【ユニークな視点を大切にしたい】

この絶滅したトサカオウギドリは、肉食だという話があった。

実は、肉食動物は、絶滅傾向が高いということを知っていましたか？

多くの絶滅危惧種を考える時、人間の環境破壊や乱獲を第一に挙げることは当たり前なのだけれど、肉食動物は、狩りの成功確率が総じて低いため、環境がたとえ悪化していなくても、絶滅傾向が高いのだ。

ライオンの狩りの成功確率は約30%しかない。

まあ、だから人間が環境破壊をしていいということではありません。

昔、大学のゼミで論文を書く準備をする際、恩師から皆に、マイナーな視点と、ユニークな視点は違うからと、ユニークでも大きな問題を解き明かす突破口になるようなテーマを見つけるように言われたことも思い出した。

まあ、マイナーはマイナーで良いんだみたいな主張する人は多くいると思うが、マイナーはしょせんマイナーなままだという指摘は至極当たり前な気もする。

マイナーを選択して、それが世に認められたことをさもサクセスストーリーのように仕立て、ノウハウ本や自己啓発本を出すようなケースもあるけど、おいおいと思ってしまう。

作品としては、なんか、もう一ひねり欲しかったように思う。

この映画が新作コンペティション部門にエントリーしているMOOSIC LAB[JOINT]2020-2021は、映画監督とミュージシャンがコラボして映画を制作する祭典。
その主旨からすると、ドラマパートと音楽パートが絶妙に絡んで進行する本作は正にそれに沿ったものだと思う。
タイトルの絶滅動物は本作の場合、「トサカオウギドリ」という映画用に創作された架空の鳥なのだが、これをモチーフにドラマの方は、大学院生マイが論文執筆の為に悪戦苦闘し、そして音楽の方は「VACATION」という名のスタジオで、この鳥から得たインスピレーションでミュージシャンたちがアイディアを出し合って楽曲を作ろうと侃々諤々と協議していく様を描く。
この作品では二つのキーアイテム、ゴーストボックスと鳥の剥製が登場し、要所要所でストーリーの節目を作り、ドラマパートと音楽パートとのジャンクションになっている。
本作をユニークなものにしているものとして中盤にアニメのパートがあり、この部分が映画を更にファンタジー色の強いものにしていると思う。
今年もこの祭典は、今までの日本映画の枠組みを超えた実験的な作品がエントリーされていて、どれがどの部門で受賞するのか楽しみだ。

野鳥を研究する大学院生のマイはある日訪れた森の中で幽霊と交信出来る謎の機械を発見する。
そこから聴こえてきたのは死んだはずの文鳥・ピッピの声。
マイはこの装置を使い絶滅したトサカオウギドリの生態に迫ろうとする。
一方その頃、山奥の音楽スタジオでは7人のアーティスト達が新曲をツクろうとしていた…というお話し。

オチコボレ大学院生のマイのオカシナ研究のお話しかと思えば、突然無関係そうなアーティスト達のドキュメンタリー場面に切り替わって、なんじゃこりゃ！！（笑）

ピッピの字幕もなんか面白いし、アーティストたちのゆる〜い会話もなんだかジワジワきて、このぶっ飛んだヘンテコな世界観にハマりました（笑）

こういうおバカ映画好き（笑）

と、思っていたら全く関連のなさそうな両者が徐々に交わっていき、“面白い”から“エモい”みたいな気持ちに変わってきました。

“人類の文化はすべて遊びから生まれた”

この言葉が本作の全てを表しているような気がします。

研究もアートも創作も、科学もビジネスもその源泉は、好きという気持ちとそれに対する純粋かつ強烈な探究心。

そこには大きな喜びと充足感があって、それこそが人の生きる意味なのかもしれません。

マイがVACATIONの曲を聴いた時、きっと彼女は誰かと本当の意味で心を通わす事が出来たという幸せを感じてたんじゃないかと思います。
あの時のマイの顔はそんな表情に見えました。

P.S.この作品のノリ凄く好きだけど、どこかで観た事あるノリだなぁと思って調べてみたらやっぱり『ソウル・ミュージック』の監督さんで大納得しました（笑）