよく出ていたし、主人公が意味も分からなくどんどん事件に巻き込まれていく様子は見ていて本当に恐ろしかったです。

ただ設定が斬新なのは良かったけど、もっと面白い方向に持っていけそうな雰囲気が出ていただけに少し残念。。